■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■―― ■ 
                       第五号   2001/06/12 
   「 物 語 解 析 」 
    〜 要素による解析のガイダンス 〜 

  - - - -< Index >- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 

   01:はじめに 
   02:要素による解析ってなに??? 
   03:解析術講座 「要素による解析のガイダンス」 
     03-01:要素による解析の理解のために 
     03-02:【例題】 〜「赤ずきん」 
     03-03:解答 
   04:諸所雑感 「ツイスターを分析したいっ!」 
   05:おわりに 

 ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ http://www.seikou-toutei.com/nmk/index.html ■


 ● 01 ● はじめに 
  ̄ ̄ ̄ ̄ 
  今号から、これまでとがらりと変わって、物語に解析を細かく実戦的に 
 行ってゆきます。 その解析の方法として、要素による解析法を少しずつお 
 話して行きたいのです。 
  これまで、物語解析は起承転結による物語の解析が唯一の解析法でした。 
 ですから、なんどもなんども起承転結についてその本質をお話し、起承転結 
 の形をしている物語こそ素晴らしいのだ、というお話の仕方になってしまって 
 いました。確かに、起承転結は歴史ある、そして有名な方法であります。で 
 すが、あなたや私が好きな物語は、もしかするとこの起承転結では理解や、 
 把握が難しいものかも知れないのです。 
  これまでは、起承転結に適した物語ばかり選んでお話していました。 
  これからは、その範囲をありとあらゆる範囲に広げる事ができます。 
  起承転結よりも応用範囲が広く、細かな解析が可能であり、そして自由自 
 在な「変換」が可能な解析法を、これからお話してゆきます。 
  これを書いていて、これまで堅苦しく感じていた気持ちが、とても緩やか 
 になった気がします(^_^) 物語解析自体の自由度もそうですが、実際に 
 物語を読み、理解し、評価し、創造する際に、大きな自由を、精密さを、奔 
 放さを感じることができると思います。 
  この解析の方法に、これが正しい、これが良いという基準はありません。 
  むしろ、この解析法を使用してどのような発見ができるかという部分にこ 
 そ、私やあなたの興味があるのかも知れませんし、そうあるべきなのです。 
  決して、正しい物語を追求してゆくものではなく、複雑怪奇で、未だ誰も 
 確固とした、正確な統一された基準により踏み入ったことのなかった、この 
 豊かで未開の物語の世界にささやかながら、足を踏み入れることができたら 
 いいな、というそういう訳なのです(^^) 

  この解析を進める上で最も大切にしたいことは、「分かってしまえば誰に 
 でも使える」ということです。つまりこれは、昔の物語作家が持っていた 
 「技術」を掘り起こす事を意味します。また、誰にでも使えるという事は、 
 「生産性」という言葉も含んでいます。 
  決して文学的でなく、むしろ工学的で、だからこそ誰にでも分かりやすく。 
  これをとりあえずの目標として、少しずつ分かっている事をお伝えしたい 
 と思います。 
  それでは、物語解析、はじめましょう! 


 ● 02 ● 要素による解析ってなに??? 

  せっかくの晴れ舞台ということで(^^; 少し堅苦しくなってしまいまし 
 た…。 
  すこしヒートアップ、といいますかワクワクして、この要素による解析で 
 どんなことが実際的に可能になるかをお話したいと思います。ここでは、一 
 番分かりやすく、私が日常的に行う遊びとして、「映画の予告編よりオリジ 
 ナルストーリーを構築する」というモノがありますので、ちょっと雑すぎる 
 かもとおもいつつも実演をしてみたいと思います。少しでもその奔放さや、 
 楽しさが伝わるといいな、なんて思います。 

  映画「エアフォースワン」を例に上げます。 
  この映画は、「アメリカはテロと取引をしない、そして大統領専用機「エ 
 アフォースワン」がハイジャックされた」といういわゆる、矛盾に似た葛藤 
 を物語の中心に置く物語です。 
  ですが、この手の葛藤はたった一つの解決法に向かってしか物語が展開し 
 ないことが分かっています。つまり、上記の例で言えば「テロと取引しませ 
 ん」「大統領専用機の中の人でなんとかします」という結論が、売り文句を 
 見た瞬間に分かるのです。そして、主役の大統領にハリソン・フォードを配 
 していますので、結論は「大統領が独力で解決する」という構成がはっきり 
 すぎるほど分かります。 
  構成はいたってシンプルです。 
  背景として「アメリカはテロと取引しない」という不文律。 
  舞台はエアフォースワン。 
  物語を動かす主要人物は、大統領とテロ組織。 
  あまりにも限定され、固定され、集中しすぎたお話だと分かります。なん 
 たって、ハイジャックなので、物語の舞台は飛行機内しかありえず、大統領 
 が死んでしまえば物語が成り立たないので死なず、不文律は侵されてはなら 
 ないので侵されず、テロ組織はどう頑張っても勝ちようがないのです。もし 
 これしか、物語の要素がなければ、映画は大失敗に終わってしまうはずです。 
  私は残念ながら、この映画を見てはいないのですが、その自由さで少しエ 
 アフォースワンを幅広い物語にして見ましょう。 

  舞台が飛行機のみというのは少なすぎると思います。少し先回りした言葉 
 ですが(^^; 太めの関係線を飛行機の外に引きます。関係線は人物関係の 
 線だと思ってください。舞台として飛行機があまりにも強すぎるので、関係 
 線を図太くします。例えば、テロリストの目的は大統領じゃない、のような 
 方法でも取らなければ、画面がずっと飛行機の中になってしまいます。関係 
 線が一本では弱すぎるので、大統領からも線を引きます。つまり、テロリス 
 ト・大統領・何か(笑)の三角関係になり、テロリストと大統領は飛行機、 
 「何か」くんは、もう一つの舞台にいるわけです。 
  果たしてそんな物語が可能なのでしょうか? 
  真剣に考えたわけではないので、私も分かりませんが(^^; 多分なんと 
 かなっちゃうものです。面白いので、もう少しやってみますか。 
  飛行機と「どこか」を密接な関係で結ばなければなりません。大統領の家 
 族は飛行機の外に置きましょう。中においてもなんの役にも立ちません。大 
 統領の分身である家族を大統領と同じ飛行機の中に置いておいては、ますま 
 す舞台が飛行機内に限定されます。飛行機は魅力的な舞台とは言えません。 
 はっきりといって落第点です。豪華客船ならば、しかも沈没すると分かって 
 いるタイタニックならば、魅力的な舞台なのですが(^^; 飛行機は人物の 
 行動を必要以上に制限してしまいます。 
  主役が世間から隔離されていますので、物語は精神的な物になるはずです。 
 マスメディアを使用して、精神的に外を動かすお話にしましょう。つまりテ 
 ロリストよりも謀略がいいわけです。大統領のスキャンダル利用して、大統 
 領を失脚させようしている謀略というのはいかがでしょうか。なにか、面白 
 そうですよ(^_^) 何かわくわくしてきました。 
  大統領はスキャンダルの渦中にあった。女性問題だ。そこで、一気に失脚 
 させようと、裁判に向かう大統領をハイジャックした。テロリストを装って 
 いるが実は謀略で、銃で脅しながらマスメディアに対して無責任な言葉を言 
 わせる。ハイジャックの四十八時間(例えばですよ)の間に大統領の支持率 
 に致命的な打撃を与える謀略。それに気付いた家族が、スキャンダルでずた 
 ずたになってしまっていた家族が一致団結して大統領を救おうとマスメディ 
 アを動かし始める。 
  どうでしょう! 感動のヒューマンドラマです(笑)! 名シーンがいく 
 つも浮かんできます(笑)! はたして、エア・フォース・ワンがどのよう 
 な物語であったのかは分からないのですが、こんな風にすると、わくわくで 
 きる物語になりますよ。現実的なつじつま合わせは最後の最後でいいのです。 

  さて、この「エアフォースワン」の改良には、要素による解析法を使用し 
 ました。 
  いくつか耳慣れない概念があったのではないでしょうか。 
  たとえば、関係線。舞台。人物の行動を制限するなどという考え方も目新 
 しいかも知れません。ですが、先の例のように、しっかりと要素をつかみ、 
 その一つ一つを評価し、具体的に改良をする方法を知っていれば、物語の設 
 計にかかる時間はとても短くなります(上の例は信じがたいかも知れませんが、 
 キーボードを打っていた時間と同じくらいです。だいたい三十分位でしょう 
 か)。さすがに無から何かを生み出すのはどんな方法を用いようと難しいこ 
 とに変わりはありませんが、このように要素を用いて物語を見ると、お手玉 
 でもするように簡単に(そして危なかっしくもあるのですが(^^; )、自 
 由自在な軽業のように物語の「変換」が可能になるのです。 
  決して難しくはありません。これまでお話してきた起承転結に通じる部分 
 もあります。 
  エアフォースワンを考えたとき、「飛行機という舞台は魅力的でない」と 
 判断出来ました。だから、飛行機以外の舞台を登場させましょうと具体的な 
 解決方針を出しました。そしてその具体的な方法として、飛行機の外に関係 
 線を引く(しかも図太い・・・)といいました。そして、実際にうまくまと 
 め切ってはいないのですが、スキャンダルの相手・家族を飛行機の外に置き、 
 マスメディアを通した情報戦を物語の主題としました。 
  ストーリーは飛行機内と、マスメディアと戦う家族の二つで進行します。 
  ちょっと考えてみて下さい。 
  これって、二段構えの起承転結に似ていませんか? 
  二段構えの起承転結は物語の流れを前後に分割(承と転を繰り返す事によ 
 り)していますが、この方法は平行ストーリーといいますか、横に分割(主 
 要な舞台を二つにすることよって)しています。それにより、ストーリーに 
 幅を持たせているのです。 

  何か混乱してしまうかも知れません(^^; とても概念的なお話になって 
 しまいました。 
  しかし、要素による解析がおおよそどのような物かはつかめたのではない 
 でしょうか。 
  もちろん、何もお話していないのに、「わかった!」なんて言われてし 
 まっては、メルマガを発行して読んでくださる方々にお伝えする私の楽しみ 
 がなくなってしまいます(^^; 
  これから、とても基礎的なことからお話してゆきます。 
  もし分からないなんてことがありましたら、お気軽にご質問下さいね。 


 ● 03 ● 解析術講座 ― 「 要素による解析のガイダンス 」 
  ̄ ̄ ̄ ̄ 

 ○ 03 ○ 要素による解析の理解のために ○ 01 ○ 

 分解してその一つ一つの部分を見るのが極めて難しい物語を、要素という断 
 片とその関連性によって把握しようとしたとき、どのような断片に物語を分 
 解すればよいのでしょうか。 
  いきなり問われてもなかなか難しいかも知れませんが、これを探るために 
 はより断片的な情報でストーリーを表している物語を探してみる必要があり 
 ます。 
  映画では正反対、小説もだめです。 
  漫画・落語・ラジオドラマと「ダメ」が続きますが、たった一つだけよさ 
 そうな物が残っている事に気付くでしょうか。 
  演劇です。 
  実際のお芝居が断片的な情報であるわけではなく、私が「これ!」と言い 
 たいのは、お芝居の元となる「台本」なのです。 
  確かにかなり断片的な情報しか載っていないと納得していただければ、話 
 は早い(^^; 
  次に出てくる疑問は、でもあれは完成した物語ではなく、役者が舞台で演 
 じることによって物語となるのではとのことだと思いますので、手早くその 
 疑問にもお答えしておきましょう。 
  その台本という極めて断片的な形態の物語しか残さなかったのにもかかわ 
 らず、史上最高の物語作家として広く知られている人があります。名前を挙 
 げる必要ないほど有名なシェイクスピアがそれですが、彼が残したのは台本 
 でした。シェイクスピアを大天才に引き上げた人たちに実際にシェイクスピ 
 アが生きた時代の劇を見たものはありませんから、その史上最高の評価は台 
 本に対する評価なのです。 
  さて、ここで面白い事に気付くと思います。 
  つまり、「極めて断片的」「史上最高の評価」の二つが揃うということは、 
 本質的には物語はその断片以上の記述を必要としない、という事です。それ 
 以外は物語の受け手に伝わりやすいように、より強く伝わるように、より面 
 白がってもらえるように、より正確に伝えるために存在する装飾であるとい 
 う考えは少々乱暴でしょうか(^^; 
  もちろん、私は映画館での映画鑑賞こそは人類が生みだした史上最高のエ 
 ンターテイメントですと大きな声でいいたいような人ですし(^_^) 何が 
 いいのかと言われれば、それは決して物語性ではなく(毎回良い訳ではない 
 のであたりまえですが)、その大スクリーンとびりびりと身体を揺する音響、 
 およそ二時間の間、物語にどっぷり入り込む事ができるその瞬間が、良いの 
 です。ですから、装飾を大歓迎しますし、装飾がなければ伝わりませんし、 
 それを削ぎ落としてしまった物に果たして物語としての価値があるのかと問 
 われれば私ははっきりとNOと答えるでしょう。 
  ですが、分析に用いる解析法はそうあるべきなのです。 
  物語の受け手には素っ気なさすぎるものに思えるかも知れませんが、送り 
 手や物語の面白さをより深く知りたい方にはこれほど正確で心強い物はあり 
 ません。 

  さて、シェイクスピアは何に注目して、どんな要素を使って物語を構築し 
 たのでしょうか。 
  これは実際のシェイクスピアをお読みになって頂くのがとても良いのです 
 が(全くのはじめての方はカルチャーショックですよぉ(^o^)/)、もっと 
 手っ取り早くお分かりいただくために実際のお芝居を思い出して下さい。 
  登場人物があります。これに付随して台詞と行動がついてきます。 
  舞台があります。舞台セットがあり、その中を登場人物が動きます。 
  小道具があります。実際には毒ではないのに毒だったり、惚れ薬だったり 
 します。 
  お芝居の様子が浮かんで来ますか? 
  これだけです(^_^) 読んでいただければ分かりますが、これ以外の物 
 がシェイクスピアの台本に登場することはありません。私がお話してお読み 
 になる方々が想像されるよりはるかにシェイクスピアの台本は簡潔です。 
  たったこれだけに注目すればいいのです。 
  ただ、確かに正確にはこの三つが台本に登場する全てなのですが、これ以 
 外に「決まり事」のようなもの(例えば法律です)が重要な要素として取り 
 上げなければ、どうしてもシェイクスピアが記述する事ができず、加えなけ 
 ればならないのですが、これは少々難しいですので、考えるのを先に伸ばし 
 ましょう。 

  というわけで解析をする土台ができました。 
  分かりやすいように定義をしてしまいます。 

  「物語の中において、他に従属せずに存在でき、動的に物語に影響を与 
   えることができる要素は、人物・舞台・道具の三つしかない。静的に 
   物語に影響を与える、独立した要素としてもう一つ、決まり事(法律 
   など)が存在する」 

  むむむぅ…、ちょっと難しく感じてしまうかも知れませんね(^^; です 
 が厳密さを問い詰めるとこうなってしまうのです。そんなもんなのだと思って 
 いただければ幸いです。  
  
  さて、ようやっと物語の骨が見えてきたでしょうか。 
  真っ白くて、不気味で、無愛想なものに思えるかも知れませんがどのよう 
 な美しい物語にも、当然ながら骨が存在します。問題は実際の物語に出会っ 
 た瞬間、その美しい外見、皮膚や脂肪に気をとられることなくその骨を、X線 
 みたいに見つめることが出来るかという事なのです。 
  また、大平原に、もしくは大ジャングルに散らばった化石を手にしたとき、 
 その骨がどこの骨なのかが分かり、そして「はてな?」などと思いながらも 
 その全骨格を構築することができるというのが大切です。 
  あぜんとするほどシンプルなものに思えるかも知れません。もちろん、あ 
 ぜんとするほどシンプルでなければ幅広い用途にもちいる事ができません。 
  とても簡単に思えるかも知れません。実際簡単です。ですがとても奥が深 
 くあります。 
  また、即物的で高尚なものに見えないかも知れなくて、こんなにシンプル 
 な事なら誰でも使っていると思われるかも知れませんが、事実としてここま 
 で装飾を削ぎ落とした、簡単な部分での設計ミスを、大きなお金を投資して 
 作られた物語はしばしば平気で犯すのです。 

  これから五回に渡って、少しずつこの要素による解析をお話してゆきたい 
 と思います。 
  これまでの感覚で五回と言いますと、「え? 二ヵ月半???」などと思 
 われてしまうかも知れません。巻尾でもお話する予定ですが(ホントに書く 
 のかなと思いつつも(^^; )、今号より物語解析は週刊となります。単純 
 に計算して半分の長さのメルマガとなりますが、どうぞこれからもよろしく 
 お願いします。 
  各号の内容は、第五号の今号が「ガイダンス」、次号第六号が「人物」、 
 第七号が「舞台」、第八号が「道具」、第九号が「背景」、第十号が「まと 
 め」となり、一通り要素による解析の基礎的な部分をお話できるかと思いま 
 す。 
  書くべきことが多くて分載になり号が増えてしまう可能性は多々あります 
 が(^^; お話する予定の事を削ってしまうというようなことはまずありま 
 せんので、どうぞ、よろしくお願い致します。 


 ○ 03 ○例題「赤ずきん」 ○ 02 ○  

  長々と概念的なお話が続いていてしまいました。 
  物語解析の根本的な部分のお話でしたので、少々力が入ってしまいまし 
 た(^^; 
  息抜き半分に簡単な例題をやってみることに致しましょう。 
  前号でお話しましたと通り、「赤ずきん」を題材と致します。 
  「赤ずきん」は緒論が多く、様々な解釈のされ方をしてしまう、たいへん 
 な物語です(^^; 難解な解釈のお話は解釈をされる方々にお任せすること 
 にして、この物語解析ではその構造を少しだけ解き明かしてみたいなと思い 
 ます。 
  これを読みながら、これまでお話して来たことをチェックしてみてはいか 
 がでしょうか。 

  今回、お話したことはたった一つ、「要素は「人物」「舞台」「道具」の 
 三つと「決まり事」の合計四つしかない」という事でした。 


 【例題】 〜「赤ずきん」 

  以下の文章を読み、その物語より「人物」「舞台」「道具」をそれぞれ 
 抜き出して下さい。  

 ▼───────────────────────────────── 
  
  あるところにかわいい女の子がありました。おばあさんからもらった赤い 
 ずきんがとても良くにあい、彼女が他のものをかぶろうとしなかったので、 
 彼女は赤ずきんと呼ばれました。 
  ある日、赤ずきんはお母さんに、ケーキとワインを病気のおばあさんのと 
 ころに届けるように言われました。道草をしないようにと注意され、赤ずき 
 んはしないと言って引き受けました。 
  おばあさんは、村から離れた、森の中に住んでいました。赤ずきんが森に 
 入ったとき、狼が彼女に出会いました。しかし、赤ずきんは、狼が悪い動物 
 であることを知らず、狼と話をし、おばあさんのところへケーキとワインを 
 持っていくことを教え、そのおばあさんの家を狼に教えました。狼は、赤ず 
 きんとおばあさんの両方を食べるチャンスだと思い、赤ずきんに森の花々や 
 愛らしい小鳥の歌の話をし、道草をするように勧めました。赤ずきんは、ま 
 だ昼になる前だから時間に遅れないと思い、道を離れ森に入り、花を摘んで 
 いるうちに深い森の中に迷い込んでしまいました。 
  一方、狼は、おばあさんの家に行き、赤ずきんになり澄まして家に入り込 
 み、まっすぐおばあさんのベッドのところまで行き、おばあさんを飲み込み 
 ました。それから、おばあさんの衣装を来こんでベッドの中へ横になりまし 
 た。 
  一方、赤ずきんは、花をさがして、歩き回っていました。抱えることがで 
 きなくらいたくさんの花を手に入れ、おばあさんの家に向かいました。 
  赤ずきんは、ドアが開いていることを不思議に思いました。そして、とて 
 も不吉な予感を感じました。挨拶をしても返事がなく、仕方なくおばあさん 
 のベッドへ行くと、とてもおかしな様子のおばあさんに 
  そこには、おばあさんが横になって、頭巾を深くかぶっていました。おば 
 あさんは、とてもおかしな様子に見えました。様々におかしなところを質問 
 しているうちに、ベッドから飛び出してきた狼にパクリと平らげられてしま 
 いました。 
  狼は二人を食べてしまうとベッドのなかで大きないびきをかきながら眠り 
 ました。ちょうどそのとき、その家のそばを通りかかった猟師が大きないび 
 きを聞き、具合がわるいと思って部屋に入り、狼を見つけました。 
  猟師は彼の猟銃を構えようとしましたが、狼がおばあさんを食べてしまっ 
 たかも知れなく、おばあさんはまだ救うことができるかもしれないと思いつ 
 き、銃を撃つのではなく、はさみで狼のおなかを切り開きはじめました。す 
 ると赤ずきんが飛び出して来て、おばあさんもかろうじて生きて出てきまし 
 た。 
  赤ずきんは、急いで大きな石を持ってきました、それで、狼のおなかを 
 いっぱいにしました。そして、狼が目を覚ましたとき、狼はぴょんぴょんと 
 はねようとしようとしましたが、石がたいへん重くて、すぐに倒れて、死ん 
 でしまいました。 
  3人みんなは、よろこびました。猟師は、狼の毛皮をはぐと、それを 
 もって家へ帰りました。おばあさんは、赤ずきんが持ってきたケーキとワイ 
 ンを飲みました。そして、再び元気になりました。赤ずきんは、二度と道草 
 はしないと心に決めました。 

 ─────────────────────────────────▲ 


 ○ 03 ○「 解答 」 ○ 03 ○  

  さて、いかがだったでしょうか。赤ずきんです。こうして読んでみると思 
 いのほか、継ぎはぎをしたような物語である印象を受けます。もちろん見る 
 べきところは多々あります。 
  例題の解答を一緒に考えてゆきながら、物語に少し踏みいって見ましょう。 

  まず、「人物」という要素を抜き出して見ましょう。とても簡単です。文 
 章を読みながら出てくる名前を連ねて見ればいいのです。もちろん、「狼」 
 は人物ですよ(^^) とても簡単に言って人格を持っているように扱われて 
 いるものは「人物」に入ります。リストができたでしょうか。その数は五人 
 ですか(^_^) 五人だと思います。ですが、そのうちの四人までがとても早 
 い段階で出揃うのが分かったでしょうか。出揃うと言うとそれだけ全てのよ 
 うな気がしてしまうでしょうが、実は最後の一人はハッピーエンドになるよ 
 うにと後で付け加えられた物という有名な説があるのです。 
  最後の人物が登場している部分を他の人物と照らし合わせて見てください。 
  赤ずきんの名前の由来がおばあさんの贈った頭巾にあるということを一番 
 に述べて、その登場を早めているのに比べて、あまりにおざなりなのが分か 
 ります。出てきて、「え? 誰? どんな人?」と疑問に思ってしまいます。 
  私の要約したものはグリムの原文なのですが、少し分析をするだけで、 
 グリム兄弟があまり優れた物語作家ではなかったことが分かります。むしろ 
 上手なのは、グリムが写した物語作家のようです。 

  「舞台」を抜き出してみましょう。 
  この舞台を抜き出すときには、演劇のように舞台セット単位で考えれば充 
 分です。この舞台はその物語を解析する人が最も把握しやすい形で構わない 
 のです。例えば小説を思い出してみて、詳しく微に細を穿って地名を告げる 
 小説はほとんどないことに気付くかも知れません。「東京」「新宿」「東北 
 の無人駅」これで充分なのです。 
  ちょっと不安ですか? では、シェイクスピアはどうでしょうか。シェイ 
 クスピア劇の中でも有名な「ヴェニスの商人」に出てくるシーンの名はこう 
 です。 
  ――ヴェニス。街頭。 
  ――ヴェニス。街路。 
  もっとも、シェイクスピア自身がヴェニスを見たことがあるとは到底思え 
 ませんので、このヴェニスという言葉にもあまり価値がありません。つまり、 
 シェイクスピアの傑作における舞台とは、街頭・街路程度の差しかないので 
 す。そして、街の名前としてのヴェニス。 
  という訳で気楽にリストアップしてみましょう。 
  いくつ挙がりましたか(^_^) この数であなたの慎重さが分かりますよ。 
 もしくはいいかげんさです。いい加減だと分かってあまりがっかりする必要 
 はありません。むしろ細かく細かく舞台に分けてしまう慎重さの方が、物語 
 を自由自在に操ることの障害となってしまう場合もあるのです。 

  もっともいい加減で抽象的な分け方は三つです。「村」「森」「おばあさ 
 んの家」。 
  シェイクスピア的に分ければこうです「赤ずきんの家」「道」「森」「お 
 ばあさんの家の前」「おばあさんの家の中」。五つです。 
  この違いが分かるでしょうか。これは舞台セットを意識するかしないか、 
 の違いなのです。つまり、舞台に関してはその解析者もしくは、読者のニー 
 ズによって細かさが違ってくるのです。 
  この赤ずきんを分析してみると、「村」「森」「家」と一方通行に舞台が 
 展開するお話だと分かります。とてもシンプルな形です。舞台設計には見る 
 ところがない物語といっても間違えではないかも知れません。 

  さて続いて「道具」について、考えてみましょう。 
  挙げればキリがないかもしれません。最も細かく考えれば、舞台を意識し 
 た小道具まで、大雑把に考えるのであれば、物語に影響を与える道具のみと 
 考えるのが、現実的な範囲となります。 
  この赤ずきんに登場する道具はどんなものですか? 
  どこまで細かく考えるかはこれも舞台と同じように、分析者の判断とした 
 方がよさそうですが、最低限の範囲として、二度以上言及があるものに限っ 
 てみましょう。 
  いくつ挙がりましたか? 私はこうでした。 
  「ケーキ」「ワイン」「花」「ベッド」「おばあさんの衣装」「猟銃」 
 「石」これはおまけですが「はさみ」。 
  と、一応これだけの物が挙がるのですが、道具が物語に大きな影響を与え 
 ている物はあまりありません。道具が物語に与える影響を考える際に最も分 
 かりやすい指標は、その道具が何人に対して使われたか、もしくは何度持ち 
 主が変わったかという物です。もちろんこれに当てはまらない物も多々ある 
 のですが、これは分かりやすい原則です。 
  この観点で重要な道具を探してみると、「ベッド」「おばあさんの衣装」 
 の二つが重要だということになります。 
  少し考えてみてください。 
  「ベッド」と「おばあさんの衣装」はこの物語において重要な物でしょう 
 か。 
  分かりますよね(^^) とても重要です。なぜなら、この道具の持ち主が 
 おばあさんから狼に変わることにより、赤ずきんは狼にだまされ、食べられ 
 てしまうからです。 
  あまり目立たないかも知れませんがもう一つ重要な物があります。「ケー 
 キ」と「ワイン」です。なぜならこの二つは、赤ずきんからおばあさんに持 
 ち主が変わるからです。ですが、あまり重要な気がしませんよね(^^; 実 
 際にはとても重要なのです。なぜなら、この道具をおばあさんに渡しにゆく 
 ことがこの物語の発端であり、これを渡すことによって、物語が終結するか 
 らです。ここはグリムの上手いところですよ。なぜなら、最初に出てきた 
 「ワイン」と「ケーキ」を宙ぶらりんのままにしなかったからです。グリム 
 はもしかすると人物の扱いより、道具の扱いに長けていたのかも知れません 
 ね。 

  さて大雑把に赤ずきんを要素に分けてみましたが、この物語には、とても 
 分かりやすい構造がありますので、最後に簡単にお話してみたいと思います。 
  抽象的に分けた舞台を考えると「村」「森」「おばあさんの家」となりま 
 した。この三つの舞台に一人ずつの人物がいます、「村」に「赤ずきん」、 
 「森」に「狼」、「おばあさんの家」におばあさんです。 
  物語の進む方向は「村」「森」「家」です。つまり、家の方が物語的には 
 奥なのです。分かりますか(^_^) とても分かりやすく言えば、大魔王は魔 
 界の城にいるのが一番単純明快な物語の構造なのです。つまり、一番奥の舞 
 台にいるのが、一番の悪役なのです。 
  ですが、この物語は少し構造が違います。 
  この物語において、二人の人物が舞台を移動します。当然のように最も動 
 くヒロイン「赤ずきん」は、「村」「森」「家」と移動します。次に悪役で 
 ある「狼」は「森」「家」と移動します。頭の中に図形を描いてみて下さい 
 ね。 
  「赤ずきん」が「村」から「森」へ移動することによって「狼」に出会い 
 ます。 
  「狼」は「赤ずきん」に出会ったことによって「森」から「家」に移動し 
 ました。 
  この二つの人物が一緒に奥に向かうためにこの物語では時間差を使います。 
  このことにより、物語に深みが出ているのが分かるでしょうか。 
  つまり、「狼」と「赤ずきん」は二度交錯するのです。 
  とても短い物語にもかかわらず、このお話が魅力的である秘密はこの辺に 
 あります。 
  舞台と人物の配置、そして動き。 
  これがとても重要なのです。 


 ● 04 ● 諸所雑感 ―「 ドラえもんデータベースって作れないかな? 」 

  これまで映画についてお話してきたのですが、ちょっと今回は特別に、 
 ドラえもんについて。 
  ドラえもんを要素の解析的に考えると、とんでもなく純粋な、そして、質 
 の高い物語分析対象だと思えてきます。これは、ドラえもんの登場人物と舞 
 台が固定されており、一話完結であり、その物語の展開が「道具」にのみに 
 よって左右されるからです。 
  道具が物語に与える影響を考えるにおいては、とてつもなく素晴らしい素 
 材なのです。ですから、「もし、ドラえもん全巻を解析できたら!」と思って 
 しまうのですが、ちょっと私一人では難しいかなと思えてしまうのです(^^; 
  でも、データベース化して、誰もが使える形になったら、とんでもない資 
 産になるだろうなって、思ってしまうのです。 
  ですから、日刊でドラえもん解析なんて出せたらいいな、なんて思います。 
  もし、やろう! なんて方がありましたら、お知らせくださいね! 


 ● 05 ● おわりに 

  このたびは、物語解析を最後までお読みくださいまして、ありがとうござ 
 いました(^_^) これまでの起承転結より、新たな技術をお話するものとなり 
 ましたが、いかがだったでしょうか。 
  説明が多く、概念的な話ばかりとなってしまいました。 
  もし、その中で少しでもこの技術の可能性といいますか、使いやすさにつ 
 いて、伝わったのであればとても嬉しく思います。 

  さて、今回(事実上は次回からですが)より物語解析を週刊化したいと思 
 います。多くの方にご意見をいただき(ありがとうございました!)、やは 
 りマイペースな隔週刊よりも週刊がよいとの判断を致しました。本当に出来 
 るのかとは、とても不安に感じるところではあります(^^; とりあえずは、 
 週刊を謳いながら、もしかすると隔週刊という、えっちらおっちらの発刊と 
 なるかも知れません。ご期待いただいていることは、とても強く感じており 
 ます。ご声援、もしくはご参加(寄稿等)いただければこれに勝る幸せはあ 
 りません。なかなか、範囲を広げる事が出来ず、とても心苦しい気持ちを抱 
 いております。なるべく柔軟な気持ちを持ちたいと思っておりますが、一人 
 の視野では難しいことが多々あります。願わくば、物語を楽しんで話し、誰 
 もが物語について少しだけ深く、格好よく言えば研究されますように。 
  もちろん、物語を受け取るだけよりも、物語を改変・改良・創作、そんな、 
 「参加」が素晴らしく豊かな事だと私は信じます。その根底には研究があり、 
 そして、様々な創造があるはずです。 
  この物語解析が、ほんのわずかでもその手助けとなりますように。 

  最後になりますが、バックナンバーをご希望される方は私 
 (n_hikali@hotmail.com)まで。web上ではなく、メールで欲しいという方、 
  お送りします。ご意見・ご感想ありましたら、これに勝る幸せはありませ 
 ん。同じメールアドレスにお返事ください。このメールに対する返信でも、 
 OKなはずです。 
  次回は「人物」についてです。 
  どうぞご期待くださいませ(間に合うのかな(^_^; ) 


 ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■―― ■ 
                       第五号   2001/06/11 
   「 物 語 解 析 」 
    〜 起承転結法 様々な起承転結 〜 

 発行者:hikali 
   文:hikali 

 ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ http://www.seikou-toutei.com/nmk/index.html


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物語解析 サマリーを作っておく
 要素による解析基礎 「決まり事(世界観)」ガイダンス
要素による解析基礎 「道具」 変化
要素による解析基礎 「道具」 効果
「千と千尋の神隠し」解析
号外のお知らせ
要素による解析基礎 「道具」 所有・存在
要素による解析基礎 「道具」 ガイダンス
要素による解析基礎 「舞台」 状況の変化編(実例)
要素による解析基礎 「舞台」 状況の変化編
要素による解析基礎 「舞台」 概念編(中)
要素による解析基礎 「舞台」 概念編(上)
夏休み特別号
要素による解析基礎 「人物」 実践編
要素による解析基礎 「人物」 概念編
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起承転結法 起・承・転・結(後編)
起承転結法 起・承・転・結(前編)
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主役を6人にする
世界情勢を俯瞰してみる
「ハウル──ペンステモン」ラインを再構築する前に
プランA
結局どうだったの? 映画版ハウル
原作ハウルを21章じたてのプロットにまとめてみる
ソフィーは、世界背景をあまり見ていない
一応原作を確認しておく
実は表現力に左右される!
殺しては行けない部分を探す
ハウルのプロットは映画には不向き
宮崎駿監督「魔法使いハウルと動く城」を原作からつくっちゃおう!