[hikaliのゲーム論](3)物語=物語世界=世界 ん? 「物語の作り方」=「世界の作り方」!? <そこまで行ってない!(前編)


 こんばんわ! 管理人のhikaliです。
 えーっと、なんとなく始まったゲーム論ですが、いかがお過ごしでしょうか。

 本日は、静の物語解析の話なのですが、なんだか、恐ろしいタイトルがついてますね……。「世界の作り方」の話? こんなのまとまるのか? と書き手も戦々恐々しているのですが……。
 大丈夫です!
 大きな泥舟に乗って、ではなくて、不沈の豪華客船に乗った気持ちで……、って不沈のと書くと、えらく危なそうですね……、ついこの間もイタリアでなんか沈没しましたし……。
 まあ、よい。
 実のところ、この物語解析の物語(=世界)の見方は、まったく偶然にたどり着いたのですが、世界の一般法である民法とまったく同じでした! わっはっは! という話になるからです。
 そこへたどり着くまでの冒険の旅、そんなに長くありませんの、始めてしまいましょう!(って、長くないのでと書くと、えらく長そうなんですが……)


 ■物語解析誕生は、
  シェイクスピアの物語の徹底分析から。


 物語解析ってなに? といわれてぱっと出てくるのは、この定義です。

「物語の中において、他に従属せずに存在でき、動的に物語に影響を与えることができる要素は、人物・舞台・道具の三つしかない。静的に物語に影響を与える、独立した要素としてもう一つ、決まり事(世界観・法律など)が存在する」


 これは物語を構成しているものはなにか、を考えていたときに、片っ端からシェイクスピアを丹念に読んでいてたどり着いた定義でした。
 詳しくは原典である物語解析を読んで欲しいのですが、簡単に言えば、シェイクスピアの台本にはこれしか書いてなかったのです。しかし、シェイクスピアは台本しか残していないにも関わらず、世界中の文学の中の最高峰。つまり、他の作品はいろいろ余計なものがついているけれども、結局のところこれだけしかいらないんじゃない?
 これが結局のところの始まりでした。

 ■この話が書かれている物語解析はこの回。
  要素による解析のガイダンス
  http://story-fact.com/mk_log.php?shu=kmk&num=5


 この考え方は大胆である上に、有益です。
 なんたってこれ以外のことは一切考えなくていいと、シェイクスピア先生が実証してしまっているからです。というか、センセこれしか考えてませんでしたね……、になるんですが、センセが英文学最高峰に君臨している限りは、センセがあんま考えてなかったことは非難されません(キッパリ)。
 川端康成なんか、どっかへ行っちまえ~!(ノーベル文学賞受賞しているけど……)
 と、小難しい文学論なんて、瑣末なことだ! といい切れてしまうのがこの物語解析の理論構成です。問題は、人物・舞台・道具、そして決まり事(世界観・法律など)であって、あとは関係ない。これが物語解析が取っている立場です。


 ■物語解析は、実は、ゲームのために生まれた

 さて、問題は、物語の上ではそれでいいかもしれないが、ゲームとしてはどう?
 そんな疑問が生まれてくると思います。
 なんたって表題はhikaliのゲーム論。物語をゲームにするという話じゃなかったのか? と思う気持ちは、たいへんにまっとうで、非常に高い問題意識が感じられます。しかし、まだ話していないことがありました。
 それはなんでシェイクスピアの研究なんかしたのか、です。
 これを解く鍵はTRPGなのです。
 繰り返すようですが、ストーリーゲームの鍵はTRPGなのです。ただ、TRPGを紐解くと、混乱とめちゃくちゃな”主観的な論”しかありません。客観的には絶対になれない分野に、なぜかストーリーゲームを解く鍵があるのです。
 それは、プレイヤーの主観の取り込みができるストーリーゲームはTRPGにしかない(一応、派生系であるPBMも含んでおきます)、でもその論は客観的ではなければならない。この辺をどうも混同してしまい、想像を絶する混乱に落ちるのです。
 この辺は後述し、なぜ物語の解析から始めたのか、なぜその後ゲームブックに行ったのかの説明をするのですが、もやもやする方に一言で説明しておけば、主観で進んでいくゲームを解明するためには、その周りにある客観をまず分析して要塞化し(つまりここに踏めこめないようにし)、主観部分をむき出しにする必要があった。それが物語解析であり、ゲームブック解析なのです。
 それでもTRPGが中心にあることは間違いない。

 TRPGとは説明が難しいのですが、ポートピア連続殺人事件や、ドラゴンクエストのようなゲームを、コンピュータ役を、マスターと呼ばれる役割の人が担当することで行われるゲームと書くのがわかりやすいでしょうか。実際には逆であり、TRPGをコンピュータで出来るようにしたのがポートピアであり、ドラクエなのですが、まあ、かなり多くのゲームの奥根っこにこのTRPGがあるわけです。
 ただ一点だけ、コンピュータにできないことがあります。それは意見を集約し、次の流れを創造的に作っていくことです。これは統治とはそうであると書けば分かりやすいかも知れませんし、コンピューターのロジックで考えていると、ここにたどり着けません。これがTRPGの優れたところなのです。
 詳細はwikipediaなどで調べて欲しいのですが、なんとなく混乱気味な感じはわかるかも知れません。
 実のところ、このTRPGのシナリオ(シナリオについては後述)の構成要件を考えていたときに、物語解析は生まれ、じゃあ、実際の物語を分析してみようとはじめたのが物語解析の連載の開始なのです。夢中になって現実の物語を分析しているうちに、実はこれすごくないか? というか無敵すぎるw ジブリ作品とか、一撃で解析できますね、と半ば物語の分析ツールとして無敵なことを確認していたのが物語解析なのですが、たぶん、この辺密度が濃すぎてついてこれないはずです。

「物語の中において、他に従属せずに存在でき、動的に物語に影響を与 えることができる要素は、人物・舞台・道具の三つしかない。静的に物語に影響を与える、独立した要素としてもう一つ、決まり事(世界観・法律など)が存在する」


 これです。
 この視点で見たときに、ジブリ作品は完全に解析できるのです。
 この分析方法をいかに駆使していくかは、実際の物語解析が、今のわたしが読んでも、なんだこの頃のわたしw キレキレすぎるw とのけぞってしまう内容ですので、今のわたしが説明するより、当時のわたしの解説を読むほうがたぶんわかりやすいといいますか、今のわたしが読んでも、
「おー、そこまで考えていたのか……。深い……」
 と、逆に勉強になるとか言うレベルですので、こちらに解説は譲ります。
 それよりも、ひとつのエピソードを紹介して、これを使うとなにができるようになるか、を紹介したいと思います。


 ■千と千尋の神隠しを解析した経緯、
  ある意味で到達した物語解析の完成形。


 物語解析をメールマガジンで連載していたころ、社内の先輩に言われたのです。
「ねえ、hikaliさん、千と千尋見たんだけどさ、わけがわからないんだよ。どうなっているんだろう? 説明してよ」
 当時勤めていた会社は、マーケティングの会社で、ネット方向も力を入れていて、そのひとつにメールマガジンがあって、メールを通じたマーケティングが、けっこう収益の柱になっていたんです。なので、スタッフにメールマガジンを発行することが推奨されていて、わたしが物語解析を発刊していることは、おそらくうすうすといろいろな人たちが知っていたと思われるのです。
 それでそんな話が振られたと思うのですが、部署のみんなで昼食を食べに行ったときに、女性の同僚が観にいったというので、どうでした? と聞くと、幸せそうな顔で、良かったですというのです。それがあまりにも幸せそうな顔だったので、あー、これはなんかあるなあ、なんだろうなあ。それで観にいった。
 たしかに千と千尋の神隠しは、ジブリ史上最も優れた作品であろうし、興行収入もダントツであることは、だれもが認めることができることだと思います。
 しかし、それがなぜであるかは、誰にもわからない。
 この問題に、意気揚々として、物語解析で挑んだのは想像に難くないと思います。

 ■「千と千尋の神隠し」解析
 http://story-fact.com/mk_log.php?shu=kmk&num=16


 10年前に書いたものなのですが、いまだに千と千尋の神隠しが放映されるたびにアクセスがバブって、ああ、千と千尋がTVで流れたんだろうなと分かる解析です。
 目次だけ引用しますと、

 01:はじめに                       :[ 01 ]

 02:千と千尋の神隠しのコンセプトのお話          :[ 02 ]
  02-01:「この物語のコンセプトって?」          :[ 02-01 ]
  02-02:「透明な千尋」                  :[ 02-02 ]
  02-03:「極彩色の個性持つ世界」             :[ 02-03 ]
  02-04:「コンセプトのまとめ」              :[ 02-04 ]

 03:人物のお話                      :[ 03 ]
  03-01:「ハク(琥珀)周りの人間関係」          :[ 03-01 ]
  03-02:「湯婆婆周りの人間関係」             :[ 03-02 ]
  03-03:「顔なし」                    :[ 03-03 ]

 04:おわりに                       :[ 04 ]


 こうやって抜き出してみるとかなりシンプルなのですが、これだけです。これだけで、日本の映画史上空前のヒットを飛ばした、ジブリの最高傑作は説明できるのです。
 まさかと思うのであれば、読んでみてくださいませ。
 なんだ、そういうことだったのか、と分かるはずです。
 ちなみに、この解析は一回みただけで、2日ぐらいで一気にがーっと書いていますw

 これが出来てしまうというのが物語解析の利点なのです。
 物語の余分なものを全部省いてしまって、その構成要素がどういう作用をしているかだけを見る。物語解析中で、ずっと皮膚とか、肉とかを見ずに、骨格をみるのが物語解析だと書いてきたのですが、この見方が、主観を排して客観のみで物語を構成する、というのと同旨であることが分かるかと思います。
 そしてそれは、誰もわからなかった、千と千尋の秘密を解き明かしてしまうのです。

 この境地にたどり着くと、表面だけをなぞっていた文学論が、突然にまったく意味のないことだったことに気付きます。
 これが最も適切な比喩なのですが、名作ミステリーを法学的な視点で見るとどうなるか、たとえば、民法の視点でミステリーを読み解くとどうなるのか。ナンセンスに思えるかもしれませんが、実のところ千と千尋を解き明かしたのは、この視点なのです。やっていることがまったく民法とまったく同じとのちに気付くのですが、それは後述します。
 これはゲームの概念を説き明かそう、ストーリーゲームの概念を説き明かそうとしたときに初めて生まれたものでした。より上位の概念に挑んだときに初めて、その下位のことが分かり始める。逆に言えば、上位の概念がある限りは、下位の概念の解明がしやすい、という感じでしょうか。
 わたしが物語解析や、ゲームブック解析をやり続けてきたのは、この下位固めだったわけです。そして十分に固めたと思い、これを書いているのです。


 ■TRPGのシナリオはどうなっているのか?
  実は、自己否定しているものしかない。


 さて、ストーリーのない物語の把握方法として、物語解析という理論体系を紹介しました。そしてこの理論体系がかなりの破壊力を持って、実際のストーリーを解明できることが分かりました。そして、この物語解析理論は、もともとTRPGのシナリオはどう作ればいいか、という問題から発生したことを紹介しました。
 では、物語解析はTRPGのシナリオを作るのに役に立つのでしょうか?
 これはこう答えるしかありません(笑)。
 まさにそのためにあるのです。

 しかし、実際のTRPGのシナリオはどうなっているか? を調べてみると、実のところ、時系列に沿って書かれているものが大半です。
 たぶんここまで来て、あれ? それってかなりまずいじゃないの?
 と思う方が、かなり多い気がするのですが、ん……、まずいんですね……、自己否定をしまくってしまっているんです……。プレイヤーの判断する楽しみを供給するためのものなのに、なぜかプレイヤーの判断を否定するストーリーがあるのですね……。

 たとえば、シナリオに定評のあるクトゥルフの呼び声の基本ルール(わたしが持っているのは第5版、というか、EDITHON5.1)に書いてあるシナリオは、ものの見事に、ストーリーがあります。たぶんプレイヤーはこうするはずです。こう書いてある。
 それはなぜそう思うのでしょうか?
 アンケートをとって、そうなったんでしょうか? 99%がそうした?
 同じように「ニャルラトテップの仮面」という名作シナリオをプレイしてみたときに(マスターとして)、非常に困りました。プレイヤーはこのシナリオが想定した、「ストーリー通りに」まったく動かず、そこから外れてしまうと、このシナリオは意味がなくなってしまうし、実際にそうなったからです。
 そのとき思ったのはこうです。
 このシナリオは、ストーリー通りにプレイヤーは動くだろうという希望的観測の基に作られている。しかし、そうなる可能性はほとんどと言っていいほど、0に近い。
 TRPGはこの時点ですでに死んでいたのです。

 しかし、つついてみて死んでることを確認しても意味がありません。
 何も得るものがないからです。
 問題は、それが廃墟であると考え、遺跡であると想像力をめぐらせて、とてつもない財宝が埋まっているのではないか、と考えれば、宝探しをしたい気持ちも起き上がってきます。
 手付かずの財宝をざっくざくです! おお、楽しい! お宝ほしいぞ! 掘ってみよう!
 遺跡発掘って、実は墓暴きなのでは? という気がしないでもないのですが、伝説名高いイリオンの遺跡かもしれないと思えば、そんなのお構いなしです。

 たとえば、ソードワールドのシナリオに、猫だけが知っていた、というシナリオがあり、実はこのシナリオには、ストーリーがなく、なにがどう動くかと、ここへ行けばなにがあるかしか書いてありません。つまり、プレイヤーがどう動くかは書いてないのです。
 この猫だけが知っていたは、ミステリーなのですが、hikaliのゲーム論が目指す最低限の地点です。
 キラリとした宝石は、あちこちに埋まっているのです。

 なにか尻切れトンボですが、ずいぶん長くなったので、この辺で切りましょう。
 次回は、実際の現場というか、商業の現場で教わった見地を紹介します。

 シナリオの定義とはなにか、それはストーリーの材料になるものたちである。

 この辺が中心になりつつ物語解析の解説をしていきます。
 お楽しみに!



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[hikaliのゲーム論](12)  ゲーム≒ルール≒法律≒抽象化の仕方 物語解析解説(後編part8)
[hikaliのゲーム論](11) ふしぎなキリスト教 物語解析解説(後編part7)
[hikaliのゲーム論](10) 建築論、組織論 物語解析解説(後編part6)
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[hikaliのゲーム論](2)ゲームとはなにか。それは「命令禁止」。
[hikaliのゲーム論](1)ストーリーを捨てなければ、物語はゲームにならない