[hikaliのゲーム論](7) 物語解析解説(後編part3)


 こんばんわ! 管理人のhikaliです!
 なにか、ずいぶん久しぶりな気がするのですが、みなさまお変わりないでしょうか。

 さて、ずいぶんと間が開いてしまったのですが、管理人がゲームにどっぷりはまってしまっていたため管理人多忙により、間が開いてしまっただけですので、ご心配されなければ幸いです。
 別に胃がんの手術をしたとか、年金基金を1500億円ぐらい溶かしてしまったので逃亡していたとか言う話ではないですので(<というか仕事違うし……)、ご安心くださいませ。

 なんか言い訳が真っ先に走りましたが(^_^; 本日の回を進めて行きましょう。
 えーと、なんでしたっけ?
 というのは冗談ですが、確か、ドラえもんののび太と鉄人兵団を改造する話だったような。

 これを通して示したいのは、たぶんこの一点です。

 物語をほんの少しいじるだけで、ストーリーはまったく違うものになる。

 このダイナミズムが、お見せしたいこと。
 ちょっと物語の構造を変えてしまっただけで、まったく違うストーリーを生み出す物語構造になってしまう。逆に言えば、もうどうしようもないどうやっても逆転できそうにないだめだめなストーリーでも、物語構造をちょっといじるだけでそれなりに見れるストーリーを生み出す物語構造に大変身することが可能になるということなのです。

 これは一度、物語解析で実演してみています。
 この辺は理解が恐ろしく難しく、実物を見ないと、たぶん理解できない部分です。
 なんとか四苦八苦して上手く伝える方法はないかと考えに考えたのですが、それよりも、物語解析でやったやつをそのまま貼っちゃうのが一番手っ取り早いと思うに至りました。
 というわけでかなり長くなるのですが、説明を付け足しながら、見てみることにしましょう。
 題して、たぶんダメそうな映画『エアフォース・ワン』を改造しちゃおう! です。
 わたしが、予告編を見て、この映画はダメダメだなと思い(そして今に至るまで本編を見ていない・・・)、派手に魔改造を始めるという実演です。
 これに続いて、物語解析が最高傑作と認定している『のび太の鉄人兵団』を魔改造することとなります。
 それでは行ってみましょう。

 ■物語解析~ 要素による解析のガイダンス ~
 http://story-fact.com/mk_log.php?shu=kmk&num=5


 ■『エアフォース・ワン』魔改造計画

 ここでは、一番分かりやすく、私が日常的に行う遊びとして、「映画の予告編よりオリジナルストーリーを構築する」というモノがありますので、ちょっと雑すぎるかもとおもいつつも実演をしてみたいと思います。少しでもその奔放さや、楽しさが伝わるといいな、なんて思います。


 あ、遊び感覚ですね……。さすがわたし……。

 映画「エアフォースワン」を例に上げます。
 この映画は、「アメリカはテロと取引をしない、そして大統領専用機「エアフォースワン」がハイジャックされた」といういわゆる、矛盾に似た葛藤を物語の中心に置く物語です。


 ここ、さらっと言ってますが、この矛盾がこの映画が書きたかった部分だと思われます。予告編を見ただけで、もう構造が手に取るようにわかっているのですね。それだけ分かりやすかったともいえます。

 ですが、この手の葛藤はたった一つの解決法に向かってしか物語が展開しないことが分かっています。つまり、上記の例で言えば「テロと取引しません」「大統領専用機の中の人でなんとかします」という結論が、売り文句を見た瞬間に分かるのです。そして、主役の大統領にハリソン・フォードを配していますので、結論は「大統領が独力で解決する」という構成がはっきりすぎるほど分かります。


 なんというか明晰な分析です。
 そして、この予想通りに進めば、映画は惨事と言ってもよいほど退屈な映画になることが明らかです。この辺を軽く説明して、改造に入っていきます。

 構成はいたってシンプルです。
 背景として「アメリカはテロと取引しない」という不文律。
 舞台はエアフォースワン。
 物語を動かす主要人物は、大統領とテロ組織。

 これは物語解析の説明に入っていないので説明していないので書いてないのですが、物語解析の4つの独立要素にばらして考えたときに、
 人物:大統領、テロ組織
 舞台:エアフォース・ワン<大統領専用の旅客機
 道具:なし
 決まりごと(世界観):「アメリカはテロと取引しない」
 これしかない。4つの要素しかない。こんなんで映画を作れると思うほうがおかしい、なんでこんな映画企画しちゃったんだろう、という感じでしょうか。
 続いて、いかにこの構成がダメかを説明します。

 あまりにも限定され、固定され、集中しすぎたお話だと分かります。
 なんたって、ハイジャックなので、物語の舞台は飛行機内しかありえず、大統領が死んでしまえば物語が成り立たないので死なず、不文律は侵されてはならないので侵されず、テロ組織はどう頑張っても勝ちようがないのです。
 もしこれしか、物語の要素がなければ、映画は大失敗に終わってしまうはずです。
 私は残念ながら、この映画を見てはいないのですが、その自由さで少しエアフォースワンを幅広い物語にして見ましょう。


 ここは説明不足というか説明が簡潔すぎるのですが、物語の始まりはハイジャック開始からであり、物語の終わりはハイジャック終了なので、この結論が出てくるのです。
 この企画自体が、恐ろしく不自由なのです。
 この物語要素だけを見ていると、これ以外がありえない。
 もしこれ以外の要素があるならば、予告編でそれぐらいはほのめかすはず。
 こうやって見ていくと、ありえないぐらいどうなるかが手に取るように分かってしまう物語になっています。
 さて、ここから、どう打開しましょうか、という話になります。

 舞台が飛行機のみというのは少なすぎると思います。少し先回りした言葉ですが(^^; 太めの関係線を飛行機の外に引きます。関係線は人物関係の線だと思ってください。舞台として飛行機があまりにも強すぎるので、関係線を図太くします。


 ここの発想はかなり高度です。
 たぶん多くの人がついて来れない飛躍です。
 たぶんほとんどの人が何を言っているのか分からないのでは。
 説明が難しいのですが、舞台がエアフォースワンしかない限定的な情況がまずいので、なんとか外に関係を持たせようとしているのです。そのときに引く関係線は、人物、舞台、道具、世界観の間に限られる。これが物語解析の利点といいますか、すごいところです。
 ここ、難しいですねw
 物語解析は、人物、舞台、道具、世界観以外の要素の存在を許していないのです。
 なので、必然的に、関係線を引くならば、その4要素間の関係でしかない、と考えるのです。すごくシンプルに考える考え方なのです。
 しかし、舞台の問題なのに、人物の関係線を引いています。
 まあ、どうなるか見てみましょう。

 例えば、テロリストの目的は大統領じゃない、のような方法でも取らなければ、画面がずっと飛行機の中になってしまいます。


 これは事件を飛行機の中だけで起こすのではなくて、テロリストの目的は飛行機の外にあることにしてそっちでも事件を起こさないと舞台が増えんだろう、ばかもん、と書いているわけですが、まあ、物語解析ではよくやる方法です。
 たぶんこの辺で理解が難しくなる気がするのですが、テロリストの最終目的が、大統領を殺すことではなかったら? 殺すことの目標はかなり簡単に達成できると思うのですね。というか、自爆すればいい。エアフォースワンを落とせばいいわけです。
 超簡単。
 恐ろしく簡単ですが、これでは映画にならない。
 テロリストに大統領を殺さずに引き出したい譲歩があるのです。
 この辺で、エアフォースワンと言う映画が破綻していることを示しているのですが、というか、エアフォースワンをハイジャックしたら自爆テロでいいんじゃね? と考えると、うんもはや映画としての企画としてダメすぎと分かるでしょうか。
 だいぶ高度になってきました。
 テロリストには自爆テロをしないだけの利益があるのです。
 それはなんなんでしょうか? なんか、ハリウッドが霞んできたでしょうか。まー、もうちょっと考えてよね、と思うことはたびたびあります。
 さて続きを見ましょう。

 関係線が一本では弱すぎるので、大統領からも線を引きます。つまり、テロリスト・大統領・何か(笑)の三角関係になり、テロリストと大統領は飛行機、「何か」くんは、もう一つの舞台にいるわけです。
 果たしてそんな物語が可能なのでしょうか? 真剣に考えたわけではないので、私も分かりませんが(^^; 多分なんとかなっちゃうものです。面白いので、もう少しやってみますか。


 これはテロリストの目的が大統領じゃないから、第三者への影響を与えることが目的という発想で、テロリストと第三者の間に関係線を作ろうとしています。また、「つまり」、とかなり豪快に結論を出していますが、大統領・テロリスト・第三者の三角関係としているのは、それが一番シンプルな関係だからです。それで上手く行かなかったら四角関係にしようと気楽に考えています。

 飛行機と「どこか」を密接な関係で結ばなければなりません。


 このどこかは、第三者がいる場所を(もしくは活躍する場所を)想定しています。

 大統領の家族は飛行機の外に置きましょう。中においてもなんの役にも立ちません。大統領の分身である家族を大統領と同じ飛行機の中に置いておいては、ますます舞台が飛行機内に限定されます。


 ここで、大統領の家族を新たに想定し始めました。
 これで要素がかなり増えてきたことになります。
 人物:大統領・テロリスト・第三者・家族
 舞台:飛行機・どこか・家族のいるところ
 道具:なし
 決まりごと(世界観):「アメリカはテロと取引しない」
 単純に倍増しました。
 この後、エアフォース・ワンという舞台がいかにダメかを話し始めます。

 飛行機は魅力的な舞台とは言えません。はっきりといって落第点です。豪華客船ならば、しかも沈没すると分かっているタイタニックならば、魅力的な舞台なのですが(^^; 飛行機は人物の行動を必要以上に制限してしまいます。


 もうここまで言われると、エアフォース・ワンではなく、タイタニックの大統領にして、ハイジャックじゃなくて、シージャックだったことにしたくなります。案外面白いかもしれません。沈没することが分かっている豪華客船で繰り広げられるシージャックと、宮廷陰謀劇とか、たぶんこれまで類例がない気がします(^_^;
 野ばらの諸侯シリーズで、そういうのあってもいいかもと思うのですが、あー、宇宙船にしたらたくさんありそうですね……orz 却下……。

 主役が世間から隔離されていますので、物語は精神的な物になるはずです。マスメディアを使用して、精神的に外を動かすお話にしましょう。つまりテロリストよりも謀略がいいわけです。大統領のスキャンダル利用して、大統領を失脚させようしている謀略というのはいかがでしょうか。なにか、面白そうですよ(^_^) 何かわくわくしてきました。


 これはエアフォース・ワンなんだから、中継できるマスコミもいるだろう、だから大統領が手を出せない下界と、大統領のいる上空で同時並行的に情報戦が行われることを想定しています。
 これは大統領と家族が「直接的には」会話をすることができず、マスコミを介した「公開された」会話でしか意思疎通できない、というシチュレーションが、お? おおお! これはいける! めちゃくちゃ面白い! と盛り上がっているのです。
 スキャンダル公開解決は週刊誌的ですし、人間的です。

 大統領はスキャンダルの渦中にあった。女性問題だ。


 これはクリントン大統領を想定しています。
 一応書いている時期は在任中ですね……。この辺は、節操ないというか……。

 そこで、一気に失脚させようと、裁判に向かう大統領をハイジャックした。テロリストを装っているが実は謀略で、銃で脅しながらマスメディアに対して無責任な言葉を言わせる。ハイジャックの四十八時間(例えばですよ)の間に大統領の支持率に致命的な打撃を与える謀略。それに気付いた家族が、スキャンダルでずたずたになってしまっていた家族が一致団結して大統領を救おうとマスメディアを動かし始める。


 説明が難しいのですが、危機対応でみっともない対応を取れば、当然にリーダー失格の烙印を押されます。ハイジャックによって大統領はピンチです。そこで、アメリカの不文律を侵せば、当然に無事に降りても、国民の信用を失います。
 というか、スキャンダルですでに家族との絆はずたずた、もはや大統領を支えようとするスタッフすらいない。
 孤独の大統領なのです。
 そして、大統領はテロリストの国に強硬姿勢を取っていた。だから、テロリストはこの大統領を失脚させ、野党の大統領にかわってほしい。おもいっきし内政干渉ですねw 
 ここから、大統領は大統領としての自覚に新たに目覚め、国民に対してアメリカはどうあるべきかをハイジャックされた飛行機から演説する。
 おお、けっこういい物語ですね。

 どうでしょう! 感動のヒューマンドラマです(笑)!
 名シーンがいくつも浮かんできます(笑)! はたして、エア・フォース・ワンがどのような物語であったのかは分からないのですが、こんな風にすると、わくわくできる物語になりますよ。現実的なつじつま合わせは最後の最後でいいのです。


 ちなみに、この時点で、第三者とどこかはどうでもよかったことになっておりますw

 さて、この「エアフォースワン」の改良には、要素による解析法を使用しました。
 いくつか耳慣れない概念があったのではないでしょうか。
 たとえば、関係線。舞台。人物の行動を制限するなどという考え方も目新しいかも知れません。ですが、先の例のように、しっかりと要素をつかみ、その一つ一つを評価し、具体的に改良をする方法を知っていれば、物語の設計にかかる時間はとても短くなります(上の例は信じがたいかも知れませんが、キーボードを打っていた時間と同じくらいです。だいたい三十分位でしょうか)。さすがに無から何かを生み出すのはどんな方法を用いようと難しいことに変わりはありませんが、このように要素を用いて物語を見ると、お手玉でもするように簡単に(そして危なかっしくもあるのですが(^^; )、自由自在な軽業のように物語の「変換」が可能になるのです。


 と、ありえないぐらいさらりと魔改造を完了したことにしていますが、物語解析ってなんですか? と言われると、ん……、と三週間ぐらい悩んだ末に、これが一番分かりやすいかな? と思えたのが、これなのです。
 で、それって、どうやるの? という質問に答えたつもりなのが、物語解析なのです。
 これで物語解析のことは全部分かりましたよね!
 ……、ということにしたいのですが……、難しいかなあ……。


 ■物語解析とはなんぞや

 さて、難しい話題になってまいりました。
 基本的に、物語解析は、ストーリーを放棄する、という理念に基づいていて、じゃあ放棄したあとには何が残るの? と言われると、物語が残ります、というものなのです。
 では、その物語というのはどういうものなの?
 と言われると、エアフォースワンで話した様な内容で、ここにストーリーってないよね? ないことだけ確認してほしいのですが、わたし、エアフォースワン観てないから、ストーリー知らないし。
 ストーリーがない状況で、全部進んでます。
 これが超えられない壁なのです。
 超えられるかな?

 物語の世界になると、人物、舞台、道具、世界観だけで、お話が進められます。
 こちらは自由の世界です。
 ストーリーがない世界です。
 勇気を持って、ストーリーがない世界にも旅してみましょう。

 そのときの指針は、人物、舞台、道具、世界観です。
 ようこそ、新しい世界へ。

 ドラえもんまでたどり着けなかった、と思いつつ・・・。



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