[hikaliのゲーム論](1)ストーリーを捨てなければ、物語はゲームにならない


 こんばんわ。
 管理人のhikaliです。
 これから長々と主にストーリーゲーム論を書いていきたいと思うのです。
 おそらく恐ろしく長くなると思うのですが、おそらくこれまで一度も読んだことがないものになると思います。
 デッドロック解消ゲームってご存知ですか?
 初めての方は知らないと思います。なんたってこの言葉を生み出したのはわたしですから。検索しても、わたしが書いたエントリーしか出てこないはず。

 ■手っ取り早く知りたい方はこちら。
 膠着状態(デッドロック)解消型ゲーム
 http://blog.story-fact.com/?eid=1177859


 はじめてこのサイトにいらっしゃった方のために、自己紹介を。
 本サイトは、主にゲームブックの研究をすることによって、ゲームブックを作ってしまおうとしているサイトです。ゲームブックはFLASHゲームブックとしてサイトにアップされており、どなたでも遊んでみることができます。
 また、管理人は小説を書いていたりもします。

 ■FLASHゲームブックの置いてあるサイト
 http://story-fact.com/


 ■管理人が書いた小説
 http://p.booklog.jp/users/hikali



 ■ゲームブックを研究している理由は、
  ゲームの定義を最も分かりやすい形で実装しているから


 さて、本サイトはおそらくゲームブック研究では世界で一番詳しいサイトです。
 200冊を超えるゲームブックのパラグラフ構造を解析し、どのようにゲームブックを実装しているかを、おそろしく詳しく分析しています。解析のためのツールを開発し、それにより微に細を穿った徹底分析を行っています。

 ■分析した200冊。
 http://blog.story-fact.com/?cid=34952


 ■徹底解析をしている例
 http://blog.story-fact.com/?cid=51930


 なぜこれほどまでに熱心に分析をしているのかの理由はいくつかあります。

 1.ストーリーゲームでありながら、本になっている。
   簡単に言えば、入手さえしてしまえばあとは分析が容易だからです。

 2.過去の名作が大量にあり、すくなくとも今のゲームを分析するより高度。
   スティーブ・ジャクソン、樋口明雄、鈴木直人、林友彦といった優れた作家を輩出した分野です。分析した結果、ほんとうにその卓越した技術力に圧倒されました。

 3.ゲームブックであれば、デッドロック解消ゲームが構築可能。
   ゲームブックは実装がシンプルなだけあって、実はあんまり制約がないのです。やろうと思えば何十万パラグラフぐらいになりそうですが、戦国時代とかを実装できてしまったりします。

 4.技術的に容易にWEB上で実装できる。
   ほとんどハイパーテキストと同じ原理ですので、簡単に実装できます。

 5.ゲームの定義を最も分かりやすい形で実装している。

 さて、これですね。
 ゲームの定義というとみなさんはどんな言葉を思い浮かべるでしょうか。
 おっと、忘れないでくださいね。このサイトはゲームブックのサイトですよ。デジタル+遊びとかいわないでくださいね(^_^; また付け加えれば、ゲームブックの中ではけっこうメジャーなシリーズになっているルパン三世シリーズには伝統的にHPがありません。ではゲームとはなんでしょう? 
 一人で遊ぶものだから競技性もなく、一番初めに目的がない作品があったりします。
(たとえば、いきなり秘密組織に襲われて、なんだ? と思っているうちになにが起こっているのかがわかって来て、その大いなる悪事が分かってきたりする作品があったりします)

 ゲームとはなんでしょうか。
 わたしはこれを、

 判断を楽しむために作られたもの

 と定義しています。
 ゲームブックはパラグラフの最後に、「これを読んで君はどうするか?」という選択肢が示されてその中のどれかを選びます。判断していますよね。そして、判断を求める形式として最もシンプル。
 ゲームブックというのは実のところ最もシンプルな原理で実装されたゲームなのです。
 それでいて、ストーリーゲームとして最も洗練された作家群を生み出した、豊穣なストーリーゲームの世界なのです。


 ■ストーリーゲームとはなにか。
  ゲームブックから読み解く、ストーリーゲーム。


 ゲームブックの中でも高度なものは、非常に複雑なパラグラフ構成をしています。
 たぶん、詳細ゲームブック解析でやっている分析を見ていただけれると、その複雑さがわかると思うのですが、優れた作品は、クリアするためのルートがいくつもあり、絶対唯一の正解ルートを探し出すような構造はしていません。

 ■詳細ゲームブック解析
 http://blog.story-fact.com/?cid=37300


 ストーリーは無数に分かれ、プレイヤーの判断でそのパラグラフの中を冒険する構造をしています。宮廷でのいろいろな人々の言葉をヒントに誰がなにを考えていて、どうすれば生き残れるかを考えるゲーム(ミノス王の宮廷)もありますし、いろいろな投資先を考えながら大金持ちになることを目指すゲーム(マネーゲーム きみも億万長者になれる)もあります。
 ストーリーを選ぶのはプレイヤーであり、さまざまな選択肢とパラグラフを持った構造全体としての物語であるという構成をとっています。

 さて、ここで問題が出てきます。
 主役であるプレイヤーの判断を取り込んだとき、つまり先ほどの定義である物語にゲーム性を持ち込んだとき、ストーリーは存在できるのだろうか?

 ストーリーはお話の流れです。
 たとえば旅型の最高峰はニフルハイムのユリですが、このゲームブックは自由に世界のあちこちを移動することができます。事件も順番には起こりません。
 プレイヤーにストーリーを選ぶ自由が与えられている限り、ストーリーを作り手はコントロールできないのです。

 しかし、全体としての物語は、複雑なグラフ構造という形で、たしかに存在している。
 頭が痛くなってきたでしょうか(^_^;

 物語をゲームにした時点で、理論的にはストーリーをコントロールできなくなるのです。
 逆に言えば、ストーリーを選ぶ権利をプレイヤーに委ねている以上、ストーリーを定める権利は作り手側にはないのです。
 ストーリーの押し付けは、プレイヤーの判断を楽しむ権利を奪うことになり、それはゲームではなくなってしまう。それは例えていえば、将棋の棋士に対して、次は7四歩でなければならないと言う事です。
 ゲームが崩壊します。
 一本道のストーリーを押し付ければ、たちまちストーリーゲームは崩壊するのです。

 つまり、ゲームブックを、プレイヤーに判断の楽しみを与える優れたゲームである、ゲームブックを作ろうと思えば、自然にストーリーを捨てなければならないのです。ストーリーを捨てなければ、物語はゲームにならないのです。

 このあたりの話は、わたしは「物語における支配と統治」と呼んでいて、詳しく書いたエントリもあるのですが、簡単に要諦だけを書いてしまいます。

 ■物語における支配と統治
 http://plaza.rakuten.co.jp/hikali/diary/200611060000/


 支配は簡単にいえばストーリーの押し付けです。おまえはこれをするしかないと押し付けることです。相手から判断を奪うこと。これが支配。
 統治はストーリーを選ぶ権利をプレイヤーに与え、その要求にしたがって展開を考えるアプローチ。ゲームブックは微妙に統治までは至ってないのですが(選択肢が作り手が与えたものだから)TRPGやPBMではこれは実現できます。

 この支配と統治の差は、

 支配的であればあるほど最大公約数に近づき、統治的であれば最小公倍数に近づく。

 とわたしは思っています。
 つまり豊穣なゲームの世界を目指すなら、ストーリーは捨てろ。
 プレイヤーから判断する楽しさを奪うな。豊穣な判断を取り込め、なのです。

 なんか、Web2.0とかの話に発展しそうですよね。
 まずは本日はこの辺まで。

 次は、ストーリーを捨てた上で、物語をゲームとして実装する方法、です。
 お楽しみに。



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