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                       第四号   2001/05/28 
   「 物 語 解 析 」 
    〜 起承転結法 様々な起承転結 〜 

  - - - -< Index >- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 

   01:はじめに 
   02:解析術講座 「起承転結法 〜様々な起承転結」 
     02-01:起承転結法の理解のために 
     02-02:「不思議な序盤、中盤のサスペンス、意外な結末」 
     02-03:「転の引き伸ばしと、結の切り詰め」 
     02-04:「サスペンスフルの転」 
     02-05:「承と転の繰り返し」 
   03:諸所雑感 「ツイスターを分析したいっ!」 
   04:おわりに 

 ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ http://www.seikou-toutei.com/nmk/index.html ■


 ● 01 ● はじめに 
  ̄ ̄ ̄ ̄ 
  物語を書く際に利用のしようがある技術を、さまざまな名作から抜き出 
 して、例題形式や、お読みいただく方々のお声を採り入れながら、分析を 
 してゆきたいと思います。 
  数学のような計算と理論の手法ではなく、現場で「こんないい方法が 
 あった!」という方法論を積み上げてゆく工学の手法で、少しずつ物語の 
 技術について掘り下げてゆけるといいななんて思います。 
  物語解析などと大上段に振りかぶっていますが、まだ誰も手を出したこ 
 とのない分野です。これから、そういう事を考え、分析・研究を始める人 
 たちが増えてくるといいな、なんて思います。 
  物語に触れる気持ちに変化が出てきますよ。 


 ● 02 ● 解析術講座 ― 「 様々な起承転結 」 
  ̄ ̄ ̄ ̄ 

 ○ 02 ○ 起承転結法の理解のために ○ 01 ○ 

  さて、今回で起承転結法は終了です。 
  起承転結法から分かる様々なことをなるべく多くご紹介したいと思いま 
 すが、少々つめこみ気味になってしまうかもしれません(^^; あまり、 
 お話をしているスペースがありませんので、手短に。 
  バックナンバーが用意してありますが、もしメールの形で欲しいという 
 方がありましたら(私もそのクチですので(^^; )、送付させて頂きま 
 すので、お気軽に私まで(n_hikali@hotmail.com)、一言お声を掛けて下 
 さい。このメールの返信でも届くはずです。 
  それでは、今回は解説ばかりの長丁場となります。 
  どうぞ、最後までお付き合いくださいませ。 


 ○ 02 ○「不思議な序盤、中盤のサスペンス、意外な結末」 ○ 02 ○  

  本格推理小説の条件として、この「不思議な序盤、中盤のサスペンス、意 
 外な結末」がよく挙げられます。江戸川乱歩が挙げた条件で、その作風が怪 
 奇推理小説であったため、不思議な序盤はしばしば怪奇的な序盤と言われま 
 すが、これは大方同じ意味と考えても間違えではないと思います。 
  例えば、少々怪奇的に、 
 ・僕は目玉を食う事に喜びを感じていた 
 ・それにヒトミが気付き、怖がった彼女は、僕のアパートの周辺に無数のサ 
  イレンを呼んだ 
 ・しかし、押し寄せる警官にドアのバリケードを破られそうになりながら僕 
  は言ったのだ 
 ・「ヒトミ。でも、いつも食卓に目玉を並べるのは、君じゃないか」 
  というのがそれに当たります。 
  あまり気持ちが良くないのを我慢して(^^; 細かく文章を読んでいくと、 
 起承転結が明確には存在していないのが分かります。無理にでも当てはめよ 
 うとすれば、中盤のサスペンスの始まりと終わりに転がある、という結論に 
 なるのですが、この本格推理小説においては、「伏せられていた秘密が明か 
 される経緯」が物語の主題になり、いささか複雑となってしまうのです。秘 
 密が明かされることは純粋な意味では、物語が展開しているとは言えません。 
 また、謎ばかりが重要視され、本来の物語の展開が軽視される場合もありま 
 す。 
  推理小説は、物語的にはかなり特殊な位置にあります。この分野が謎を一 
 緒に解いていくという「物語への擬似的な参加」を主目的にしているからな 
 のですが、この謎は、しばしば物語性を無視してでも、「解かれない」「意 
 外な」という部分にのみ、物語の性質を留めてしまうことがあります。かく 
 いう私も、本格推理小説は好きなのですが(^^; 物語性という部分では落 
 第点を与えたくなるものもしばしばあるのです。果たして、「どうやって殺 
 したか」が明かされる過程をあなたは魅力的な物語にできるでしょうか。密 
 室殺人を一大叙事詩にすることが出来ないことが自明の理のように、実際は 
 魅力的に語る事をしている推理小説は、一握りなのです。また、それはとて 
 も難しくあります。 
  先に提示させていただきました文章を起承転結で分析できるでしょうか? 
  おそらくできないでしょう。私は何度か考えましたが、「物語の展開」と 
 いうところがあまりにも希薄なのです。あまり出来が良くないからかも知れ 
 ませんが(^^; このような物語を奇形として私が分類する理由が、この辺 
 りにあります。  
  と、言っただけでは何か突拍子もなく、断言してしてしまっているように 
 思われると思います。とりあえずは、もう少し純粋な物語の形を残しており、 
 極めて方式は似た名作を見ながら、その物語性の保持の仕方を見てみること 
 からはじめてみましょう。読み比べて見るだけで、確かに私の書いた文章は 
 物語性が欠けた奇形だと分かりますよ。 


 ○ 02 ○「転の引き伸ばしと、結の切り詰め」 ○ 03 ○  

  小泉八雲の「耳なし芳一」を題材とします。皆さんに読みやすいように、 
 私の拙い筆で短く要約してしまいますが(ああ、もったいない!)、「耳な 
 し芳一」は短く読みやすく、幽玄な怪奇性に満ちた傑作ですよ。ぜひ、岩波 
 の平井呈一訳でお読みください! もし、ご興味がありましたら、ぜひぜひ 
 原文もおよみくださいね! 

  …えーと(^^; 宣伝はこれぐらいにしまして、要約をしてしまうことに 
 しましょう。 


 ▼───────────────────────────────── 

  昔より下関には源氏に滅ぼされた平家の怨念を静める阿弥陀寺という寺が 
 ある。それというのも源氏平家の最後の決戦が行われた壇の浦で平家は一門 
 の女・子ども、幼帝までがことごとく絶え滅びてしまい、その後亡霊が七百 
 年に渡り、壇の浦に近い下関に様々な怪異をあらわせたからであった。 
  さて、下関に芳一という盲人があった。琵琶の名手で琵琶法師として平家 
 物語を弾いたが、ことに壇の浦の段をかたらせば「鬼神も涙をとどめえず」 
 と言われたほどだった。芳一は阿弥陀寺の和尚と仲良くなり、この阿弥陀寺 
 に住むことになった。 
  ある夏の晩、和尚は通夜に呼ばれ芳一一人となった。なんとはなしに琵琶 
 をかきならしていると、一人の男が寺に入り、芳一の名を呼んだ。なんでも 
 高位の方がぜひ芳一の琵琶を聞きたいと望んでいるらしく、芳一は承諾し、 
 盲人であるので、武者のような男に引かれて歩いた。しばらく歩くと、お屋 
 敷とおぼしきところに連れられ、おおぜいの人の前で、所望され壇の浦の段 
 を語った。すると、聞くものは全て嘆き悲しみ、苦悶の音を発し、おえつし、 
 泣き崩れた。芳一はお誉めの言葉を頂き、しばらく通って語る事を約束し、 
 寺へ帰った。 
  次の日もお供に連れられてでかけ、前日と同様の成功をおさめたが、帰っ 
 てきた芳一を和尚はとがめた。外出の理由を聞かれた芳一は口を濁した。和 
 尚は、芳一が真実を話さないことに驚き、悪霊でもとりついているのかと心 
 配に思い、寺男たちに芳一をつけさせることにした。寺男は芳一を、阿弥陀 
 寺の墓地でみつけた。暗い雨の中、芳一はひとりしょんぼりと安徳天皇の墓 
 所の前に座り、琵琶をかきならしながら、壇の浦の段を語っていた。その芳 
 一のまわりをおびただしい数の鬼火が燃えていた。寺男たちは亡者に憑かれ 
 た芳一を力づくで連れて帰った。和尚の前に出て、芳一はようやっとこれま 
 での一部始終を話し、和尚は芳一がそのうち八つ裂きに遭うと言った。しか 
 し、和尚は、その日も法事があり、寺を空けなければならなかった。そこで、 
 和尚は芳一を丸裸にし、その身体のありとあらゆるところに経を書いた。そ 
 して、身動きも、声を上げることもしてはならぬと言い、寺を出た。 
  夜になり、和尚たちが出かけてゆき、一人になると芳一は縁先に座し、 
 じっと息をころした。しばらくすると、足音がやってきた。寺に入り、図太 
 い声で芳一の名を呼んだ。しかし、芳一が応えずにいると足音は芳一のすぐ 
 傍までやってきてしばらく思案していた。どうやら芳一の姿が見えないよう 
 であったが、耳だけが見えるのでそれを持って帰ろうと、芳一の耳をつかむ 
 とびりびりと引き契って帰っていった。 
  和尚は、朝になって芳一が血だらけで座しているのを見て驚き、そして自 
 分が芳一の耳にだけ経を書き忘れていた事に気付いた。 
  芳一はその奇談が世に広がり、有名になり、裕福になった。 
  そしてそれ以降、「耳なし芳一」と呼ばれるようになった。 

 ─────────────────────────────────▲ 


  どうですか? どなたもご存知の物語だと思います。とても短く要約しま 
 したが、全体的な文章量の配分は、あまり変わっていません。 
  不思議な序盤、中盤のサスペンス、意外な結末を確認できたでしょうか。 
  やや変則的な物語でありますが、手っ取り早く起承転結を当てはめてしま 
 えば、「ある夏の晩」の直前までが起、和尚が疑念を抱くまでが承、耳を引 
 き契られるまでが転、それ以降が結となります。転・結の区切りの位置は異 
 論がないとして、承・転、起・承の区切り位置ですが、承・転は「承ではた 
 どり着けない結」への転進が始まるのがここであるからであり、承が和尚が 
 疑念を抱くまでとなった以上、さかのぼって「ある夏の晩」までは分解不能 
 な塊であるため、起・承の区切りをそことしました。そう言われて物語を見 
 ると、創刊号で取り上げたシンデレラと重なる部分があると気付くのではな 
 いでしょうか。 
  日常や普段を描いた「起」。不思議さは残りながらも思いがけずも出世し 
 てゆくような「承」、そして後日談となる「結」。ただひとつだけ違うとこ 
 ろがあります。 
  そう、「転」です。 
  文章量でも分かる通り、転に費やされている文章量は多く、また、起・承 
 で語られる事実は転への伏線としての役割を強く負っています。逆に転で張 
 られた伏線はただ一つきり(耳を引き契られる――耳に経を書き忘れたこと 
 への伏線)であるのです。この物語がいかに転を中心に構築されているかが 
 わかります。シンデレラと比べて見ましょう。また、他の物語と比べて見て 
 ください。かぐやひめはどうですか? 浦島太郎は? 
  これは、耳なし芳一が比較的新しい時代に書かれたからかも知れません。 
 エキゾチックな怪奇小説作家として小泉八雲を絶賛する当時のアメリカの評 
 論があるほどですが、江戸時代の怪奇談を原本としながらも、その時代の作 
 家の書いたものであるのですから、「謎」を物語の中心に据える方法論に通 
 じているのかも知れません。 
  静的な起・承・結に比べ、「転」はあまりに動的です。物語内の全ての能 
 動的動作が転にあると思えてくるのですが、これが、この「耳なし芳一」に 
 見る「転中心の物語」の特徴です。起承転結がしっかりしていながらも、転 
 のみが他を従属させているような構造をしているのです。 

  さて、一番はじめに私が書いた「奇形」と比べてみてください。 
  「不思議な序盤、中盤のサスペンス、意外な結末」の物語にも、ピンから 
 キリまであることが分かると思います。「物語である以上、「謎」だけで 
 引っ張るのではなく、読ませるストーリーラインを」という言葉に納得が行 
 くのではないでしょうか。 

  怪奇小説や推理小説においては「耳なし芳一」で見るような「転中心の構 
 成」と同時に、「結の切り詰め」をすることが好まれる傾向にあります。 
 たった一言、最後の一文で物語の「納得と終結」をしてしまい、それ以外の 
 部分を余韻として読者の判断に任せるという、方法です。この「最後の一言 
 のみの結」のシャープな結末のために、「転」はしばしば「中心」ではなく、 
 「引き伸ばし」をされます。決定的な一言をいうのを最後の最後まで引き伸 
  ばし、それ以前に伏線として他の部分を「納得」させておく、もしくは、 
 最後の一言によって全てが浮かび上がるという構成をしています。 
  「謎」を扱う物語の一つの定型と言ってよいかも知れませんが、基本的に 
 複雑になる傾向にあります。伏線とストーリーラインと隠された真実を列挙 
 し、その全体的な構造を分析してみると面白いのでは、とは思うのですが(^^; 
 なかなか難しいものです。 
  「転の引き伸ばしと、結の切り詰め」にはいくつか典型的なテキストがあ 
 りますので、ご参考にしてみると面白いのではないでしょうか。 

 高橋克彦『遠い時間』、ラブクラフト(全般的に)、 
 ピーター・ラヴィゼイ(短編)、O・ヘンリー(実は承中心の構成なのかも…)、 ……、等々。 


 ○ 02 ○「 サスペンスフルの転」 ○ 04 ○  

  「転中心の構成」と似たような、そしてもう少し簡単な方法論として、転 
 をサスペンスフルに、様々な事件を起こして、ストーリーラインを引っ張っ 
 ていく方法論があります。「転中心の構成」との違いは、起・承・転・結が 
 並列に並んでいるところであり、いわば「中盤のサスペンス」のみを取り出 
 したような物語がそれにあたります。 
  例えば「あかずきん」のような物語。起承結は明確に存在していながら、 
 ほとんどの事件が起こるのは転という構成をしています。 
  ほんとはここでも物語の要約をして、細かいところまで言及をしたかった 
 のですが、「あかずきん」は次回の「要素による分析のガイダンス」で使用 
 したいと思いますし、今号はさらにもう一本要約(大きなの…)が待ってい 
 ますし、物語構成的にはほとんど「耳なし芳一」と同じものだと思いますの 
 で、勝手ではありますが、割愛させて頂きます。 


 ○ 02 ○「承と転の繰り返し」 ○ 05 ○ 

  これまでは起承転結という四つの部品のみで構成されている物語をご紹介 
 しました。様々な種類があったかと思いますが、決してその順番は変わらず、 
 その長さや、主従関係が変わるというものがほとんどでした。 
  ですが、そのような物語の構成をしているのはほとんどが短編に分類され 
 る物語ばかりであり、分析をする対象が長編となると、歯がたたなくなりま 
 す。映画であれば起承転結で分析ができるのですが、ドラマにおいては、そ 
 のストーリー性よりもむしろ登場人物の魅力だったり、人間関係の面白さが 
 重要であったりするようなのです。 
  このような世界となると全体を見回した「流れ」よる分析より、個々の要 
 素、例えば登場人物や人間関係を局地的に分析する分析法の方が、有効にな 
 ります。また、この要素による解析は、全体に左右されない「部分」の構成 
 だけを分析するものであるため、一度知ってしまえばいつでも使いまわす事 
 ができるようになるのです。 
  つまり、ロミオとジュリエットの中の、「ティーボルトとマキユーシュオ 
 の関係」が物語に与える影響を、他の物語に使ってみよう、といったような 
 創作法が可能になります。また、その際にシェイクスピアがその関係を物語 
 の中で見せる方法として採用している無数の「上手いところ」を知っていれ 
 ば、より効果的にその「部品」を使うことができるようになるのです。 

  さて、もう少しだけまわり道をして、起承転結をやりましょう。 
  起承転結で分析できるぎりぎりの物語が、これからご紹介する「承・転の 
 繰り返し」を行っている物語です。起承転結ですので、とてもシンプルでは 
 あるのですが、深く分析をはじめてしまえば、どこまででも追求できる物語 
 です。 
  それでははじめましょう。 

   
 ○ ドラえもん大長編 「のび太の魔界大冒険」 ○ 

  評判の高いドラえもんの大長編の初期10作ほどまでの中でも、際立って優 
 れているのが、第五作となるこの「のび太の魔界大冒険」です。この物語の 
 解析を始めようとすると、五六回と回を重ねても終わりそうにないのです(^^; 
 覚えておられる方は「確かに」と言ってくださると思いますが、これがなか 
 なか半端には行かないのです。平行ストーリー、パラレルワールド、タイム 
 パラドックス、変身、過去の記録に大冒険と、よくまあこれだけ詰め込んで 
 子ども向きの物語と言いますよね、と呆れてしまいたくほどに、複雑なので 
 す。どの方法論も、一回を費やさないと分析しきれない良質のものであり、 
 改めて藤子不二雄はSF作家なのだなぁ、と思ってしまうのですが、今回はそ 
 のように複雑な話はあきらめて、起承転結についてお話させていただきます。 
 複雑な方は要素による解析という解析法によって行いましょう。起承転結で 
 は、残念ですが太刀打ちできないのです。 

  一応要約という事をしますが、漫画を、しかも藤子不二雄作品を無理やり 
 文章にするこいうこともあって、かなり無理があるかも知れません。ご興味 
 がある方はぜひ、コミック版の本物をお読みくださいませ。 

 ▼───────────────────────────────── 

  のび太は、自分が魔法使いになって活躍する夢を見ました。夢がさめてか 
 らも、のび太はそれを忘れきれず、様々に魔法が使える世界を空想をしまし 
 た。その中、まるっきり自分にそっくりな不思議な石像に出会い、なにか不 
 吉な感じもしましたが、ついにのび太は自分の夢を実現するとびきりの方法 
 を思いついたのです。 
  もしもの世界を実現してくれる道具、「もしもボックス」で魔法の世界に 
 するというアイデアにドラえもんも面白そうだと同意し、魔法の世界にしま 
 したが、魔法は使えず、何ら普段と違うような気はしなかったのです。です 
 が朝になると、二人は確かに魔法の世界に変わっているのに気付きました。 
 しかし、その世界の魔法は使うのに、高価な道具や勉強が必要なものだった 
 のです。何とか簡単な魔法だけでも覚えようとするのび太は、偶然、満月博 
 士の家に行き、満月博士と娘の美夜子に会い、世界のおわりがやってくると 
 いう「魔界接近説」を聞きました。それを聞き、さすがに薄気味悪くなった 
 のび太は元の世界に戻そうとしましたが、家に帰ってみるともしもボックス 
 が粗大ごみに出されてしまい、後戻りが出来なくなってしまったのです。 
  魔界接近説は魔界の悪魔たちが地球へと迫っているという説で、多くの者 
 は信じていませんでした。その中満月博士と美夜子は研究を続け、ついに魔 
 界に向かったことのあるただ一人の人間の残した書物を見つけるのですが、 
 そのせいで魔界の悪魔に満月博士がつかまり、美夜子は子猫にされてしまい 
 ました。のび太たちは、翌日に満月博士の館へ向かい、博士の館がすっかり 
 なくなっていることに気付きました。その中、不思議な子猫に出会い、なん 
 とか引き離そうとしながら満月博士の館が消えたことを話しましたが、誰も 
 その話を信じてくれません。そして、夜になり月がでた瞬間、美夜子にか 
 かっていた魔法がとけ、美夜子は子猫から人間の姿に戻り、のび太とドラえ 
 もんに魔界に乗り込んで大魔王を倒して言ったのです。美夜子は銀の矢を大 
 魔王の心臓に突き刺せば大魔王は倒せると言うのでした。 
  驚くべき美夜子の言葉に誰もが臆病風に吹かれ、乗り気ではなかったので 
 すが、このままではどうしようもないと、みんな集結し始めたのです。ドラ 
 えもんの便利な道具の助けもあり、下級の悪魔を倒し、意気揚揚と魔界へと 
 向かいました。 
  魔界では数々の障害が待っていました。 
  南極の寒さ、人魚の怪物の島、あくまでもめったに足を踏み入れない「帰 
 らずの原」、恐ろしい魔界の森と、ドラえもんの便利な道具や、全員の機知 
 などによって乗り越え、ついに大魔王の城にたどりついたのです。城に侵入 
 したのび太たちは大魔王の前にまんまとたどり着くことができ、銀の矢を大 
 魔王の胸に突き刺したのですが、なぜか大魔王はびくともせず、不意をつか 
 れたのび太たちは無数の悪魔たちに終われながら脱出をしなければならなく 
 なりました。 
  必死に逃げるのび太たちも追ってたちに追い詰められ、なんとか大魔王の 
 城から離れた集合地点にたどり着けたのはのび太とドラえもんだけでした。 
  のび太とドラえもんは絶望し、喧嘩をしはじめましたが、ふいにタイムマ 
 シンで、もしもボックスを使う前に戻り、「魔法の世界」にしようとする過 
 去の自分たちを止めようと思いついたのです。しかし、タイムマシンで過去 
 へ戻るのび太たちにも追っ手がやってきました。過去に戻ったのび太たちは、 
 目的を果たす前に追っ手により石にされてしまったのです。石像になったの 
 び太とドラえもんは、止めるべき過去の自分たちに拾われましたが、言葉を 
 発することも身動きも出来ません。 
  結局、止めることができなかったのび太たちは助けに来たドラミちゃんに 
 助けられ、ドラミちゃんのもしもボックスで「魔法の世界」になっていた世 
 界を元に戻したのですが、実は過去の世界を元に戻しても、自分たちが帰る 
 現代はパラレルワールドとなり、結局解決にならないと知り、大魔王を倒す 
 べくみんなを救いに未だ魔法世界である現代に戻っていったのです。 
  現代に戻るタイムマシンの上で、実は大魔王の心臓は大魔王の身体の中に 
 はなく、星の海に隠してあると知ったのび太たちはドラミちゃんの助けもあ 
 り、みんなを助けだし、その星へと向かいました。しかし大魔王は見逃すは 
 ずはありません。悪魔の大軍団を率いてのび太たちを追いかけてきたのです。 
 悪魔たちの大攻撃を必死に防ぎつづけたのび太たちはついに大魔王の心臓を 
 みつけだし、その心臓に銀の矢を突き刺し、見事大魔王を倒したのでした。 
  そして地球に戻り、美夜子たちとの別れを惜しみながらも、元の世界に戻 
 したのでした。 

 ─────────────────────────────────▲ 


  お疲れ様でした(^^; とても長かったのですがこれでもかなり多くの部 
 分をはしょっています。要約をしながら「この部分はあの技法だなぁ」など 
 と思ってしまったのですが、細かなところを起承転結で分析してもしかたあ 
 りません。思い切ってざっくりと削っています。説明も必要最小限に抑えて 
 しまっていますので分かりにくい部分もあるかも知れません。どうしても詳 
 しく知りたい方はぜひ原本をご覧くださいませ。 

  さて起承転結の確認をしましょう。すぐに、この物語の仕組みに気付きま 
 すよ。 
  まず、起は「魔法世界にするまで」です。もしもボックスを使用した後は 
 明らかに物語が広がり、起と呼ぶにはあまりにも広がり過ぎているからです。 
 魔法世界が登場し、それがどのような世界かが明らかになります。新たな舞 
 台、新たな人物が登場します。空想にふけっていたのび太の日常を描いた起 
 より、大発展をしています。ここほど物語がダイナミックに広がる個所はあ 
 りません。そう、その先は承なのです。 

  では承の終わりはどこでしょうか。これもあまりにも明確な場所がありま 
 す。もしもボックスを捨てられ後戻りが出来なくなってからです。思いがけ 
 ない大転換が行われ、物語の質が変質しています。つまりそれに続く、満月 
 博士が捕まり、美夜子が子猫にされてしまうシーンは転ということになるの 
 ですが、「ん?」だなんて思わないでしょうか。 
  そう、その後があまりにも長く、あまりにも多彩な事が起こるのです。 
  果たしてこの物語は「転中心の物語」なのでしょうか。耳なし芳一と比べ 
 て見てください。明らかに耳なし芳一とは違うことに気付くでしょう。耳な 
 し芳一の転は芳一の置かれた状況が明らかになり、その解決に向かって物語 
 が一直線に動いています。ですが、この物語は違います。この後も変化しつ 
 づけています。 

  さて、このもしもボックスを捨てられてからはじまる転はどこまで続くの 
 でしょうか。 
  これを見つけるには、転の役割を思い出す必要があります。 
  転の役割は物語の転換です。「転中心の物語」や「転の引き伸ばしの物語」 
 と比べてよく転を考えてみてほしいのですが、「物語が転換中」でなければ 
 転ではありません。たとえて言うなら、汽車の車庫にあるターンテーブルや 
 転がっている最中のサイコロを想像してください。起承転結の四つしかない 
 場合、転は結が確定するまでの物語的に不安定な、先の読めない部分である 
 のです。 
  この物語を読み進めると、すぐにそのような不安定さから開放されて、物 
 語の方向が確定してしまうシーンがあります。「魔界へ向かう」事が決まる 
 シーンなのですが、では、その先は結なのでしょうか? 
  もちろん違いますよね。 
  ではなんなのでしょうか。起でしょうか。承でしょうか。転でしょうか。 
 起承転結で分析をする限り、部品の種類は四つしかありません。 
  お分かりだと思います。 
  そう、ここから第二の承が始まるのです。 

  魔界に向かうことが決定してから物語がまた大きく広がります。魔界が登 
 場し、その中でののび太たちの大冒険が描かれます。タイトルの「魔界大冒 
 険」がこのシーンですので、いかにこのシーンが重要であるかが分かります。 
 つまり、ここが物語の中核であり、スリルあふれるストーリーがここから展 
 開していきます。しばらく読者の期待に応えるように活躍劇が描かれ、物語 
 が大きく発展してゆきます。この辺りで、一番はじめの起を思い出して見て 
 ください。空想をしていたのび太がはるか遠くに感じることでしょう。後で 
 お話すると思いますが、とりあえずしばらくはこの第二の承の面白さを確認 
 して見てください。 

  さて、すばらしい第二の承が終わり、これまた不思議な第二の転が始まり 
 ます。もう解説する必要はないと思いますが、第二の転は「大魔王の胸に銀 
 の矢を突き刺す」ところから始まります。倒せるはずだった、唯一の退治方 
 法だった銀の矢に効果がなく、物語は行き場をなくしてまた物語のターン 
 テーブルが回るのです。この転でこれまでの伏線が(石像の部分)が解消し、 
 はっきりと最終目的が見え、そして結へ向けた大冒険がもう一度始まるので 
 す。そして短くなだらかな結が待っています。 


  のび太の魔界大冒険はいかがだったでしょうか。 
  この物語が起承転結の物語とは一線を画した物語であることが確認できた 
 思います。 
  起承転承転結という、承と転を二回行う物語であるわけです。 
  いわば「二段構えの起承転結」なのですが、このような手法はしばしば長 
 い物語に使われます。この物語が二段構えである理由はとても簡単で、二つ 
 の承を描きたいからであり、また起と結があまりにも遠すぎるからです。 
  二つの承を書きたいというのはとても分かりやすいと思います。つまり妙 
 に現実的でユニークな魔法世界の紹介と魔界での大冒険なのですが、この物 
 語は前者を物語の前半に行い、その中に第二の承へつながるいくつもの状況 
 を提供しています。本来であれば楽しく夢膨らむシーンであるはずなのです 
 が、不協和音のように不吉さや不気味さが混じっています。これはお分かり 
 の通り、第二の承・転への道しるべである訳ですが、この辺に、高度に完成 
 した二段構えの片鱗を感じることができるのではないでしょうか。 

  もう一つの起と結の遠さというところはお話するべき部分が多いかも知れ 
 ません。 
  この物語における起はのび太の空想です。幼いころ、誰もが抱いたことが 
 あるような気がしてしまう空想、空を飛べたらいいのに、物を浮かべられた 
 らいいのに、気持ちを知ることが出来たらいいのにといった私もランドセル 
 を背負いながらもやもやと湧きだしていたのを思い出します(^_^) そん 
 なこれは私だなぁ、と感じてしまうような身近な空想を現実にしてしまう物 
 語が、ドラえもん、ひいては藤子不二雄の得意技と言ってうなずいて下さる 
 方も多いのではないだろうかなどと考えてしまいます。前々回にお話しまし 
 た起の条件である「身近な話題」から始まるお話です。ですが、この物語の 
 結である「星の海に浮かぶ大魔王の心臓に銀の矢を突き刺す」という結末は、 
 なんてこの起から遠いところにあるのでしょうか。 
  ここへ一直線の物語で、つまり起承結で辿りつくのは至難の技と言えます。 
 あまりに傾斜のきつい物語になってしまい、多くの読者が脱落をしてしまう 
 ことになります。登山をする際に、山の斜面をまっすぐに頂上まで登ってい 
 くような強行軍を読者に課すことになってしまいます。ですから転を、たと 
 えていうならスイッチバックを入れながらジグザグに斜面を登るのです。起 
 承転結においてはこの切り返しは一回です。ですがこの物語には二回の切り 
 替えしがあります。つまり、ジグ・ザグである起承転結に対してこの起承転 
 承転結はジグ・ザグ・ザグなのです(^_^) 何かとても登りやすい気がしま 
 せんか? 結論に一直線に向かわずに、切り替えしをしながら結論にたどり 
 着くのですよ。 

  さてこのあたりで起承転結法に卒業を致しましょう。 
  二段構えまでは、なるほどその通りと思っていただく事ができると思いま 
 すが、三段四段となると、もう起承転結などと呼ぶのはあまりにも大きすぎ 
 るお話となってしまいます。起承転結の承転の繰り返しにおいては、どんど 
 んとお話がエスカレートしてゆく傾向にあります。少年誌の長期連載を思い 
 出して頂ければ、なるほどなんて思って頂けるかも知れませんが(^^;「自 
 宅」から始まり、「町内」「県内」「国内」「地球」「太陽系」「オリオン 
 腕」「銀河系」「超銀河団」「宇宙」というような少年誌ならではの世界の 
 拡大をしてゆきます。 
  しかし、文学的な作品にもこのようなインフレーションをしてゆくお話が 
 あります。インフレなどというとお話が破綻しているように思えてしまうか 
 も知れませんが、なんの、この構造のお話が成り立つ物語もあるのです。そ 
 れは主人公の成長を描いたお話で、例えばディケンズの「デイビット・コパー 
 フィールド」のような伝記的な物語であれば、どれほど承と転を繰り返して 
 も決して破綻することはないのです。また、ケン・フォレットの「大聖堂」 
 も同じく成長の物語です。ですが、これは都市の成長物語なのです(^_^) 
  さて、そのような物語を起承転結で分析する事は、かなり無理があるとい 
 う事に納得していただけるのではないでしょうか。 
  駆け足過ぎて、充分にお話できない部分もあるかもしれませんが、そろそ 
 ろ、起承転結法を終わりに致しましょう。 


 ● 03 ● 諸所雑感 ―――――― 「 ツイスターを分析したいっ! 」 

  私のお気に入りの映画にツイスターがあります(^_^) もう五回六回と 
 みているのですが、今回もう少し本格的にやってみようと「ウォーリーを 
 探せ」(画板代わり)と鉛筆と真っ白なA4用紙を用意して、テレビの前に 
 座りました。 
  始まって「わぉっ!」の連続。面白くて面白くて、ドキドキしてしまいま 
 した(^_^) 分析を終えて、うまくまとめるには少し時間がかかるかも知 
 れませんが、久々に嬉しくて嬉しくて、説明するより、こっちの方が面白く 
 なっちゃったらどうしよう(^^; なんて思ってしまいました。 
  しばらくしたら、そんなふうな映画の分析、お伝えできたらいいな、なん 
 て思っています(^_^) 


 ● 04 ● おわりに 

  このたびは、物語解析をお読み頂き、本当にありがとうございました。こ 
 のように大胆なメルマガを発刊するに当たり、ほんとうに大丈夫かと不安に 
 思うことが多々ありましたが、嬉しい誤算なのか多くの方々にお読み頂いて 
 いること、嬉しく思っております。 
  さて、いくつかご質問があり、これまでしなければならない説明をさぼっ 
 ていた事に気付きました。このメルマガの発刊状況について、少しお話させ 
 ていただきたいと思います。 

  物語解析は現在、まぐまぐ、メルマ、メルマガ天国の主要3メルマガ発行 
 スタンドで発刊しています。この発行スタンドごとに発刊までの手続きや、 
 ご紹介をしていただける紹介誌の発刊時期に違いがあり、読者の方々が物語 
 解析を知っていただいた時期にばらつきがありました。 
  まぐまぐは発刊審査のために創刊号を準備しなければならず、メルマ・メ 
 ルマガ天国に遅れて第二号よりの発刊のつもりであったのですが、私の手続 
 きミスにより(^^; 第二号に間に合わず、第三号よりの発刊となっていま 
 す。第三号でバックナンバーのお話があったのは、そのせいでした。手続き 
 が遅れたこともあり、なるべく多くの方々にお読み頂こうと、第三号はまぐ 
 まぐのウィークリーまぐまぐの発刊を待っての発刊になり、すこし発刊時期 
 が遅れることになりました。 
  今号はメルマガ天国の紹介誌の発刊タイミングにあたり、メルマガ天国で 
 物語解析をお知りになった多くの方々に読者としてご登録頂きました。本当 
 にありがとうございます(メルマガ天国の方! 読んでくださってますかぁ 
 (^o^)/ )。 
  創刊号・第二号よりお読み頂いている方には意味が良く分からない言葉を 
 これまで使ってしまっていたかも知れません。大変申し訳ありませんでした。 

  当分の間はこの主要3メルマガ発行スタンドに、めろんぱんを加えた4発 
 行スタンドで発刊していきたいと思います。しばらく準備中のファースト 
 フード店のようにばたばたと急がしかったのですが、ようやっと本格的に開 
 店できそうです(^_^) 少しずつ分かりやすく、読みやすく、図などをWeb 
 でご覧いただけるといったような(図をいれるにはこれしかないのだぁ…)、 
 メルマガとしてのコンテンツを充実させて行きたいと思います。ぜひぜひ、 
 ご期待くださいネ! 

 ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■―― ■ 
                       第四号   2001/05/28 
   「 物 語 解 析 」 
    〜 起承転結法 様々な起承転結 〜 

 発行者:hikali 
   文:hikali 

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