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                           第七号   2001/08/04 
   「 物 語 解 析 」 
    〜 要素による解析基礎 「人物」 実践編 〜 

 「今号を要約!」 ドラえもん 「のび太と鉄人兵団」の解析です。 

  起承転結を分析した後、五つの重要な関係線について細かな解説を行っています。 
  「のび太――ジュド――リルル」「のび太――しずか――リルル」の二つの三角 
  関係が物語の中心、これが前半と後半で交代すると分析。のび太たちと鉄人兵団 
  の間には「のび太ルート」「ドラえもんルート」の二つがあり、相反する二つの 
  ルートを「のび太――ドラえもん」の抜群の安定感を誇る関係線が物語を支えて 
  いると結論付けています。 
   不安定な関係線を別の安定した関係線で支えるがキーワード。 

  - - - -< 今号の中身をピックアップ! > - - - - - - - - - - - - - - - - - 
 《 本文 》                          《ページ& 
                                 落書き欄》 
                                 (^_^; 

   01:はじめに                       :[ 01 ] 
     ――一ヶ月以上のお休みの理由は……(^^; 

   02:要素による解析ってなに???             :[ 02 ] 
     ――簡単ではありますが、説明しています。 

   03:解析術講座 「要素による解析 「人物」実践編」    :[ 03 ] 
    03-01:「起承転結の区切りを把握する」          :[ 03-01 ] 
        ――ナビゲーションとして、起承転結の区切りを 
          使用します。「起承転承転結」型です。 
    03-02:「重要な関係線を探す」              :[ 03-02 ] 
        ――「のび太──リルル」「のび太──ジュド」 
          「しずかちゃん──リルル」 
          「ジュド──リルル──鉄人兵団」 
          「のび太──ドラえもん」 
           が重要な関係線。その理由について。 
    03-03:「のび太──リルル」               :[ 03-03 ] 
        ――この「好意」「好意」の関係が物語を安定さ 
          せています。 
    03-04:「のび太──ジュド」               :[ 03-04 ] 
        ――「のび太――リルル」の関係は、お互いが所 
          有している物への憧れを中継する事によって 
          成り立っている。 
    03-05:「しずかちゃん──リルル」            :[ 03-05 ] 
        ――後半で主役関係線が「しずか――リルル」に 
          移るけど、それは物語が奥深くなりすぎない 
          ようにする手法です。 
    03-06:「ジュド──リルル──鉄人兵団」         :[ 03-06 ] 
        ――この入れ子関係は異質な組織をわかりやすく 
          説明する手段です。 
    03-07:「のび太──ドラえもん」             :[ 03-07 ] 
        ――相反する協調路線と敵対路線は、この抜群の 
          安定感を誇る関係線によって支えられています。 

   04:諸所雑感 「今回はお休みします。」          :[ 04 ] 
     ――その理由について 

   05:おわりに                       :[ 05 ] 
     ――大幅なレイアウト変更について。こんな事を考えて 
       このレイアウトにしました。どうですか? 

 ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ http://www.seikou-toutei.com/nmk/index.html ■


 ● 01 ● はじめに                      :[ 01 ] 
  ̄ ̄ ̄ ̄ 
  一ヶ月以上のご無沙汰でした(^^; 物語解析のhikaliです。 
  とても個人的で致命的な事情でお休みをしておりました……。 
  ご期待くださっていた方々、ほんとにすみません。別にやる気 
 がなくなったとか、本業が忙しくなったとか(実際忙しくはある 
 のですが…… ^^;)、メルマガでお伝えすることがあまりにも 
 複雑になり過ぎて手におえなくなったという訳では決してありま 
 せんので、ご安心頂ければ嬉しいです。 
  もちろん、やる気がとても出たり、本業が暇だったり(嬉しく 
 ないですけど(笑))、メルマガでお伝えすることが簡単だった 
 りすることはとても、嬉しく元気が出ることなのですが、今回の 
 お休みは、避けることが出来ない事情だったのです。 
  執筆に使用していたワープロが壊れてしまった(ボソボソ)。 
  ……と、とにかく、お伝えできることは、もう新しいワープロ 
 を購入したのでご安心くださいという事と、ジョルナダは不安定 
 なのでお気を付けください! という事です(わかる人どれだけ 
 いるのでしょうか(^^; ちなみに新機種はシグマリオン……)。 

  話を今回の内容に戻します。 
  今回は、前回お伝えしました通り、「のび太と鉄人兵団」の解 
 析です(このメルマガをきっかけにこの素晴らしい物語をご購入 
 になられた方がいらっしゃいましたら嬉しい限りですが ^_^)。 
  さすが! の手ごわさに解析も少し深い部分に踏み込まざる負 
 えませんでした。なかなか理解が難しい部分もあるかと思います。 
 トップ・エンターテイメントは物語技術の集積以外の何物でもな 
 いとお感じになって頂ければ幸いです。 


 ● 02 ● 要素による解析ってなに???            :[ 02 ] 
  ̄ ̄ ̄ ̄ 
  要素による解析は、複雑な物語の構造を分析するための技術です。 
  物語は「人物」「舞台」「道具」「決まりごと(背景)」の四つ 
 の要素に分解することにより、正確にその仕組みを理解しようとい 
 う、いささか大胆な解析方法です。 

  前回に「人物」の要素について概念的な部分をお話しました。 
  今回は、その概念を実践してみようという事で、ドラえもん大 
 長編「のび太と鉄人兵団」を題材に分析を試みます。なかなか手 
 ごわい物語ではあるのですが、要素による解析により、その核心・ 
 構造に迫ってみたいと思います。 

  もし、前回以前の内容がお読みになりたいという方がいらっ 
 しゃいましたら、メールの形でバックナンバーをお送り致します。 
  現在、個人的な事情で(PCでインターネットに接続出来ない 
 のです……)、バックナンバーをお送りする事が出来なくなって 
 います。少々遅れてしまうかも知れませんが、お気軽お声を掛け 
 て下されば幸いです。 

  と、言うわけで、「のび太と鉄人兵団」、解析しちゃいましょう! 


 ● 03 ● 解析術講座 「要素による解析 「人物」実践編」   :[ 03 ] 
  ̄ ̄ ̄ ̄ 
  今回は、ドラえもん大長編「のび太と鉄人兵団」を題材とします。 
  第四回の「のび太の魔界大冒険」に続いてのドラえもん大長編 
 の登場と同じシリーズの作品が続いてしまうこと、あまりよくな 
 いなとは思っているのですが、どうしてもこの作品群より優れた 
 ものがなかなかないのです(^^; 
  今回は、「人物」というとても重要かつ複雑なテーマですので、 
 しっかりとした物語構成をした無駄のない作品を題材とする必要 
 があり、よくないなとは思いつつも、この作品を題材としました。 
  要約を書くにあたって、「小学館コロコロ文庫」のものを底本 
 としました。このコロコロ文庫版には、とても素晴らしいことに(^^; 
 「おもな登場人物」が記載されています。ここで挙げられている 
 人物は、 

 ドラえもん  
 のび太 
 ジャイアン 
 スネ夫 
 しずか 
 ミクロス(スネ夫のロボット) 
 リルル 
 ジュド(ザンダクロス) 
 鉄人兵団 

 の九人です。この九人にもう一人を加えた十人がこの物語に影響 
 を与えている登場人物の全てですので、その十人のみを解析の対 
 象として、要約を書いてゆきたいと思います。 
  ん? 気付いたでしょうか(^_^) 前回お話した技術の一つが 
 もう、この時点で使われていますよね。鉄人兵団が人物として扱 
 われています。「さすがはドラえもん!!」なのですが、これは 
 前回お話した「組織の擬人化」です。ミクロス、ジュドが人物に 
 入っている事も見逃せません。この二人も登場人物なのです。 
  分かりますか? 

  という訳で、要約をはじめてしまう事にしましょう。この作品 
 の手強さ、きっと分かってきますよぉ! 

 ▼──────────────────────────── 
  のび太はスネ夫にラジコンのロボットを見せられうらやましい 「起」 
 と思いました。そこでドラえもんにビルみたいに大きなロボット 
 をねだるのですが、あいにく暑さにゲンナリしていたドラえもん 
 はとりあいもしません。かんしゃくを起こして、北極へ涼みに 
 行ったドラえもんを追い掛けて北極に降り立ったのび太は奇妙な 
 玉を見つけました。その玉は突然大きな部品を呼び寄せ、それを 
 不思議に思ったのび太は、その大きな機械を持って帰って調べる 
 事にしました。 
  家に帰った後も玉は部品を呼び寄せました。その二つ目の部品 
 を見たのび太はその部品を組み立てるとビルみたいに大きなロ 
 ボットになることに気付き、玉がどこかから部品を集める装置だ 
 と気付きました。のび太はそれがドラえもんの道具だと思ったの 
 ですが、北極より逃げ帰ってきたドラえもんは、知らないと言い、 
 持ち主に返した方が良いと言い、また大きすぎるから迷惑だと言 
 いました。のび太は、欲しくて欲しくて仕方なかったロボットを 
 手放すのが惜しく、ふと、誰の迷惑にもならない方法を思いつき 
 ました。ドラえもんの「鏡の中の、こちらの世界とそっくりで誰 
 もいない世界へ行く道具」を使用して、その鏡面世界でロボット 
 を組み立てようと思ったのです。二人はさっそく鏡面世界へ行き、 
 次々と届く部品を組み立て、ついにロボットを完成させました。 
  ところが、ロボットのコンピュータが見つかりません。そこで、 
 ドラえもんが、脳波制御のコンピュータを買ってきて、それを使 
 いました。脳波制御で自由自在にロボットを操れることが分かった 
 のび太はしずかちゃんを誘いました。その間、ジャイアンとスネ 
 夫にミクロスとの決闘を約束しました。しずかちゃんを加えた三 
 人はロボットで楽しく遊び、ロボットにザンダクロスと名前をつ 
 けました。ですが、そのザンダクロスについて不可解な点があり 
 ました。ザンダクロスが誰の物で、何の目的で地球にやってきた 
 のかが分からないのです。しかし、なんとはなしにしずかちゃん 
 がボタンを押すと突然ザンダクロスは兵器を発射し、超高層ビル 
 を粉々にしてしまったのです。ザンダクロスがとても恐ろしい兵 
 器であることに気付いた三人は、ザンダクロス・鏡面世界の事を 
 他言しないこと約束しあいました。 
  夜中に決闘をする約束をしていたスネ夫とジャイアンは、家ほ 
 どの大きさのロボットを探す不思議な少女リルルと出会いました。 「承」 
 リルルは部品の持ち主らしく、そしてメカトピアという国の使命 
 を負っているようなのです。 
  つぎの日、のび太は約束をすっぽかしたと言われ、スネ夫と 
 ジャイアンにいじめられました。その中、リルルに助けられまし 
 た。リルルがザンダクロスを探している事を知ったのび太は鏡面 
 世界にリルルを連れてゆき、ザンダクロスに会わせました。リル 
 ルはジュドと呼びましたが、そのジュドの人格を持つコンピュータ 
 をザンダクロスに入れていないため、反応はしません。しかし、 
 脳波制御できるコントローラーを渡され、自由にザンダクロスが 
 動かせる事を知ったリルルは勝手にロボットを持っていったのび 
 太を許し、その代わりに鏡面世界を貸してくれ、この事を他言し 
 ないことをのび太に求めました。のび太は約束し、リルルは喜び 
 ました。何故なら、リルルは地球人に知られずに基地を作れる、  「転」 
 広大で無人の地を探していたからです。 
  のび太はぼけっとして過ごしました。隠し事をしていることが 
 気にかかっていたのです。せっかくドラえもんがミクロスに人工 
 知能を与えてスネ夫たちと仲直りさせようとしても、それを台無 
 しにするような事をしてしまいます。家に帰ってからも普通とは 
 違うのび太の様子にドラえもんは不審がります。のび太は部屋に 
 戻り、裏山に流れ星が落ちるのをみて、何か異変が起こっている 
 ことに気付きました。行って見ると鏡面世界の入り口があり、そ 
 の中に何かが送り込まれているのです。鏡面世界に入ってみると、 
 妙なロボットが部品のような物を運んでいます。心配して追い掛 
 けてきたドラえもんに全てを話したのび太は、ドラえもんととも 
 に、鏡面世界の一部がSF映画のような世界に作りかえられている 
 のを見ます。その陣頭指揮を執っているリルルを発見した二人は、 
 リルルの指揮する声を聞き、リルルたちが、地球人と戦い、地球 
 人を捕獲しようとしていることを知るのです。盗み聞きしている 
 ことに気付いたリルルは、のび太を好感を持って迎え、協力して 
 欲しいといいました。のび太たちは逃げましたが、リルルに追わ 
 れ、鏡面世界の入り口に逃げました。リルルは無理やり鏡面世界 
 の入り口を広げようとしましたが、無理やり空間の接点を広げよ 
 うとしたため、次元震が起こり大爆発とともに鏡面世界の入り口 
 は消滅してしまいました。 
  二人は、鏡面世界への出入り口がなくなった事により、ロボッ 「承2」 
 トたちが現実世界に出てこれなくなった事に気付き、大喜びしま 
 した。しかし、次の日、ジュドの頭脳が騒ぎ始め、なんでも鉄人 
 兵団は基地の完成をまちかね、すでに地球に向けて全軍発信した 
 との発言を聞き、二人は大慌てになります。色々な人に地球の危 
 機を話しますが、誰も信じてはくれません。しかし、ジャイアン 
 とスネ夫は信じてくれました。四人と一体(ミクロス)はもっと 
 心強い仲間を手にするため、とりあえずザンダクロス(ジュド) 
 の頭脳を改造して味方にする事にしました。改造を終えた五人は、 
 ザンダクロスに取りつけるために鏡面世界へ向かいます。しずか 
 ちゃんの家のおフロに出入り口を作り鏡面世界に向かい、ミクロ 
 スが怖がって逃げてしまうというアクシデントはありましたが、 
 無事ザンダクロスを味方にすることが出来ました。そのまま鉄人 
 兵団の基地を破壊しはじめました。しかし、その途中、通信室で 
 通信を聞き、鉄人兵団が明晩地球に到着することを知りました。 
 そして、斥候役のリルルを鉄人兵団に近づけさせず、大軍が混乱 
 することに望みをつなぎ、ロボット狩りをはじめました。 
  一方、しずかちゃんはおフロに入ろうとして、鏡面世界の入り 
 口がある事に気付きました。ただ一人、鏡面世界に向かいました 
 が、その中でミクロスに出会います。ザンダクロスのあるうら山 
 に向かったと聞き、うら山に向かい、そこで傷ついたリルルを見 
 つけ、傷口から機械が覗けている事に気付きました。リルルはし 
 ずかちゃんを殺そうとしましたが、ミクロスにより助けられます。 
 しずかちゃんは、リルルを自分の家に連れてゆき、手当てをしよ 
 うと思いました。その直後、家に侵入したロボットに襲われかか 
 りましたが、ロボット狩りをしていたのび太に助けられました。 
  ロボット狩りが一段落した四人と、二人が合流し、リルルにつ 
 いて話し合いましたが、結局助ける事にしました。その後、鉄人 
 兵団が到着するまでの鏡面世界でのひとときを楽しみましたが、 
 しずかちゃんは動けるようになったリルルに鉄人兵団の人間を奴 
 隷とする計画を聞き喧嘩をしてしまいました。リルルは誇らしげ 
 に愚かな人間を見放した神がロボットだけの理想郷を作り、その 
 後ロボットたちは地球の人間と同じ歴史を語りました。しかし、 
 しずかちゃんにまるでロボットたちが人間の歴史を辿っている事 
 を指摘され、激怒し、しずかちゃんを殺してしまおうとしました 
 が、リルルが弱っていた為助かりました。しずかちゃんは怒りま 
 したが、やっぱりリルルを放ってはおけなかったのです。 
  次の日、ドラえもんにいい作戦が浮かびました。というのは、 
 湖に鏡面世界の出入り口を作り鉄人兵団をおびき寄せ、一人相撲 
 をとらせようというのです。それをリルルに邪魔されるとまずい 
 と、薬を飲ませて眠らせようとしましたが、リルルは飲んだふり 
 をして、逃げ出してしまいました。 
  鉄人兵団はまんまとドラえもんの作戦に乗りましたが、ドラえ 
 もんたち六人はリルルが逃げ出したことに気づきます。ドラえも 
 んたちはリルルを探し始めました。しばらくしてのび太がリルル 
 を発見し、一緒に帰ろうと諭しましたが、リルルは祖国メカトピ 
 アに尽くす義務があるといい、やめないと撃つぞというのび太を 
 振り切って司令部へと向かいました。司令部でリルルは鉄人兵団 
 にこれまでの経緯を正直に話し、その後、この世界には奴隷にす 
 べき人間が見あたらない、どこへ行けばみつかるのか、と聞かれ、 
 答えたくないと言いました。リルルはロボットだけの天国は間 
 違っている、奴隷狩りを中止して引き上げるべきと告げましたが、 
 司令部の激怒を買い、連行されてしまいました。その途中、すべ 
 てを聞いていたのび太たちに助けられ、しずかちゃんの家に向か 
 い、他の四人に合流し、経緯を話しましたが、不審がる面々に自 
 分は奴隷狩りは悪いことだと思うがメカトピアを裏切る事はでき 
 ない、といい自分を信用しないでくれと言いました。結局、リル 
 ルは閉じ込められる事になりました。 
  さて、ついに鉄人兵団は鏡面世界にいることに気づきました。 「転2」 
 全軍が鏡面世界の出入り口に向かって移動を開始し、ドラえもん 
 たちもそれに気づいて、湖に向かいました。待ち伏せをし、初戦 
 は鉄人兵団を追い払う事に成功しましたが、本隊が到着し全軍の 
 攻撃が始まれば到底勝ち目はありません。 
  しずかちゃんの家では三人が不安げに戦いの行方を見守ってい 
 ました。そのときふとミクロスが言った「大昔に戻ってメカトピ 
 アの初めのロボットを作った神様に文句を言ってやる」の一言に 
 しずかちゃんがひらめき、三人で神様に会いに大昔のメカトピア 
 に向かいました。メカトピアで初めのロボットを作った科学者は 
 しずかちゃんの話を聞いて愕然としました。博士はロボットの頭 
 脳に他人を思いやるあたたかい心を植え付けるように改造をしよ 
 うとしました。そうすれば、鉄人兵団は消えてしまうのです。し 
 かし、それはリルルも消えてしまう事を意味しました。博士は体 
 が弱り切り改造を続ける事はできませんでした。そこでリルルが 
 改造を続け、完成し、そして「生まれ変わったら天使のようなロ 
 ボットになりたい」と言って消えました。 
  地球ではのび太たちが鉄人兵団が消えてしまった事に喜んでい  「結」 
 ました。しかし、しずかちゃんに事情を聞き、驚きました。 
  平和な世の中になっても、のび太はリルルやメカトピアの事が 
 忘れられずいました。そんなとき、ふいにリルルを見かけ、リル 
 ルが生まれ変わったことを知りました。 
 ────────────────────────────▲ 


  以上、かなり長くなってしまいましたが、『のび太と鉄人兵団』 
 の要約をしました。もちろん、物語は漫画であり、とても文章で 
 全てをお伝えできるものではありません。細かい部分をかなりは 
 しょって書きましたので、詳しくは本家本元の漫画をお読みいた 
 だけると幸いです。大きな書店でしたらどこにでもありますし、 
 もし見つけることが困難でしたら、オンラインのブックストアを 
 ご利用すれば、必ずあるはずですよ! 
  しかし、すごく内容の濃い物語ですね(^^; ふらふらになって 
 しまいました。ちょっと今回で解説をするのが勿体ないぐらいに 
 高度な物語です。さて、では、この難敵に挑むことにしましょう! 


 ○ 03 ○ 起承転結の区切りを把握する ○ 01 ○         :[ 03-01 ] 

  この物語は、リルルという強く魅力的で、影響力の大きな背景 
 を持ったヒロインと、ビルみたいに大きなロボット──ザンダク 
 ロスが、力強く流れを引っ張っていく、優れた物語です。ドラえ 
 もんの大長編をご覧になった事がある方なら、リルルを最も印象 
 的な登場人物とするのではないでしょうか。なぜでしょうか。細 
 かくリルル周りの物語を追って行くとそれが次第に分かってきま 
 す。 

  さあ、分析を始めましょう。 
  どこから始めるべきかといろいろと悩むのですが、かなり複雑 
 な物語ですので、わかりやすく起承転結の整理をしてしまいま 
 しょう。その起承転結が人間関係を追うナビゲーションをしてく 
 れると思うからです。ですが、この「のび太と鉄人兵団」は、 
 起承転結で分析をするには複雑過ぎる物語です。実際に一緒に 
 お考えになって頂ければ、困難であるとわかると思います。 
  起承転結は大雑把すぎる分析法です。あくまでナビゲーション 
 と思ってくだされば幸いです。 

  この『のび太と鉄人兵団』は、第四回でご紹介した『のび太の 
 魔界大冒険』と同じ、起承転承転結という形を取っています。で 
 すが、なかなかに複雑な物語であり、正確にここと言うことがで 
 きない、起承転結の範疇を超えてしまっている物語でもあるので 
 す。解説を読む前に自分で試してみると面白いですよ。 

  起はリルルの登場までです。これはなかなか判断が難しいので 「起の説明」 
 すが、新しい人物・舞台の登場によって起が終わり、物語が発展 
 する承が始まるという法則に照らし合わせると、リルルの登場は 
 承の始まりととってかまわないでしょう。鏡面世界の登場を承の 
 始まりととるのも正しいような気もするのですが、鏡面世界の登 
 場はザンダクロスに従属しています(ちょっと難しいかも…。ザ 
 ンダクロスの登場が起の主な内容ですので、それに適する舞台で 
 ある鏡面世界の登場は、「物語を広げる新たな要素の登場」では 
 ないのです)。でも、その後鏡面世界は主要舞台になりはするの 
 です。舞台が変質するというなかなか分かりにくいこと(という 
 か天才的なストーリーテーリングかも)起こるのですが、とりあ 
 えずは気にしないで下さい。とても特殊なやり方なのです。 

  承はのび太がリルルにザンダクロスを渡すまでです。要約で言 「承の説明」 
 えばリルルが無人の広大な土地を手に入れて喜ぶまでです。ここ 
 は後々の転に直接関係する部分なので、なかなか区切りが分かり 
 にくいのですが、リルルとのび太の関係が「好意」「好意」の関 
 係であることに気付けば、うなずけるのではないでしょうか。こ 
 の時点で元の持ち主にザンダクロスを返すことは、物語にとって 
 はとても順調ななりゆきなのです。 

  転は、次元震が起こり鏡面世界の出入り口が閉ざされるまでで 「転の説明」 
 す。ここは異論がないと思います。 

  さて第二の承ですが、これは難しく感じるかも知れませんが、 「承2の説明」 
 鉄人兵団が鏡面世界の秘密に気づくまでです。何故なら、第二の 
 承は鉄人兵団が地球にやってくる事が判明して始まるからです。 
 それ以降は継続性があります。わかりますか? 分からなければ、 
 この感覚を掴んで下さい。起承転結は大局を分類する、大雑把な 
 技術なのですよ。 

  第二の転は、リルル・鉄人兵団が消えてしまうまでです。異論 「転2の説明」 
 はありませんよね。 

  その後が結になります。もし、要約の「地球では…」の部分も 「結の説明」 
 転だと思っていたら間違いですよ。ここは結です。その後の物語 
 の展開にとても近いのです。漫画を読むと確かに転の一部である 
 ように思えるかも知れません。ですがよく読んでみると、この物 
 語の短く効果的な結が、この一瞬転の一部に見える部分に継続的 
 な影響を与えています。時間軸・舞台が大幅に変わっていますの 
 で物語の区切りに思えるかも知れませんが、実際にはリルルが消 
 えた瞬間に物語の流れが大きく変わり、その後は(漫画でしずか 
 ちゃんが地球に戻るように言われるシーンがあるのですがここも) 
 一定の方向へ物語が向かっています。 


 ○ 03 ○ 重要な関係線を探す ○ 02 ○             :[ 03-02 ] 

  さて、起承転結の区切りはいかがだったでしょうか。大体感覚 
 は掴めたでしょうか。 
  ついつい忘れそうになってしまうのですが(^^; 今回は要素 
 による解析の「人物」がテーマです。まずは、この物語の人物構 
 成を見てみましょう。 

 ┌ ドラえもん 
 | ジャイアン 
 | スネ夫 
 | └─ミクロス 
 | しずかちゃん 
 └ のび太 
 ┌   ┌─ジュド(ザンダクロス) 
 | ┌─リルル 
 └ 鉄人兵団 
   メカトピアの科学者 

  これがこの物語の人物の階層です。この中にいくつか重要な関 
 係があります。 
  「のび太──リルル」の関係。これは両方ともが好意を感じて 
 いる関係です。 
  「のび太──ジュド」の関係。これは所有といっても間違いで 
 はありません。 
  後に発生する関係ですが、「しずかちゃん──リルル」の関係 
 も重要です。 
  そして、「ジュド──リルル──鉄人兵団」の関係。 
  見落としがちではあるのですが、「ドラえもん──のび太」の 
 関係も入れておきましょう。 

  この五つの関係がこの物語の核と言うべき人物関係です。  
  見渡してみてなかなかリルル周りが入り組んでいるのが分かり 
 ます。この物語の核の中に四つの関係線がリルルより出ているの 
 が確認できるでしょうか。次に多いのがのび太の三本。ジュドの 
 二本。実はこの三人が作る三角形がこの物語の中心なのです。 

  さて、ではこれ以外の関係は重要ではないのでしょうか。 
  例えば真っ先に思いつきそうなのが、タイトルになっている 
 「のび太──鉄人兵団」の関係です。しかし実際に物語を追って 
 みると、のび太が強く鉄人兵団に関係している部分がありません。 
 むしろ、積極的に鉄人兵団に影響を与えているのは、ドラえもん 
 です。作戦を考え、のび太たちを指揮しています。 
 「鉄人兵団──ドラえもん」の関係は確かに重要ではあるのです 
 が、この関係は非常に間接的な関係です。のび太たちの中心がド 
 ラえもんであるので、ドラえもんとの関係に見えるのです。です 
 からむしろ、人物の階層の部分で分類されている二つが争ってい 
 るという背景があるとする方がよいのではないかと思います。 

  スネ夫・ジャイアン・ミクロスに重要な関係線はないのでしょう 
 か。これは残念な事にありません。ミクロスは一見重要に見える 
 のですが、実は道化師的な役割に徹しており、中軸ではないので 
 す。確かに終盤できっかけとなる一言を言いますがひらめいたの 
 はしずかちゃんであるという事実を考えるとあまり主体的な行動 
 をしていない事が分かります。 
  これ以外に主要な関係があるでしょうか。 
  恐らく先に挙げた五つの関係に最も肉薄しているのは 
 「のび太──しずかちゃん」の関係です。ですが、文面を丁寧に 
 洗えば分かるように、この六番目に重要な関係は物語を動かす関 
 係になっていません。 

  つまり次のような関係がこの物語にはあります。 
  大きな関係(背景)として、のび太たちと鉄人兵団の 
 「敵意」「敵意」の関係。 
 「のび太──リルル」 
 「のび太──ジュド」 
 「しずかちゃん──リルル」 
 「ジュド──リルル──鉄人兵団」 
 「のび太──ドラえもん」 
  の関係が重要になります。 
  では、この五つの関係を詳細に追ってみる事にしましょう。 


 ○ 03 ○ 「のび太──リルル」 ○ 03 ○            :[ 03-03 ] 

  この関係は始終「好意」「好意」を貫いています。私がこの物 
 語を久しぶりに読んで初めに驚いたのはリルルがのび太に好意を 
 抱き続ける事でした。この激しく強く、立場が揺れ動くリルルと 
 いう人物が不動の安定感を保っているのは、このとても強い関係 
 のせいかも知れないと思うのです。前に挙げた物語の中核である 
 三角形が、常に好意しかない関係であることがこの物語の基礎を 
 支えているような気がします。 
  この関係を論理的に断じれば、互いに引き合う敵対者同士、と 
 いう物語的な収束と拡散の間を揺れ動く関係(これは黄金パターン 
 と言っても過言でないのですが)になります。リルルが揺れ動き、 
 のび太たちに近づき離れを繰り返すことはこのリルルの魅力を引 
 き出してはいないでしょうか。もっと積極的に言えば、リルルの 
 のび太への好意が、「リルル──しずかちゃん」の関係を支えて 
 いるという事もできます。ここにも「のび太──しずか──リルル」 
 の三角形があります。物語の中心のもう一つの三角形です。簡単 
 で構いませんので、あなたの感覚で図示して見て下さい。 
  分かりますか? 
  これは変則的な三角関係なのですよ。 


 ○ 03 ○ 「のび太──ジュド」 ○ 04 ○            :[ 03-04 ]  

  この関係が重要な意味をなすのは、起・承においてです。物語 
 的にはのび太が所有し、その後正当な持ち主であるリルルに所有 
 権が渡り、またのび太に戻るという複雑な経緯を経ますが、これ 
 は第五回でちらと説明した「所有者が転々と変わる道具は重要」 
 (逆も正しいのですが)の法則に適合します。 
  このロボットとのび太の関係はしごく不思議な関係をしていま 
 す。正確には、「のび太」「ジュド(機体)」「ジュド(頭脳)」 
 「リルル」と分解をして物語を解析した方が正確でよいのですが、 
 解説が長くなり過ぎてしまうので止めましょう(^^; 代わりに 
 のび太の目から見たジュドという視点でジュドを見ることにしま 
 す。このように観客の共感を受けやすい人物の視点で物語を眺め 
 る事は大切です。それ自体が観客がどう見るかを理解することに 
 繋がるからです。 

  のび太の視点から見ると、「のび太──ジュド──リルル」の 
 順で関係が繋がっています。これに対して、リルルの視点は、 
 「リルル──鏡面世界──のび太」です。「のび太──リルル」 
 の関係がお互いが所有している物への憧れを中継する事によって 
 成り立っています。さて、その前提をふまえて「のび太──リルル」 
 の関係の経緯を見ると、のび太がジュドに抱いている印象が、 
 リルルの印象に大きな影響を与えていることが分かります。 
  前に、物語の中心の三角形と言った「のび太」「ジュド」 
 「リルル」の関係ですが、これは単純な三つの関係から成る関係 
 ではないのです。それぞれがお互いに影響を与えあう関係だとい 
 う事が分かると思います。 
  なかなか難しいかも知れませんが(^^; のび太とリルルの関 
 係線は二経路あると言えば分かるでしょうか。つまり、 
 「のび太──リルル」の経路と、 
 「のび太──ジュド(経由)──リルル」の経路です。 
  難しくなりすぎてしまうのであまり深くは言いませんが、この 
 物語の起・承においては、「のび太──リルル」の直通経路より 
 もジュド経由の関係の方が強いのです。これは「のび太──ジュド」 
 の関係が強く、「ジュド──リルル」の関係が強いからです。リ 
 ルルのような特殊で強い人物を登場させる際の、定跡の一つでは 
 あるのですが、まあ、その辺はあまり言及しないことにします。 

  では、転以降ではどうでしょうか。リルルと最も強い関係を結 
 ぶのはしずかちゃんです。つまりリルル周りの関係線で最も重要 
 な関係線が「しずかちゃん──リルル」に変化しています。 
  なぜでしょうか。これは「しずかちゃん──リルル」の解説に 
 お話ししますが、端的に言って、この物語が人間関係の変化があ 
 り物語が難しくなることを嫌っているからです。この物語が難し 
 くなりすぎるのを防ぐ手だてが、この「しずかちゃん──リルル」 
 の強い関係線が新たに生まれるという、単純ではありますが、な 
 かなか思いつかない手段なのです。 
  うーん、難しいですね(^_^; 


 ○ 03 ○ 「しずかちゃん──リルル」 ○ 05 ○         :[ 03-05 ]  

  第二の承以降の主役関係線がこの「しずか──リルル」です。 
  なぜこの「のび太──リルル」の関係線は「しずか──リルル」 
 の関係線に主役の座を譲るのでしょうか。 
  これは、リルルの意識に変化が起こり、リルル周りの関係線が 
 大きく変化してしまう予定がある事が理由の一つとなっています。 
 「のび太──リルル」の関係は、転の終了を持って十分に強く 
 なった関係になります。その強い関係は過去に幾つかのエピソード 
 を持ち、それが積みあがる事によって物語に奥行きを与えます。 
 長編の小説やドラマでよくあるフラッシュバックはそのような積 
 み上げを観客に思い出させる手法です。 
  しかし、この物語においてリルルは他を圧倒して強い人物であ 
 り、リルルより発する出来事(イベントの方が分かりやすいで 
 しょうか……)が圧倒的に多いのです。 
 「ジュドがリルルの持ち物だと知れる」 
 「リルルが次元震を起こしてしまう」 
 「リルルがロボットと分かる」 
 「リルルが秘密を知られて殺そうとする」 
 「リルルを介抱する」 
 「リルルが裏切る」 
 「リルルが意気地なしと怒る」 
 ……、きりがありません(^^; 
  もしも、この出来事が全て「のび太──リルル」の関係線で起 
 こったどうなるでしょうか。きっと「リルル──のび太」関係線 
 をどう理解したらいいかが分からなくなってしまいます。物語の 
 奥行きが深くなりすぎてしまうのです。もっともっと分かりやす 
 く言えば文学的になってしまうのです。 
  ですから、「しずか──リルル」関係線が生まれます。 

  しずかちゃんはファーストコンタクトで、リルルに殺されそう 
 になります。でも、これって難しくありませんよね。リルルは秘 
 密を知られたから殺そうとするのです。ですが、これがのび太 
 だったらどうでしょう。 
  うーん(笑) 
  どんな物語になるんだろうと好奇心でわくわくしてしまいはす 
 るのですが(^^; 実際にまとめきるには相当の技量が要り、そ 
 れを小学生に分かりやすい物語にすることは、どんな天才にもで 
 きることではないはずです。 
  物語に深みをつけない技術、もしくは深さを上手く分散させる 
 技術がここにはあるのですよ! 

  さて、話を「しずか──リルル」の関係線の話に戻しましょう。 
  この関係線は突然のように現れる関係線ではあるのですが、こ 
 の登場の仕方は高度です。現実的に「どうしたら真似ができるか」 
 と言う部分は、舞台・道具について言及しなければならない部分 
 ですので、とりあえず、人物の観点から、この関係線の成立につ 
 いてお話しします。 

  この主役関係線が生まれるには、「のび太──しずかちゃん」 
 の関係線が非常に大きな影響を与えています。しずかちゃんが鏡 
 面世界に行き、リルルに出会うきっかけとなっているのはのび太 
 がしずかちゃんのおフロに鏡面世界の入り口を作ったことです。 
  のび太の選択は非常にランダムな要素であったのです。 
  ここにさりげなくはありますが、とてもテクニカルなものがあ 
 ります。しずかちゃんを主役に引き上げたのはのび太です。その 
 のび太が強い関係線を持っていたリルルとしずかちゃんが強い関 
 係線を結ぶのは、とても自然な流れなのです。分かるでしょうか(^^; 
  つまり、「しずかちゃん──のび太──リルル」の関係があった 
 ために、「しずか──リルル」の関係が結ばれることはとても 
 スムーズなのです。もう一つ、これを成り立たせるために、 
 「しずかちゃんの物語への並行的参加」とでも表現できる技術が 
 あります。つまり、しずかちゃんが、のび太たちとは違う形で物 
 語に参加をするという技術です。「しずか――のび太」関係線を 
 直接的ではなく間接的に利用しているのです。とても分かりやす 
 く言えば、しずかちゃんがのび太の紹介でリルルと出会う訳では 
 なく、偶発的に出会うという事がキーポイントなのです。これを 
 お話しし始めると、とても長くなってしまうので、そのうち、ど 
 こかでお話ししたいなあと思います。とりあえずは参考までに。 

  しずかちゃんとリルルが出会うために、この物語は重要な役割 
 をしずかちゃんに与えています。リルルがロボットである事を知 
 る役割なのですが、この直後のリルルとしずかちゃんの反応が、 
 この「しずか──リルル」の関係線を決定的に作り上げます。 
  つまり、リルルがしずかちゃんを殺そうとし、しずかちゃんが 
 リルルを直そうとする部分なのですが、この関係は以後、 
 「しずか──リルル」の関係線の基本的な底流にある関係は変わ 
 ることはありません。何度、しずかちゃんはリルルに裏切られた 
 でしょうか。 
  「しずか──リルル」の関係は本質的に「好意」「敵意」の関 
 係です。とても不安定な関係であり、いつしずかちゃんがリルル 
 に殺されてしまってもおかしくはありません。緊張感のある関係 
 が長く続き、しかし安定した関係であるのは、「敵意」を持って 
 いるリルルの関係線、「リルル──のび太──しずか」がとても 
 強固な関係線であるからなのです。不安定であるからこそ多くの 
 動きがこの関係線より生まれます。そしてその関係線を支える安 
 定した関係線を別経路で結ぶ。建築などに通じる所があるかも知 
 れませんが、これが柱を支える秘訣なのです。 

  さて、この関係が大きく変わるのは、「のび太──リルル」の 
 関係線が変わって後です。二番目の承が終わる直前の、リルルが 
 鉄人兵団に報告をしにゆくシーン、もっとはっきりと言えば、リ 
 ルルがのび太に出会って、そののび太を撃ち倒して鉄人兵団の司 
 令部へ向かう、そのシーンで決定的に変わっています。 
  ここでのリルルははっきりと「のび太──リルル」の関係線を 
 意識しています。「しずか──リルル」が「人間──ロボット」 
 の関係であったのに対して、ここはとてもはっきりと、のび太で 
 なければならないシーンなのです。 
  この違いが分かるでしょうか? 
  とても自然に見え、印象的な場面だけに見落としがちですが、 
 ここで初めてリルルはのび太を関係を結ぶ相手として、のび太を 
 見ることになります。つまり、「いくじなし!」と、その人間性 
 に怒りを感じるのです。 

  この「のび太──リルル」の関係線の変化は、すぐに 
 「しずか──リルル」の関係線に影響を及ぼします。鉄人兵団の 
 総攻撃が始まったさなかに「しずか──リルル」の関係線が本格 
 的に稼働を始める事になります。つまり、タイムマシンでメカト 
 ピアの草創期に向かうのですが、この中で、初めてリルルはしず 
 かちゃんを対等に話をする相手として認めます。長かったぁ(^^; 
 などと思うのですが、この関係線は「のび太──リルル」の関係 
 と、しずかちゃんの辛抱強さによって成り立っているのです。 


 ○ 03 ○ 「ジュド──リルル──鉄人兵団」 ○ 06 ○      :[ 03-06 ]  
  
  この関係線は、この物語の中で最も高度な関係線です。全く無 
 駄がないと言いますか、これほど魅力的で印象的な三つの人物が 
 直列に繋がっている関係線はなかなかありません。これまでお話 
 ししてきたリルルの印象の強さ・物語に与える影響、起・承にお 
 けるジュドの影響力を思い出すと、いかに効果的な関係線である 
 かが分かると思います。この関係線のお話をする事はこの物語の 
 中核をことごとくお話しするようなものですが(^^; そんなに難 
 しくないのでお話してしまう事にしましょう。 

  この「ジュド──リルル──鉄人兵団」の関係線は、いたって 
 シンプルな2つの特徴があります。 
  一つは、ジュドがリルルに従属し、リルルが鉄人兵団に従属す 
 るという入れ子の階層構造を持っているという事、もう一つは、 
 一番活発な(行動の多い)リルルがジュド・鉄人兵団の間にある 
 という事です。入れ子の階層構造は異質な組織(鉄人兵団や地球 
 人といった組織)を分かりやすく説明するのに役立ち、リルルが 
 活動的なのはジュド・鉄人兵団のどちらにも強い関係を持ってい 
 る中継点のような人物だからです。シンプルです。 

  この物語の入れ子構造はとても無駄がなく、シャープな構造を 
 しています。 
  ジュドについて解析をしてみましょう。 
  一般的に組織の末端というと、奇声を上げる戦闘員や、助けを 
 求める負傷兵などを想像しがちです。ですがそれでは効果的に物 
 語に影響を与える末端としては極めて役不足であることに気付く 
 かと思います。また、登場する異質の組織より、効果的に関係線 
 を引くには(のび太と鉄人兵団がよい物語になるための必要十分 
 条件ですが)、「異質の組織」の人物が主人公達の所へ出向いて 
 行かなければなりません。日常に非日常が入ってくるお話ですの 
 で、当然ではありますが、非日常の方が接触を図るのです。 
  さて、この物語の非日常たちはどのように接触を開始したで 
 しょうか(^^; 
  ゾッとしましたか? 
  天才的なのです。ゾクゾクしてきますよね(^_^; 
  お分かりかと思いますが、おもちゃ(ジュド)が、バラバラに 
 なって意図を隠しながら、のび太に拾われるのです。ロボットが 
 落ちていたら誰か拾うでしょうか。 
  つまり、「おもちゃがばらばらになって落ちてきてのび太に拾 
 われる」という能力をジュドは持っているのです。 
  「のび太──ジュド──リルル」の関係線を構築する接触が実 
 にスムーズに行われている事を確認できたのではないでしょうか。 

  リルルについて考えてみましょう。 
  「リルル──ジュド」の関係線は比較的強力です。そのためリ 
 ルルはジュドを探し回りますし、その過程でのび太と出会います。 
  これにはとてもはっきりとした理由があります。リルルの所有 
 物であるジュドをのび太が所有していたという理由です。リルル 
 が大切な所有物を探し回る事は不思議ではありませんし、他人が 
 持っていれば、当然接触を試みます。この「リルル──ジュド」 
 の入れ子が物語にとってとても有効に働いている事が分かると思 
 います。 
  「リルル──鉄人兵団」はどうでしょうか。 
  この関係はとてもスリリングです。何故ならリルルは魅力的で 
 あり、鉄人兵団は脅威的であり、リルルが鉄人兵団と入れ子の構 
 造にあるからです。ですから、のび太たちはリルルに心を許し、 
 鉄人兵団との敵対に対して大きなリスクを払っています。 
  リルルが鉄人兵団と入れ子の関係にある事が大切です。 
  リルルがのび太たちに心を許す事もこのスリリングさに輪をか 
 けています。 
  リルルは敵対する二つの間の板挟みになり、リルルの気持ち一 
 つが、この物語の趨勢を握っています。 
  主人公達はスリリングに感じないでしょうか。感じるはずです。 
 そして、主人公達に共感を感じる観客達は同様に、スリリングに 
 感じるのです(^_^) 

  ところで、リルルはどのようにして魅力的であることを維持し 
 ていると思いますか? 
  物語の本質の中に決定的な一つの答えがあり、コミック版の中 
 に本質より離れた細かな演出がいくつも見られます。探してみる 
 と面白いかも知れませんよ! 


 ○ 03 ○ 「のび太──ドラえもん」 ○ 07 ○          :[ 03-07 ]  

 この「のび太──ドラえもん」関係線は「繋ぎの関係線」とでも 
 表現できそうな関係線です。 
  物語の全体を俯瞰すると、これまで長々と話してきた、 
 「のび太──ジュド──リルル」「しずか──のび太──リルル」 
 の二つの重要な三角形とは別に、ドラえもんを中心とした「ドラ 
 えもん周り」の関係線のグループがあります。 
  つまり、ドラえもん・ジャイアン・スネ夫を中心とした、 
 「鉄人兵団と戦おう!」グループですが、これは簡単に、ドラえ 
 もんよりジャイアン・スネ夫がぶら下がっていると考えて構わな 
 いと思います。 
  実際に事態を進展させているのはドラえもんであるとはっきり 
 と言いきる事ができます。作戦を考え、便利な道具を出すことに 
 より、たった一人で鉄人兵団と戦っていると言っても過言ではあ 
 りません。 

  さて、のび太たち地球人グループが鉄人兵団に接触するルート 
 が二つあることに気付くと思います。「のび太──リルル」の 
 ホットライン(のちに「しずか──リルル」に代わる)と、 
 「ドラえもん──鉄人兵団」の「敵意」「敵意」の関係です。 
 つまり、大げさに言えば協調路線と、敵対路線の二つがあるので 
 す。この路線はリルルの処遇を巡ってしばしば衝突します。つま 
 り二つのルートがせめぎ合っているのです。 
  この二ルートは内紛を始めるでしょうか(^^; 
  お分かりかと思いますが、この二つのルートを強力に繋いでい 
 る関係線が、この「のび太──ドラえもん」関係線なのです。か 
 すがいのような、と表現するのが正しいのかは分からないのです 
 が(^^; とにかくこの物語の屋台骨であることは間違えありま 
 せん。抜群の安定感を誇る関係線なのです。 

  もう一つ、少し高度で、あまり重要ではないのですが、この 
 「のび太──ドラえもん」関係線には、起・承・転・第二の承の 
 序盤あたりまでの物語の組立役とでも言えるところがあります。 
  初めは二人でセットのように見えた二人が、次第に分離して行 
 き、それぞれが二本のルートを確立して物語の構造を作り上げて 
 行きます。のび太ルートは優しい気持ちによって、ドラえもんルート 
 は必要に迫られて。 
  この二人に藤子不二雄はどんな結末を用意したでしょうか。 
  幻のようにホットラインは残ります。 
  そして、のび太は……、 
  無粋な事を言って台無しにしてしまうのは止めにしておきます(^^; 


 ○ 03 ○ 「まとめ」 ○ 08 ○                 :[ 03-08 ]  


 ● 04 ● 諸所雑感 「今回はお休みします。」         :[ 04 ] 
  ̄ ̄ ̄ ̄ 
  手短に。 
  まぐまぐの30k制限に引っかかってしまいますで(^^; お休み! 
  発行スタンドにまぐまぐを利用していない方、ごめんなさい! 
  ほんとは「A.I.」について語りたかったのです……。 


 ● 05 ● おわりに                      :[ 05 ] 
  ̄ ̄ ̄ ̄ 
  次回は、「舞台」についてお話します。 
  そっけなくてごめんなさい(^^; 
  長かった〜ぁ(笑)。 

 ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■―― ■ ―― ■ 
                       第七号   2001/08/04 
   「 物 語 解 析 」 
    〜 要素による解析基礎 「人物」 実践編 〜 

 発行者:hikali 
   文:hikali 

 ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ http://www.seikou-toutei.com/nmk/index.html


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