■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■
                          第十五号   2006/05/10
   「 物 語 解 析 」
    〜 要素による解析基礎 「道具」 変化 〜

 「今号を要約!」 「効果」は道具のもう一つの関係線

  - - - -< 今号の中身をピックアップ! > - - - - - - - - - - - - - - - - -
 《 本文 》                          《ページ&
                                 落書き欄》
                                 (^_^;

   01:はじめに                       :[ 01 ]
     ──奇跡的に汚名返上です!

   02:要素による解析ってなに???             :[ 02 ]
     ――簡単ではありますが、説明しています。

   03:解析術講座 「要素による解析「道具――変化」」    :[ 03 ]
    03-01:「変化って何?」       :[ 03-01 ]
        ――原点に返って説明すると・・・
    03-02:「道具の変化は、物語の意外なアクセント」     :[ 03-02 ]
        ――ハリーポッター成功の秘訣
    03-03:「ハリーポッター手法の応用」           :[ 03-03 ]
        ――一ゴシックホラー的、赤頭巾ちゃん

   04:おわりに                        :[ 04 ]
     ――キリキリやれば何とかなる。

 ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■    http://story-fact.com/mk_log.php ■


 ● 01 ● はじめに                      :[ 01 ]
  ̄ ̄ ̄ ̄
  こんにちは! hikaliです。
  えーと、ずいぶん間が空きました。
  って・・・、おっと、そんなに空いてないことが判明。
  いつも物語解析は、この定型文句で始まるのですが、今号ばか
 りは奇跡的に汚名返上です!

  よろこんでばっかりもいられないのですが、今回は道具編の終
 盤、「変化」です。
  これまで所有・存在、効果と進んできた道具の最後のファクター。
   実はこの「変化」があるおかげで、道具は動的な存在となれる
 のですが、いったいどんな「変化」があるのでしょうか。
  少しずつ掘り下げていくことにしましょう。
  というわけで、物語解析、はじめてしまいましょう!!


 ● 02 ● 要素による解析ってなに???            :[ 02 ]
  ̄ ̄ ̄ ̄
  これまでの物語解析では、物語は「人物」「舞台」「道具」
 「決まり事(背景)」の四つに分かれ、その四つの働きを調べる
 ことにより、物語をかなり正確に把握できるというお話をしてき
 ました。
  「人物」に関しては、第六号、第七号を通して、「舞台」に関
 しては第八号〜第十一号までにお話したと思います。

  前々々回から、「道具」のお話をしています。
  今号は「道具」のもうひとつの関係線、「変化」のお話。
  魅力的な道具周りの関係線のこと、少しでもお知りいただけれ
 ば、幸いです。

  もし、前回以前の内容がお読みになりたいという方がいらっ
 しゃいましたら、物語解析ホームページにバックナンバーがあり
 ます。もしご興味がございましたら、ご覧いただければ幸いです。

  と、いうわけで物語解析、はじめちゃいましょう!!


 ● 03 ● 解析術講座  「要素による解析「道具――変化」」:[ 03 ]
  ̄ ̄ ̄ ̄

  まずは例文です。

  真夜中のブルーバード。久々の休暇は紀伊への旅行につかい、
 はしゃぎきった夏休みも終わりに近づいていた。対向車はほとん
 どない。南紀白浜から豪雨の国道を飛ばしながら、タカミチは
 スズに呟いた。
 「おれさ、週明けからプロダクトマネージャーになるんだ」
 「そう! すごいじゃない!」
  タカミチは上機嫌で鼻歌を歌い、雨音の向こうに聞こえる潮騒
 に耳を澄ました。
  天気予報は台風の接近を告げているが道は一直線に大阪の自宅
 に向かっている。そのままスズとベットイン。なにもかもが明る
 い未来に見えた。
  ブルン
  突然、ブルーバードから異変音が聞こえる。
 「どうしたの?」
 「ああ、いや心配ない」
  音はエンジンから聞こえるようで、タカミチは不安になる。ラ
 ジオがサザンオールスターズのサーフソングを響かせ、時報が
 23時を打った。
 (まずいな、近くの街まで十キロはある)
  風雨は激しくなる。
  速度を上げると今度は激しくタイヤが鳴った。車体が急激にス
 リップをはじめ、ハンドルを切るがそのままガードレールに衝突
 する。激しい衝撃が襲うが、タカミチもスズも無事のようだ。
 「・・・ねえ」
 「ああ、大丈夫だ。ただのパンクさ。仕方ないこのまま街まで行こう」
  よろよろと徐行を始めるとエンジン音にけたたましいノイズが
 混じる。しばらく行くとボンネットは蒸気を発し始め、これ以上
 の走行が危険な事が分かった。あきらめようにも周囲は豪雨だ。
 寒いというのでヒーターをつけると5分もしないうちにバッテリ
 ーが上がり、楽しげな曲はぷつりと消えた。
  真っ暗になる。
 「・・・ねえ」
 「ああ、大丈夫だ。こんな時のための携帯だよ。あ、JAFです
 か? ちょっと立ち往生してしまって」
 『それは災難ですね。こんな台風の日に。いまどこですか?』
 「えーっと、いま」
  プツ
 「どうしたの?」
 「電池が切れた。スズ、携帯かしてくれ」
 「え、出るとき言ったじゃない。忘れてきたって」
  豪雨は激しくなる。
  その音の狭間に渦巻くような潮騒が間近に聞こえる。
 (え、もしかして、この道ってかなり海に近いんじゃあ・・・)


  はい。
  いつもながらひどい文章ですが、これが道具の変化です。
  わかりやすいですね。
  ・・・って終わってしまうと非常に問題です(^_^;


 ○ 03 ○ 「変化って何?」        ○ 01 ○      :[ 03-01 ]

  前々号で、道具のファクターとして、
 「小夜子さんの」「人を殺してしまうブーメランが」「折れた」
  と端的に例を挙げたのですが、今回は、この「折れた」の部分
 です。

  例題を見てみましょう。
  序盤から終盤にかけて、大きく物語が動いているのですが、実
 はこの例文で物語を大きく動かしているのは、道具であることが
 分かると思います。タカミチもスズも、そして道路という舞台も
 なんの動きもしていません。しかし、はじめは充実した休日のは
 ずが、突如、命の危機にまで転落してしまうのです。
  これほどまでに大きく物語を動かしているのは、そう、道具。
  しかも、道具の「変化」なのです。

  物語解析の定義に従えば、要素には非常に大きな着眼点として、
 「独立的」であるか「従属的」か、そして「動的」か「静的」か、
 の二つがあります。「独立」「従属」の項はその要素が「単独で
 存在できるか」に注目しており、「動的」「静的」は物語にどの
 ように影響を与えるを見ています。

 ■定義文

  「物語の中において、他に従属せずに存在でき、動的に物語に影響を与 
   えることができる要素は、人物・舞台・道具の三つしかない。静的に 
   物語に影響を与える、独立した要素としてもう一つ、決まり事(法律 
   など)が存在する」

  そもそも物語解析が、なぜこのような視点を重要視しているか
 といえば、物語解析が模範とするシェイクスピアの作品が「多極
 的物語」を指向しており、さまざまに分析をしていくと、この多
 極的物語がハリウッド映画をはじめとする高額な物語の主流とな
 っており、逆に言えば主人公の心理を刻々と追う純文学のような
 内向的な物語が「単極的物語」を指向していると大まかな分析が
 出来るからです。

  この多極的な物語において、「極」がたくさんなければいけま
 せんから、「独立」した要素が多く必要です。それが、「人物」
 であり、「舞台」であり、「道具」であり、「決まり事」である
 わけです。

  また、極が多くあっても、それが独立して動かなければ、物語
 が多極的に動かないので、その独立要素が「動的」でなければ、
 物語に動きは生まれません。
  「人物」はいいでしょう。「舞台」もよく動くことが分かりま
 した。しかし、振り返ってみて、「道具」はどうでしょうか。
  動くんですかね?
  例文を思い出してみましょう。
  この例文の中で「動いている」のは、物語に動的に動きを与え
 ているのは「道具」以外にありません。
  え? 確かに走ってるですって?
  よーく読んでくださいね。この例文の中で「道具」が動的に動
 いているのは、「所有・存在」ではなく、「効果」でもなく、
 「変化」なのです。
  さて、その話をしていきましょう。

 ○ 03 ○「道具の変化は、物語の意外なアクセント」○ 02 ○      :[ 03-02 ]

  ハリーポッターのような魔法ファンタジーを見ていてつくづく
 思うのは、「非常に不安定な魔法の道具が多い」、ということで
 す。物語解析を読んでこられた方にはすぐにピンと来ると思うの
 ですが、
  「不安定」=「物語に波乱を与える」
  という公式上、非常に望ましい要素を持った「道具」がこれで
 もかというぐらい登場するのです(ハリーポッターの場合これに
 不安定な舞台が加わりますが)。
  過去の魔法ファンタジー(たとえば指輪物語)と見比べてみる
 と、どうもこれがハリーポッター成功の秘訣ではと思えてくるの
 ですが、主人公たちの周囲にあるすべての「道具」が、不思議で、
 動的で、意外性に富み、ユーモアに満ちている、と並べてみると、
 ものすごい数の魅力的な道具たちが、この物語を支えているので
 はと思えてきます。
 (そして、この辺りがハリーポッターシリーズが、ファンタジー
 のエポックメイキングとなった所以でしょう)

  道具の変化というのは、実はシェイクスピアではあまり用いら
 れない方法です。
  これが多用されているのはハリウッド映画であり、宮崎アニメ
 であり、ディズニーやピクサーは実はあまり得意でなく(これは
 不思議ですが)、スターウォーズは山のように使っています。
  そして、そのほとんどが、「道具」が、

 「期待はずれの効果を発揮する」か「期待以上の効果を発揮する」

  のたった一つの軸で動的に物語に作用し、その際たる変化が
 「壊れる」という事だったりします。
  この視点のみで道具の変化を捉えると非常にシンプルな光景が
 現れ、「道具」一つ一つに物語の進行軸に対する効果の曲線を書
 いてやれば、これで「道具」の変化を書ききったことになってし
 まいます。
  そして現在のハリウッド映画はこの域を出ないので、とりあえ
 ずのところこれだけでも十分でしょう。

  しかし、残念なことにというか、好ましいことに、ハリーポッ
 ターシリーズが、「道具」の「変化」の枠を拡大してしまったた
 め、新たな使い道が「道具」にはあることが判明しました。
  それは、「動的な道具」による物語世界描写とでも呼べばいい
 のでしょうか。
  元来、静的である「決まり事(世界観)」を際だたせるために、
 その法則性に従っていると思われる「動的な道具」たちを(もし
 くは「動きそうに見える道具」たちを)、小脇役のように無数に
 ちりばめ、動的に物語に関わることによって、あたかも「世界観」
 を動的に見せる(厳密には世界観は静的ですが)という芸当なの
 です。
  なので、ハリーポッターの動的な道具たちは、ナンセンスで
 ユーモアが溢れるものが非常に多く、それが物語中に散りばめら
 れることによって、物語をユーモア溢れるものに飾り立てていま
 す。
  まあ、なんというか、道化師が無数にいる作品を想像してくだ
 さい。けっこう、くどい作品ですよね。
  だけど、これを道具にしてしまう。
  この瞬間、道具には思考がないため、それほどくどくならずに、
 物語を彩る要素として無理なくハリーポッター世界を埋め尽くし
 ているのです。
  うーん、新手の手法です。

  しかし、この方法、イメージに富んだ描写だらけの小説と何と
 なく似ている気がしますよね。無数のガジェットに満ちあふれた
 SFや、美しい描写のファンタジーのように。
  それらの作品がとても上質な作品であることには間違えがない
 のですが、ただ一点だけ、決定的な違いがあります。
  もう、お気づきでしょう。
  描写は静的であり、決してそれ自体が物語を動かすことはない
 のです。

  わたしも物語解析をやっていなければ気付かなかったと思うの
 ですが、非常に不思議なことに、描写は読み手の視線や意識は動
 かすくせに、物語中の人物や他の要素は全く動かず、何の作用も
 与えないのです。
  それを看過したのが、ハリーポッターなのでしょうか。
  なぜそれができたのかは、わたしにとっても大きな謎です。
(わたしは、作品を法則に照らし合わせて解析しているだけなので)


 ○ 03 ○  ハリーポッター手法の応用     ○ 03 ○      :[ 03-03 ]

  さて、このように書き進めると、非常に気になる疑問が生まれ
 ます。それは、
 「この手法は他の作品にも応用が可能なのか」
  という部分。
  物語解析は、一応、過去の名作を分析して、その良いところを
 盗むことを、目的の一つにしています。ハリーポッターの手法が
 分析できた以上、これはもちろん応用可能と言うべきでしょう
 (ホントか?)。
  出来るのでしょうか。
  たぶんできます。
  まずそれには、ハリウッド的な軸ではない「動的な道具」に着
 目をして、物語を見つめてみることから始める必要がありそうで
 す。


 ■ゴシックホラー的、赤頭巾ちゃん

  さて、いきなりの題名が出ておりますが(^^; 誰もが知ってい
 る赤頭巾ちゃんを、ゴシックホラー風に変奏して見ることを例に挙
 げてみましょう。
  実のところ、この「動的な道具」の方法論は、ホラーというジャ
 ンル、しかもゴシックホラー(※1)の分野に、その様子が散見で
 きます。
  意味ありげな騎士甲冑、不気味な時計、じゃらじゃら鳴る鎖帷子、
 壊れた人形。
  ほーら、なんかにてますよね。

 ※1
 ゴシックホラー:
 スティーブン・キングのモダンホラー、ポオ、ラブクラフトの怪奇
小説以前のホラー。ラブクラフトの評論『文学と超自然的恐怖』に極
めて詳細なゴシックホラー史の解説があるが(ちなみにすべての作品
において「まったく不自然でぎこちない」とずたぼろに酷評。詩的で
ないと一刀両断にする評も)、なじみのある題名はほとんど出てこな
い。ちなみに最高峰として挙げているのはチャールズ・ロバート・マ
チューリンの『放浪者メルモス』。どう考えても、邦訳されていると
は思えない。そう簡単に手に入るたぐいのジャンルではない。『嵐が
丘』あたりが非常に近いので、参照。

 ちなみに日本では夢野久作がわずかに怪奇小説の王道だが、なぜか
彼は自分の小説を「探偵小説」と呼んでおり、探偵小説を解説する評
をいくつか残している。広い意味でのミステリーなのだろう。ポオが
推理小説と怪奇小説の両方のエポックメイキングとなってしまったた
め、日本では混乱している。少なくとも江戸川乱歩を怪奇小説に分類
する人はあまり見ない。


  もちろん、SFにしてみたり、ファンタジーにしてみたり、現代
 ドラマにしてみたり、歴史ロマンにすることは可能だとは思うので
 すが、あまり高い壁はこの物語解析の短い文章で挑んでもしかたあ
 りませんので、非常に簡単な例にとどめたいと思います。
  そういう難しいところは、これを読んだみなさんにお任せするこ
 とにしまして、まあ、どんな感じになるかを楽しく読んでいただけ
 ればうれしいです。

 ■シーンを選ぶ

  さて、赤頭巾ちゃんの改造に挑む前に、どのシーンを改造する
 かを選ぶことにしましょう。さすがに、全編を改造するととても
 600行では収まりそうにありませんので、シーンを限定して楽をす
 ることにします。
  赤頭巾の話は、
  家 → 森 → おばあちゃんの家 → 食べられる → 
 助けられる
  と進みますので、このうちのどれかを選びましょう。
  そうですねぇ。後半になるとかなり物語が動き、あまり道具の
 助けは必要がなさそうですので、森がいいでしょうか。残念な事
 に赤頭巾の話は、承にあたるこの部分が鮮やかな転に比べて弱い
 傾向がありますので、ひょっとしたら多少の補強になるかもしれ
 ません。
  では、森にしましょう。
  赤頭巾が道草し、狼に問いかけられ、おばあちゃんの家に行く
 ことを知られ、食べられる伏線となるシーンです。

 ■道具を探す

  さてでは、このシーンで出てくる道具を探します。
  列挙してみましょう。
  ・パン
  ・ワイン
  ・バスケット
  ・赤頭巾
  ・花々
  ・木々
  うーん、こんなもんでしょうか。
  なお、木々と花々は舞台(の一部)にも、道具にも、はたまた
 人物にもなり得ますが、今回は道具にフォーカスが当たってます
 ので、道具と考えます。詳しく解説すると、一回分の分量になっ
 てしまいそうな難しい部分ですが、木も舞台から引っこ抜いて振
 り回せば「道具」になると簡単に説明しておきます。

 ■道具を追加する

  さて、既存の物語に存在する道具を列挙をしてみましたが、ど
 うもゴシックホラーにするには弱い気が・・・。うーん。夜にします
 か。ランプが必要ですね。あと、途中で消えてしまうことにして、
 火打ち石も必要です。
  だいぶイメージができてきました。
  ツタもありでしょうか。フクロウがいても良さそうです。

  他にないでしょうか。
  うーん。なぜ夜に女の子一人で森に出すのでしょうか。理由が
 ほしいですね。
  おばあちゃんが急病なのでしょうか。では薬草を追加しましょ
 う。薬草は森で手に入る事にします。しかし、なぜ両親が行かな
 いのでしょうか。うーん、そういえば、元の物語で両親は赤頭巾
 を助けませんね。きっと、森へ出せば狼に食われてしまうと思っ
 て外へ出したのでしょう。
  うーん。
  まあ、ゴシックホラーだから良いことにしましょう。
  ゴシックな物語の主人公は、極めて不幸な家庭環境にあるもの
 です。
  列挙してみましょう。
  ・ランプ
  ・火打ち石
  ・ツタ
  ・フクロウ
  ・薬草
  だいぶ多彩になってきました。


 ■どのように「変化」するか考えてみる

  さて続いて、リストアップされた道具たちがどのように「変化」
 するかを考えてみます。ここでの「変化」は、ゴシックホラー的、
 つまりコテコテのダークファンタジー的ですので、ラブクラフト
 大先生に酷評されてしまいそうなほど、「まったく不自然でぎこ
 ちない」ような「変化」で構いません。
  列挙されてるのは、以下の道具です。
  ・パン
  ・ワイン
  ・バスケット
  ・赤頭巾
  ・花々
  ・木々
  ・ランプ
  ・火打ち石
  ・ツタ
  ・フクロウ
  ・薬草

  さて、このうちで『ランプ』は変化の仕方が確定しています。
  「風もないのに消える」です。森に入ったとたん、ふうと消え
 てしまう。十分に「変化」しているでしょう。「勝手に」消えて
 しまいます。動的ですね。

  赤頭巾は、暗いと困りますから『火打ち石』で火を付けようと
 します。もちろん、はじめは点くことにしましょう。そしてまた
 『ランプ』は消えます。また、赤頭巾は点けようとしますが、今
 度は赤頭巾が『火打ち石』を夜露に濡れた『花々』の中に『火打
 ち石』を落としてしまうため、湿ってしまい、火がつかなくなり
 ます。『火打ち石』も変化しました。
  (これは、ハリウッドがよく使う手です)

  おっと、『花々』が出てきましたね。夜露に濡れたと書いてあ
 りますので、元々濡れていなかったのが不自然に湿ることにしま
 しょう。なんとなくホラーになってきました。後に『薬草』を探
 すことになりますので、この辺でも障害になります。そうですね、
 探していると『花々』がむせび泣くような声が聞こえてくること
 にしましょう。つまり、夜露ではなくこれは涙なのです。はいは
 い、ホラーになってきましたよ。

  続いて、そうですね、『パン』と『ワイン』に行きますか。
 『パン』と『ワイン』はキリスト教ではキリストの肉と血をそれ
 ぞれ現しますから、肉と血に「変化」することにします。えーと
 そうですね。そうか。『薬草』を手にするために、呪われた森に
 肉と血を捧げなくてはならないことにします。
  だいぶ、ぎこちなく不自然になってきました(^_^;
  そこで、『ツタ』が犠牲を求めてうねうねと『ワイン』をひっ
 たくろうとし、それが割れ、どろりとした血になります。『フク
 ロウ』が『パン』をついばみそれが肉になってしまうのです。
  『パン』と『ワイン』と『ツタ』と『フクロウ』が「変化」し
 ました。

  さて、残りですが。
  うーんと、前段の流れで、一度『ツタ』と『フクロウ』が血と
 肉をほしがって、赤頭巾ちゃんに襲いかかることにします。そこ
 で、『赤頭巾』が光を放って赤頭巾ちゃんを守るので、狙いを変
 えて、『パン』と『ワイン』を狙うことにします。
  だいぶ、減ってきましたよ。

  残るは、
  ・バスケット
  ・木々
  ・薬草
  ですか。
  まだ、呪われた森と『薬草』の辺が説明できていませんので、
 この辺を整理しますか。そうですね、森に入り『花々』をかきわ
 けて『薬草』を探していると、『花々』が泣き始めます。そこで、
 『木々』のざわめきが声に変わります。
  「王が死んだ、森の王が死んだ」
  とざわめくことにしましょう。
  もちろん『木々』に意志はありませんので、ただ繰り返すだけ
 です。
  『薬草』は森の王(これは枯れた巨木にしておきましょう)の
 実であることにして、犠牲を払えば、巨木が『薬草』=実をつけ
 ることにします。
  犠牲が払われれば、『木々』は黙ります。
  うーん、これまでの流れ、ほとんどが道具たちのちょっとした
 「変化」の連鎖で起こっていることを確認してみてください(そ
 して、ぎこちなく不自然なダークファンタジーになったことも)。

  おっと、『バスケット』が残っていました。
  うん。めんどくさいので、壊れてしまうことにします。
  これで、全部の道具が「変化」しました。
  まとめてみましょう。


 ■最後に物語にする

 おばあちゃんの家へ急ぐ赤頭巾は、森へとやってきました。
 呑み込まれそうな闇。ただランプの火だけが頼りです。
 絨毯を敷き詰めたような白い花々が夜風に揺れ、木々は鬱蒼とツ
タを絡ませ、どこかでフクロウの鳴き声がします。赤頭巾はパンと
ワインの入ったバスケットを握りしめ、深い森に分け入りました。
 どこかから声がします。
「赤頭巾ちゃん、赤頭巾ちゃん」(←これは狼の声)
 どうやら赤頭巾を呼んでるよう。
「赤頭巾ちゃん、赤頭巾ちゃん。こんな真夜中になにをしているの?」
「おばあちゃん家へ行くところ」
 赤頭巾は答えます。
「赤頭巾ちゃん、赤頭巾ちゃん。おばあちゃん家は森の向こうだよ。
道草しててはいけないよ。わるい狼がやってくるよ」
「おばあちゃんが急病で、森の薬草が必要なの」
 不思議な声は答えます。
「夜の森は、深い呪い。薬草探しは夜には不向き」
 不思議な声はぱたりと消え、何かが遠くへ駆けていきます(←狼退場)。
 赤頭巾は深い森へ分け入ります。すると不意に風もないのにラン
プが消え、底知れぬ闇が赤頭巾を包み込みます。あわててバスケッ
トから火打ち石を取り出し、カチカチカチとランプをともします。
 またぼんやりと森が戻り、赤頭巾は怖くなって森の奥へと駆けま
した
 森はどんどん深くなるばかり、気づくとランプが消えていました。
 カチカチカチ。
 赤頭巾はふるえながら火打ち石を打ちます。あまりに手がふるえ、
火打ち石が花々の中に落ちてしまいます。深い森は小さな赤頭巾を
一息に呑み込んでしまいそう。花々の中に這わせた手が火打ち石を
つかみます。しかし、それはぐっしょりと濡れているのです。
 辺りは闇に包まれました。赤頭巾は自分の手も濡れているのに気
づきました。
 自分の足も、膝も。
 足下の花々が、夜露に濡れているのです。
 風がごうごうと森を揺らし、どこかでフクロウの声がします。
 先ほどまで静かだった森は、狂ったように鳴き始め、足下からは
嗚咽のような声が響きます。赤頭巾は畏れおののいて、地面にへた
りこみます。見ると花々が震え泣き、ぽろぽろと涙を流しているの
でした。
「森の王がしんだ。森の王がしんだ」
 上空の風の中にそんな声が聞こえます。木々は哀しみのあまりに
我を忘れ、赤頭巾がいるそばでざわざわとしなるのです。
 不意にフクロウの嘴が襲いかかり、赤頭巾は悲鳴を上げました。
 誰もいない深い森。見るとツタが赤頭巾を捕まえようとざわめき
始めます。
 しかし、不思議と赤頭巾には近づけないのです。赤頭巾は、おば
あちゃんからもらった頭巾が淡い光を放っているのに気づきました。
赤頭巾は立ち上がり、真っ暗な森を走ります。
 すると、前方に銀の光が見えます。月光が差し込んでいるのです。
 恐ろしくなって泣き、何度も転び、起き、ついにバスケットを落
としてしまいました。
 フクロウとツタはバスケットに襲いかかり、ツタはワインを、フ
クロウはパンをさらいました。
 ガシャン。
 どこかで、ワインが割れます。ほのかな光の中で見ると、それは
どろりとした血になっていました。
 ホウホウ。
 どこかで、フクロウが鳴きます。ほのかな光の中で見ると、フク
ロウは血の滴る肉を啄んでいるのでした。
 あわててバスケットを拾い上げ、月光の差し込むところへ走りま
した。
 赤頭巾には分かっていました。
  森の王がしに、呪われた森は犠牲をほしがっているのです。
 森に食べられてしまうわけには行きません。
 駆け、転び、起き、まがまがしい銀の月光の差し込むところに急
ぎました。
 月光は、枯れた巨木を照らしていました。
 赤頭巾はおびえながら近づき、その老いた樹皮に触れました。か
さかさとひからび、生命を失っていました。
 バスケットからワインを取り出し注ぎます。パンを取り出し供え
ます。
 すると巨木は紅く、まぶしく光り、ひかりのなかに一枝が伸び、
そこに実が生りました。赤頭巾はおそるおそるそれを手にします。
それが薬草でした。森は哀しみにふるえるのをやめました。静かな
森の夜が、気づくと戻っていました。
 バスケットを持ち上げようとして、赤頭巾はそれが壊れてしまっ
たことに気づきます。
 薬草だけを握りしめ、おばあちゃんの家に向かいました。


 うーん、長いですね・・・(^_^;
 ぎこちなく不自然ですが、なんとなくホラーになったのではない
でしょうか。




 ● 04 ● おわりに                      :[ 04 ]
  ̄ ̄ ̄ ̄
  物語解析、最後までお読みいただきありがとうございました。
  四年ぶり第二弾となる今回は、それほど難しいところもなく、
 とんとんと進められて非常に楽しい回でした。

  とりあえず、今回で、道具の概念編が完了し、次回の道具
 「実践編」を経て、その後の世界観パートへと入ってきます。

  いやー、長かったなあ、と思いつつ、そのほとんどをお休み、
 していたhikaliです(^_^;

  キリキリやれば何とかなる。
  と思いつつも、ゴールデンウィークは少しも進んでいなかったり。
  まあ、休むときは休みましょう。
  というわけで、次回をお楽しみにしていただけると嬉しいです。

  それでは、また。

 ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■―― ■ ―― ■
                          第十五号   2006/05/10
   「 物 語 解 析 」
    〜 要素による解析基礎 「道具」 変化 〜

 発行者:hikali
   文:hikali

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新・物語解析
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主役を6人にする
世界情勢を俯瞰してみる
「ハウル──ペンステモン」ラインを再構築する前に
プランA
結局どうだったの? 映画版ハウル
原作ハウルを21章じたてのプロットにまとめてみる
ソフィーは、世界背景をあまり見ていない
一応原作を確認しておく
実は表現力に左右される!
殺しては行けない部分を探す
ハウルのプロットは映画には不向き
宮崎駿監督「魔法使いハウルと動く城」を原作からつくっちゃおう!