[hikaliのゲーム論](6)  物語解析解説(後編part2)


 こんばんわ! 管理人のhikaliです。
 なかなかにわき道にそれて収拾つかなくなってきた本質に迫る内容になり始めて、ヒートアップしてきた感じが、分かるのではないでしょうか。

 前回までの回で、静の物語解析で非常に重要な、物語の独立要素の話をしました。マスター権限とプレイヤー権限の話をし、マスター権限において、この独立要素であるという感覚が大切だという話を書いたつもりです。

 人物、舞台、道具、決まりごとという四つの独立要素は、ストーリーから独立している。

 たったのこれだけ。
 一見大量に説明があるように見えるのですが、物語解析はひたすらにストーリーなしで物語を把握するということを目指した技術なのです。
 また、ストーリーがなくなると、ほんとうに自由に物語を構築/分析できます。
 例えばハウルの動く城の原作を分析して、この話の原作には「心臓に該当する部分」があったのですが、映画化するにあたってそれが心臓であることにも気付かず、その心臓を切ってしまったために、血が流れないゾンビのような作品になってしまったと分析できます。
 これがひとたび分析者がストーリーに支配されてしまうと、ただひとつのストーリーだけを見ることになってしまい、その範囲外にある、物語の多様な可能性に目が向かなくなってしまうのです。
 なんども繰り返しますが、ストーリーの支配からいかに逃れるかが、物語解析なのです。むしろこれ以外に意味がないといっても良いほど。物語に唯一解はない、これだけです。ストーリーというのは選択物であって、いろいろな状況から選ばれたものなのです。
 それが最善であるかどうかは、誰にも分からないのですね。

 この辺は、新物語解析で語っている話なので、せっかちな人は、そっちを。
 「新 ・ 物 語 解 析」
 http://story-fact.com/mk_log.php


 物語の分析というとどうしても情緒的になってしまい、客観よりは主観、しまいの果てにはあのストーリーは好きだ、あの話は泣けた、とそれって物語の分析とは関係ないですよね? と思ってしまう地点に行き着いてしまうのですが、物語解析はほんとうにロジカルに物語を解体したり、ブロックのように組み立てたりすることができます。
 これもひとえに、

 人物、舞台、道具、決まりごとという四つの独立要素は、ストーリーから独立している。

 この原則をひたすらに追求しているからです。
 この、物語の構成要素の分析は、物語の分析や構築に客観性を持ち込み、

 この物語のここ部分と、あの物語のあの部分は、構造が一緒ですよね?

 とか、

 物語に動きがないから、これはこういう人物を投入して、こういう関係線を引けば上手く機能する、というかのび太の鉄人兵団がそうやって機能させていたじゃん。

 と言ったようなことができるようになります。
 言葉を繰り返しても仕方ありません。
 それが実際にそうである光景を見ていきましょう。


 ■のび太と鉄人兵団に見る、改造の可能性。
  しずかちゃんなしで物語は成立する? やってみよう!


 さて、これまで物語解析の有用性を話してきたのですが、実際にそれが働いている場面の話になります。
 実のところ、連載していた物語解析に大量の実例があります。
 それはいまのわたしが読んでも、こんな深く踏み込めるんだ……と思うような、実力充分な物語の解析結果だったり、物語を構築する実例だったり、概念の説明だったりするのです。正直、当時のわたしが、今のわたしを睨みつけて、なんか文句ある? 間違っている? と聞かれても、いや、正しいかの判断をできるレベルにないが、どうも正しいように思える、と答える以外にないのです。
 だから、静の物語解析である、物語解析の連載の説明は当時のわたしに聞いてくれと気分になるのですが、それでは、若干不親切です。
 そこで、及ばずながら、当時語りつくしていない部分に焦点を当てつつ、解説的に補足をしていきたいと思います。

 さて、この章にタイトルされている言葉は、たぶん物語解析のこの回を読んでいる人には、刺激的なはずです。なぜならば、この回で語っているのは、しずかちゃんの役割がとても重要で、この「のび太と鉄人兵団」という物語のほとんど中枢であることを語っているからです。
 なので、ここはゾクゾクしてほしいのですが。え? 読んでない? 
 
 まあ、一応紹介しておきますが、ここからの面白さに直結する解析ですので、もしノッて行きたいのであればぜひ。紹介しておきます。

 ■要素による解析基礎 「人物」 実践編
 http://story-fact.com/mk_log.php?shu=kmk&num=7


 さて、問題は、こののび太と鉄人兵団は、しずかちゃんなしで成立するのか? です。
 これはおそらくかなりレベルの高い話で、それなりのプロクラスでも結論が出ないでしょうし、すくなくともわたしはこの答えに答えられなそうな人が、不勉強にも思いつきません。
 しずかちゃんなしでも、のび太と鉄人兵団は成立するのでしょうか?
 わたしの答えは、その可能性は検討しないの? です。

 ストーリーに意識が支配されると、他にありえたストーリーに頭が行かなくなります。
 一本道のストーリーに比べて、物語というのは横幅があり、書きようによってはその驚くべきポテンシャルを引き出すことだができます。ストーリーの書き手は、その目の前にある物語からどれだけ最大限のポテンシャルを引き出せるかを考えるべきで、そう考えれば当然に、すでにあるストーリーを否定してみる必要が出てくる。
 頭ごなしに、こういうストーリーがいいんだと言うと、プレイヤーを支配してしまいます。
 参加しているプレイヤー、ゲームでない場合を想定すれば、登場人物の意思を奪うことになり、ストーリーが支配する息苦しい、いきいきとした人物の生きていないディストピアに特攻することになります。
 さて、しずかちゃんのいないのび太と鉄人兵団は作れるのでしょうか?

 たぶん、この辺りで分かったと思うのです(^_^;
 別に藤子・F・不二夫の素晴らしいストーリーだけが、この物語に存在しうるストーリーではないのだと。
 確かに藤子・F・不二夫センセの書いたストーリーは、ぽかんとするようなマジックに満ちていて、なんでこんなストーリーを書けるのだろうと、唖然とするには充分すぎるほどに高度です。ですが、そのストーリーをなぞっているのは、将棋の天才、羽生さんの棋譜をひたすら再現する将棋をしているようなものです。それは棋士ではない。単なる棋譜再生機です。
 では、羽生さんがみおとしたかも知れない地点を見てみましょう。
 そこを検討しましょう。
 その疑問は、これです。
 しずかちゃんがいなかったら、この話はどうなっていたのだろう?

 この話はとても高度です。
 なぜならば、しずかちゃんはこののび太と鉄人兵団においては恐ろしく重要なのです。もはや、なければストーリーが構築できないほど。このしずかちゃんマジックは藤子・F・不二夫の劇場と化しているのですが、これをあえてなかったことにしてみましょう。ええ、しずかちゃんはいないのです。それが唯一の縛りです。
 できますか?
 やってみよう!


 ■鉄人兵団におけるじずかちゃんは、
  物語の奥行きが深くなりすぎてしまわないようにするためにある。


 物語解析のこの回では、この言葉で鉄人兵団の特徴を話しています。

 第二の承以降の主役関係線がこの「しずか──リルル」です。
 なぜこの「のび太──リルル」の関係線は「しずか──リルル」 の関係線に主役の座を譲るのでしょうか。
 これは、リルルの意識に変化が起こり、リルル周りの関係線が大きく変化してしまう予定がある事が理由の一つとなっています。
 「のび太──リルル」の関係は、転の終了を持って十分に強くなった関係になります。その強い関係は過去に幾つかのエピソードを持ち、それが積みあがる事によって物語に奥行きを与えます。長編の小説やドラマでよくあるフラッシュバックはそのような積み上げを観客に思い出させる手法です。
 しかし、この物語においてリルルは他を圧倒して強い人物であり、リルルより発する出来事(イベントの方が分かりやすいでしょうか……)が圧倒的に多いのです。
 「ジュドがリルルの持ち物だと知れる」
 「リルルが次元震を起こしてしまう」
 「リルルがロボットと分かる」
 「リルルが秘密を知られて殺そうとする」
 「リルルを介抱する」
 「リルルが裏切る」
 「リルルが意気地なしと怒る」
 ……、きりがありません(^^;
 もしも、この出来事が全て「のび太──リルル」の関係線で起こったどうなるでしょうか。きっと「リルル──のび太」関係線をどう理解したらいいかが分からなくなってしまいます。物語の奥行きが深くなりすぎてしまうのです。もっともっと分かりやすく言えば文学的になってしまうのです。
 ですから、「しずか──リルル」関係線が生まれます。

 このレベルの批評は読んでいないどころか、わたしはこのレベルで高度なことをしている物語を読んだことがありません。宮崎駿でさえ、このレベルには到達していないですし、たぶん藤子・F・不二夫がこのレベルにあることを把握している人はほとんどないと思うのです。
 こののび太としずかちゃんの、物語の主役の交代はきわめて重要なのです。
 で、その状態でしずかちゃんを消したらどうなるの?
 なくてもストーリーは存在できるの?
 いえ、ストーリーはどんな場合でも存在できるのです。それはTRPGでどんなプレイヤーがやってきて、それが事前にわかっていなくてもシナリオが作れるのと同じです。
 完成されたストーリーの完璧さが問題ではないのです。
 そんなものは、秋刀魚の塩焼きについてくる大根おろしみたいなものです。
 秋刀魚に脂がのってなければ、旨くもなんともないのです。
 脇役です。
 わたしたちはゲームをしているのです。棋譜を指しているわけではない。

 君は羽生さんの棋譜をなぞる人ですか?

 羽生さんは、棋譜の可能性に挑戦しています。新しい棋譜を生もうとしています。この創造するという挑戦は大切なのです。なぞって、信仰しても仕方ないのです。まねて、その到達した地点を確認するのは良いことです。
 でも、あなたはなんのためにここにいるのですか?
 ツ ク ラ ナ イ ノ?

 「新 ・ 物 語 解 析」
 http://story-fact.com/mk_log.php


 鉄人兵団を改造していく過程を説明しましょう。
 物足りなかったら申し訳ない。
 この辺はかなり難しい問題なので、慎重で行かなければならなかった・・・。



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