■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■―― ■ 
                       第三号   2001/05/13 
   「 物 語 解 析 」 
    〜 起承転結法 起・承・転・結(後編) 〜 

  - - - -< Index >- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 

   01:はじめに 
   02:解析術講座 「起承転結法 〜起・承・転・結(後編)」 
     02-01:起承転結法の理解のために 
     02-02:実践 「起承転結の文章の作成(後編)」 
     02-03:解答 
   03:諸所雑感 「法律事務所に見る転・結」 
   04:おわりに 

 ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ http://www.seikou-toutei.com/nmk/index.html ■


 ● 01 ● はじめに 
  ̄ ̄ ̄ ̄ 
  物語を書く際に利用のしようがある技術を、さまざまな名作から抜き出 
 して、例題形式や、お読みいただく方々のお声を採り入れながら、分析を 
 してゆきたいと思います。 
  数学のような計算と理論の手法ではなく、現場で「こんないい方法が 
 あった!」という方法論を積み上げてゆく工学の手法で、少しずつ物語の 
 技術について掘り下げてゆけるといいななんて思います。 
  物語解析などと大上段に振りかぶっていますが、まだ誰も手を出したこ 
 とのない分野です。これから、そういう事を考え、分析・研究を始める人 
 たちが増えてくるといいな、なんて思います。 
  物語に触れる気持ちに変化が出てきますよ。 


 ● 02 ● 解析術講座 ― 「 起承転結法 〜起・承・転・結(後編) 」 
  ̄ ̄ ̄ ̄ 

 ○ 02 ○ 起承転結法の理解のために ○ 01 ○ 

  さて、今回は起承転結のそれぞれの役割についての後編です。前号にお 
 伝えしました通り、今回は起承転結の「転」「結」の解説を致します。 
  むりやり分割をしたにも関わらず、とても長い回となってしまいました。 
  また、今回より購読下さる方々が非常に多くなってしまいしました。 
  バックナンバーが用意してありますが、もしメールの形で欲しいという 
 方がありましたら(私もそのクチですので(^^; )、送付させて頂きま 
 すので、お気軽に私まで(n_hikali@hotmail.com)、一言お声を掛けて下 
 さい。このメールの返信でも届くはずです。 
  それでは、長丁場となります。 
  どうぞ、最後までお付き合いくださいませ。 


 ○ 02 ○ 実践 「起承転結の文章の作成(後編)」 ○ 02 ○  

 「転」 

  転が果たす役割は変化です。 
  ですが、この変化には緒論があります。どの程度の変化が望ましいか、 
 もっと正確に言えば、どれだけ突拍子もない転であるかという部分がしば 
 しば問題となります。 
  文豪は緩やかな転を多用します。ストーリーラインの流れの美しさが命 
 なのでしょう。これに対して突拍子もなさ過ぎる転を持ちだす物語りもあ 
 ります。「かぐやひめ」のかぐやひめが月の住民だと告げる部分や、「浦 
 島太郎」の竜宮城から帰ってくると何百年もの月日が経っていたなどは、 
 昔話で誰もが小さな頃から聞きつづけていますので不自然さは感じないか 
 もしれませんが、冷静に分析をしてみれば、あまりにも突拍子がないのが 
 わかります。ですが、特にこの転の部分の魅力が、物語の魅力になってい 
 るものが多いのです。 
  どちらがよいのかはなかなか甲乙つけがたいところがあります。 

  転を明らかに決定づけるのは、他とは違う大転換です。これまで剣呑と 
 物語世界に浸っていた読者を、はっと目覚めさせるほどの力強さ、もしく 
 は物語に強い影響を与える大転機でなければ読者を楽しませるのに充分な 
 転とは言えません。「ロミオとジュリエット」は転で、ロミオがティーボ 
 ルトを殺害する時点で劇的に物語の質が変わります。「赤ずきん」ではお 
 ばあちゃんが狼に食べられ(この辺はサスペンスフルの転として次回解説)、 
 「白雪姫」では白雪姫が毒の林檎を食べて眠りにつきます。 
  転は、物語を急展開して物語にメリハリをつける部分なのです。 
  また、読者に予想のつかない面白さを感じさせるのもこの転なのです。 

  物語を、読者を意識して創作するときに論じられる評価軸として、「ど 
 れだけ読者の期待に応え、どれだけ裏切ったか」という評価軸があります。 
 大方は「八割期待に応え、二割裏切る」付近が穏当で、読者にそっぽを向 
 かれることのない安全な物語とされるのですが、「いや、五割は裏切らな 
 ければ」という大胆な人もいます。もちろん、この評価軸で話される「裏 
 切る」はポジティブな裏切りであり、決して裏切りさえすればどんなもの 
 でもよいと言う訳ではないのですが、期待を裏切ることは慎重になさねば 
 なりません。 
  この評価軸は、「読者の受け入れやすさ」と「意外性の面白さ」という 
 両極をもつ価値軸に言いかえる事ができます。 
  つまり、「期待に応え続け」れば、読者はなんの抵抗もなく読み進むこ 
 とができますが、必ず飽きられてしまいます。「裏切り続け」れば、当然 
 ながら読者が先を読むことは全くできませんが、読者が全く理解できない 
 という事になってしまうのです。 
  この「応える」「裏切る」の比率を意識することが、読者を想定して物 
 語を創作する際には、重要となってくるのです。 

  実は、この「応える」「裏切る」という概念を、起承転結に照らし合わ 
 せた際にぴたっと適合する部分があります。 
  お分かりかも知れませんが、転こそが「裏切る」部分なのです。 
  ですから、この転の強さというのはとても微妙なさじ加減が必要になって 
 きます。弱ければ飽きられ、強すぎれば理解されないのです。 
  さて、「応える」はどの部分でしょうか? 
  これはちょっと難しいかも知れませんが、承なのです。実際の物語に照 
 らし合わせ、少し考えれば分かりますよ。 
  このような視点で物語全体を俯瞰してみますと、起承転結の物語は、期 
 待に応えつづけていた態度を突然一転させて、終局へ向かうということに 
 なります。この部分こそが物語の意外性であり、面白さの部分でもあるの 
 です。ですから、もし、転が充分でなく、「効果的な裏切り」をするとが 
 できないとすれば、その物語は意外性、面白さに欠けるものとなってし 
 まっている恐れがあるのです。 

  さて、例題を考えましょう。 
  この例題の場合は、文章が極端に短いという事で、シャープさが命です。 
  つまり、漢詩や前号で紹介したい「糸屋の娘」の歌の方法論を踏襲し、 
 限りなく突拍子もない方で行くことにします。 
  さて、これまでの文章を見てみましょう。 
  片一方は、 
 ・飯田橋の駅を過ぎるて通勤電車は、ようやく閑散としてきた 
 ・腕時計をちらりと眺め、定刻通りだと窓の外を見つめる 
  でした。起・承が終わっている事になります。ここから突拍子もなく変 
 化させるわけです。できるのでしょうか。私も不安です。 
  残っているキーワードがあります。 
  失意です。 
  失意の篭った、突拍子もない言葉をさがしましょう。もちろん、起・承 
 を受けなければなりません。 
  ある程度は結まで見通したものにしないと、うまくまとまり様がありま 
 せん。 
  ちょっと考えて、 
 ・私は百メートルを十三妙で走るんだけどな 
 としました。 
  う〜ん、突拍子のなさでは抜群かも知れません(^^; 失意・起・承・結 
 へのつながりは、結との絡みが明らかにならないと説明しにくいものがあ 
 りますが、なんとなくわかるのではないでしょうか。 

  さて、もう一方も考えてみることにしましょう。 
  もう一方は、 
 ・深夜の地下を走る時計を僕は見ていた 
 ・十七分の通勤電車が大勢の家路となりがたがたゆれてる 
  でした。 
  もうすでに、この時点でかなり「裏切っている」文章といえます。緊張 
 感があり、なおかつ、先が読みにくい文章であると思います。全てをまと 
 めきる役割は結にありますので、ここでは「その結へ向けての地ならし」 
 が役割となります。 
  起と承を受けましょう。そして、物語を大きく転換しましょう。 
  ここは思い切って、失意を前面に出すことにします。 
  少し考えて、起・承の雰囲気をなるべく引き継ぐものにしました。 
 ・飲みすぎだなんて、聞きたくもない 
  とてもシンプルです。 
  緊張感を維持しながら、ぐっと結末へとを近づきました。 


 「結」 

  結に課せられる役割は、物語の中でちゅうぶらりんになっていた部分を 
 一気に解決することです。 
  結の後ろはないのですから、この部分でまとめきらなければなりません。 
  分かりやすい例を言えば、赤ずきんの狼は池に沈み、シンデレラは王子 
 様と幸せに暮らし、わらしべちょうじゃは大金持ちになります。つまり、 
 読者の「知りたい」にピリオドを打つ部分が、この結なのです。 
  確かに終わった、そう感じさせ、それ以上に知りたい事が発生しないよ 
 うに、説明をつけきる事が仕事となります。 
  ハリウッド映画を考えてみましょう。 
  もし、一流の映画が、結末をつけずに終わってしまったら、お金を払って 
 映画を見にきた人たちは、とても気持ち悪い思いをするに違いありません。 
 確実に、興味を終わらせることも、読者を考えて物語を創作する際には、 
 必要な事であるのです。少なくとも、起承転結型の、強固な物語を考える 
 際には、結の堅実さはとても重要となってきます。 
  
  結は、起承転で積み上げたことにより決定されます。つまり、起承転結 
 法の設計どおりに物語を作っていれば、結は起承転によって必ずいくつい 
 かのパターンに絞られてくるはずですし、そうでなければ、起承転を受け 
 ていない結となってしまい、非常に不連続な印象を持たれてしまうことに 
 なります。結は納得であり、終結であるのです。もちろん、結にも様々な 
 変則的なものがあります(次号「転の引き伸ばしと、結の切り詰め」「単 
 要素による結」にて掲載予定)。ですが、今回はがちがちに起承転によって 
 固められた、基本通りの結を考えることします。 

  もし、「納得と終結」という役割を結に負わせたとすれば、おのずと終 
 結は、「分かりやすく」「シンプル」なものになります。 
  なかなか分かりにくいかも知れませんが、結という部分だけを取り出し 
 てながめてみるという作業をすると、「なんだ」とあきれてしまうほどに 
 シンプルでありきたりなものであるのです。それではつまらないと思う方 
 もあるかも知れませんが、なにか多くの人に受け入れられた物語の結だけ 
 をざっくりと切り取ってそれを眺めてみて下さい。シンプルではないで 
 しょうか? 
  もちろん、例外もあります。例えば、次回詳しく解説することになると 
 思いますが、「耳なし芳一」の結は、「耳をちぎりとられる」という、そ 
 れだけを抜き出しても何がなんだか分からない結があります。しかし、 
 「耳なし芳一」を読んでいただければ、そのストーリーラインに多くの 
 「伏線とムード」が散りばめられていることが確認できるのではないで 
 しょうか。物語は自由度を制限され、起承転結のそれぞれに個性がありま 
 せん。「面白くないことを、面白く見せる」という起承転結法の強みを充 
 分生かすものではなく、むしろ作者(小泉八雲)の力量により物語の面白 
 さが維持されているのです。 
  一般に結が分かりにくいものであればあるほど、それ以前の起承転に多 
 くの負担がかかります。結が納得されるための準備や仕込みをしなければ 
 ならないからです。ですから、起承転の自由度が減り、奔放な四つの役割 
 が互いを引き立てあうという、起承転結法の強みを生かしにくくなります。 
 わがままな結に足を引っ張られることになってしまうのです。 
  「結はシンプルで分かりやすく」。 
  起承転との関係により、どんなに簡単なことでも、面白く見えてきます。 
  それが起承転結法の本質であり、それぞれに果たすべき役割を果たさせ 
 ることが、この物語法を使いこなすことになるのです。 
  つまり、結は「納得と終結」、なのですよ。 

  さて、例題を片付けてしまうことにしましょう。 
  これまでの文章を見てみましょう。 
  片一方は、 
 ・飯田橋の駅を過ぎるて通勤電車は、ようやく閑散としてきた 
 ・腕時計をちらりと眺め、定刻通りだと窓の外を見つめる 
 ・私は百メートルを十三妙で走るんだけどな 
  でした。 
  シンプルかつ分かりやすく、「納得」と「終結」を達成できるでしょう 
 か。 
  まず、起・承・転を受けなければなりません。定刻どおりの満員電車の 
 中で「百メートルを十三秒で走るんだけどな」と思った人がいて、その人 
 は失意を抱えているわけです。 
  繰り返すようですが結に意外性は必要ありません。 
  こうしました。 
 ・「遅刻」と怒るあの人に少しは近づける、なんて思う。 
  いかがでしょうか。ちょっと自信はないのですが、収束を果たしたので 
 はないでしょうか。 

  もう一つも行きましょう。 
  たしかこうでした。 
 ・深夜の地下を走る時計を僕は見ていた 
 ・十七分の通勤電車が大勢の家路となりがたがたゆれてる 
 ・飲みすぎだなんて、聞きたくもない 
  これもなかなか難敵です。本来であれば起承転結の設計をしっかり考え 
 てから作るところを、起から作っているからです。さて、どうしたらいい 
 でしょうか。 
  これも、材料を起・承・転から探しましょう。 
  起・承・転にそれぞれ当てはまった、「深夜」「十七分の通勤電車」 
 「家路」「飲みすぎ」という言葉より連想されることはなんでしょうか。 
  意外性は必要はありません。 
  私は「家出」という言葉を連想しました。適当に作ってみましょう。 
  「思ったより家出はさびしい」 
  なんてどうでしょうか。なんとなく説明仕切っていない気がします。 
  時計という表現をの理由を想像しましょう。つまりこの「僕」は時計 
 を持っていません。 
  深夜の地下にいる理由を想像しましょう。つまり、それ以外に行くと 
 こがないのです。無計画な家出で、寒くて地下鉄の駅にいるのです。 
  聞きたくないという言葉の理由を想像しましょう。つまり敗北を認め、 
 家に帰る決心をしてしまったのです。 
  こんなのはどうでしょうか。 
 ・でも、はじめての家出は初日の終電で幕を閉じそうだった。 
  なんとなく不安定な感じがしますが、こんな感じにしてみました。 

  さて、文章を並べてみてください。 
  どの言葉もどこでも見かけるような、とてもシンプルなものではないで 
 しょうか。出来上がった二つの物語の広がりを作っているのは、何なので 
 しょうか。 
  これはおわかりの通り、それぞれの言葉の相関関係なのです。起承転結 
 の役割をきちっと果たした言葉は、漢詩の黄金パターンにより、広がりを 
 持つようになるのです。 
  これはもちろん言葉だけでなく、物語にも言えることなのです。 
  なぜかぐやひめをモチーフにする日本人が多いのでしょうか。 
  どうしてシンデレラはあれほど多くの人に比喩される物語になったので 
 しょうか。 
  次号で紹介する耳なし芳一の、浦島太郎と同じ形式の起承転結のテク 
 ニックはなぜ強固なのか。そして、藤子不二夫のような複雑な起承転結。 
  そのどれもに共通しているのは、この起・承・転・結の役割がはっきり 
 過ぎるほどはっきりと生かされ、その黄金律により強固さを保証されてい 
 るからなのです。 
  起承転結、それぞれの部分の意識。そして、その役割分担が行き届いた 
 部品の繋がりが面白さを保証しているのですよ。それぞれは、あまり面白 
 くなくても。 

  とりあえず、起承転結を誉めるのはこの辺にしましょう。 
  最初にいいました通り、起承転結による物語の解析はいささか原始的で、 
 実際性に劣ります。作者が意識として、チェック項目として頭に入れてお 
 く事は重要かも知れませんが、実際に分析するにはミジンコを虫めがねで 
 見るような大雑把さがあるのです。できればそのはらわたが見たい、細胞 
 の一つ一つ、遺伝子までもを解析したいと思うと、精密で正確な道具が必 
 要になるのです。 
  それは次々回からはじめることにします。 
  次回はより複雑な物語構成を、起承転結を使用しながら分析して、起承 
 転結による分析の限界に到達してしまいましょう。 
  ちょっと想像してください。あなたの好きな小説は起承転結だけで説明 
 しきれますか? 私にはできません。 
  ですが、発想を変え、分析の対象を「流れ」から「要素」に代えると 
 様々な上手さが見えてくるのです。 
  とりあえずは次回。 
  そして、次々回からをいっしょに考えてみませんか。 
  見る物語全てに、無数の発見ができるようになれますよ! 


 ○ 02 ○ 解答 ○ 03 ○  

  ずいぶんと時間が経ってしまいましたが、例題への解答をしましょう。 
  前号に提示された例題は次のようなものでした。 

  以下の八つの文章の中から四つを選び、各文章の間に言葉を継ぎ足し、 
 起承転結の物語を完成させて下さい。 

 ・ここまで飛んで来いと、思わず叫んだ 
 ・飲みでもしなければ、やっていられないじゃない 
 ・売り子はビールを差し出しながらおやという表情をした 
 ・七回裏の攻撃が賑やかなトラペットの合奏で始まる 
 ・ビールの泡が歓声にはじけた 
 ・軽い酔いが、私を心地よくしてくれる 
 ・私の好きなあいつは、今日もベンチで笑ってる 
 ・チャンスに登場した四番バッターは私の座るレフトスタンドを静かに 
  指した 

  起承転結のそれぞれの役割を理解した後においてはこれは簡単に思えて 
 くるのではないでしょうか。 
  どのような物語なのでしょうか。 
  どうやら、スタジアムで野球観戦をしているような光景が浮かんできます。 

  さて、起はどれでしょうか。まず当然ながら、何かを受けている文章は 
 起に適しません。読んで説明を必要とするものはその手のものです。ここ 
 で明らかに除外されるのは1、2、3、6、7です。あまりにも特殊な倒 
 置法的な起承転結であればその選択もあるかも知れませんが、「わがまま 
 な結」に起承転が足を引っ張られるのと同じように、わがままな起は承転 
 結を制限してしまいます。たとえば、明らかに起に説明が足りなければ承 
 転結を使って説明をしなければなりません。それよりも分かりやすい起で 
 ある方が効率がはるかによい訳です。 
  残ったのは4、5、8。このうち8は多くの説明文章が含まれています 
 ので除外、残るは4、5です。4と5のどちら起として適当でしょうか。 
 起の役割を思い出して見ましょう。起の役割は「興味の喚起」と「物語世 
 界へのスムーズな移行」でした。端的に言ってどちらが光景が鮮やかに浮 
 かび、興味を抱きやすいでしょうか。4ですよね。 
  というわけで4なのです。 

  起は 
 ・七回裏の攻撃が賑やかなトラペットの合奏で始まる 
  が最も適当と分かりました。次は承を探しましょう。まず、起を受けて 
 広がらなければなりません。それが承の役割なのです。まず明らかに1、 
 2、7、8は文脈が繋がりません。3、5、6が残りますが、さてこの三 
 つの中でどれが最も魅力的な承でしょうか。 
  承の黄金パターンを思い出してください。 
  多くの要素が登場する事が世界を広げると解説したのを覚えているで 
 しょうか。 
  承は起を受けていながらも、起にはなかった情報を提示しなければなり 
 ません。 
  3ですよね。一瞬、起を受けていないように見えてしまうのですが、野 
 球観戦と言ってまず思い出されるのはビールの売り子、という方もいらっ 
 しゃるのではないでしょうか。トランペットの合奏の中、おやと首を傾げ 
 るビールの売り子は、印象的です。起では完全でなかった物語世界ができ 
 ていく感じがしませんか? 

  これまでの文章は、 
 ・七回裏の攻撃が賑やかなトラペットの合奏で始まる 
 ・売り子はビールを差し出しながらおやという表情をした 
  でした。次は転です。転の役割は大きな変化。「裏切る」と「応える」 
 の話は覚えていらっしゃるでしょうか。では、さっそく「裏切」ってみる 
 ことにしましょう。 
  明らかに裏切れないのは5、6、7、8です。残るは1、2ですが、こ 
 れも説明は要らないでしょう。2です。「飲みでもしなければ」承を受け、 
 「やってられない」で華やかで賑やかな「起」を裏切ります。きわめてシ 
 ンプルで、オーソドックスな起承転であることが分かると思います。何も、 
 複雑な事はありません。起承転結の役割を、それぞれが明確に果たしてい 
 るだけなのです。 

  ピリオドをうちましょう。これまでは、 
 ・七回裏の攻撃が賑やかなトラペットの合奏で始まる 
 ・売り子はビールを差し出しながらおやという表情をした 
 ・飲みでもしなければ、やっていられないじゃない 
  でした。当てはまらないものをまず除外しましょう。1、5、6、8と 
 除外すると、7しか残りませんでした。正解は7ですが、それではあっけ 
 ないので、1と比較しながら少し説明をしましょう。結は「納得」と 
 「終了」です。1が適さないのは、このうちの1の部分です。なぜ叫ぶの 
 かがまったく分かりません。7はしっかり、起承転と展開してきた物語を 
 説明しきっています。「ああ、この人は代打で誰かが出て活躍をするのを 
 期待して見にきたのだな」と思えるのではないでしょうか。去年の清原を 
 見ていた方であれば、この気持ち、わかりますよね? 


 ● 03 ● 諸所雑感 ―――――― 「 法律事務所に見る転・結 」 

  法律事務所はジョン・グリシャム原作、トム・クルーズ主演の映画で 
 す。少しメジャー感はないのですが、パーフェクトな起承転結を持った 
 物語です。起・承の弱さからかヒットはしませんでしたが、パーフェク 
 トストーリーには、やはり無理のない物語の大きさが必要だと感じさせ 
 る映画です。 

  残念なことに、この映画をご覧になっていない方が読んでいる可能性 
 がある以上、ストーリーラインを明らかにして、この映画を分析する事 
 はできません。ですから、これからご覧になる方と、もうなった方に、 
 一言だけ。これこそ当たり前の「納得」と「終結」ですよ。そして、と 
 てもわくわくしてしまう、無謀にさえ思えてくる「良い意味での裏切り」 
 なのです。 
  ぜひ、ご覧下さいね(^_^) 


 ● 04 ● おわりに 

  さて、以降は繰り返しになります。 
  今回の号から購読くださっている方々が多いので、愚かとも思いつつも、 
 言葉を繰り返してみたいのです。 
  随分と長いメルマガになってしまいました。 
  私の好きな物語の解析を、多く人と賑やかに、あれこれいいながら出来 
 ないものだろうかと考えて、メルマガという形で始めてみる事にしました。 
  つたなく、長く、もしかしたら退屈で、たぶん掟破りなメルマガにお付 
 き合いいただき、とても嬉しく感じています。次号以降、この物語解析に 
 読むだけでなく、「参加」して頂ければ、こんなに嬉しい事はありません。 
  と、ちょっとずうずうしくのたまってしまいますが、感謝しています。 
  物語解析を購読頂き、ありがとうございました。 

  さて、「物語解析」とかなり思い切ったタイトルと内容になってしまった 
 と思っていますが、どんな感想をお持ちになったでしょうか。起承転結と 
 いうありきたりな技術による物語の解析、多少退屈だったかも知れません。 
  もちろん、物語には種々多様な技術があると思います。 
  物語が起承転結の観点のみで語られてしまうのは、とても寂しい事です。 
  物語の世界は、深く、多様で、魅力に満ち、未開発の世界なのです。 
  ですが、これが最も著名な方法であり、ここから始める必要が ありま 
 した。何よりも、起承転結の有用性を認め、その根底を理解し、物語に活 
 かせる技術を持ってからのち、物語の本質的な解析に移りたいと、感じた 
 次第なのです。 

  何か、堅苦っしくなってしまいましたね。 
  物語は楽しいものです。 
  そんな面白さ、楽しさが少しでも伝わればなぁ、なんて思います。 
  なにはともあれ、始まってしまいました。 
  全ての方々に、この物語解析をお届けします! 
  今回も、無理な分載という形になって申し訳ありませんでした。 
それでは、また次回! 


 ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■―― ■ 
                       第三号   2001/05/13 
   「 物 語 解 析 」 
    〜 起承転結法 起承転結法 起・承・転・結(後編) 〜 

 発行者:hikali 
   文:hikali 

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